カレッジマネジメント203号
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18リクルート カレッジマネジメント203 / Mar. - Apr. 2017──日本企業の人事システムの特徴として「メンバーシップ型」という言葉を聞きます。これはどんな特徴を持っているのでしょうか。「メンバーシップ型」「ジョブ型」という対比は、労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎さんが使い出した言葉です。仕事をきちんと決めておいてそれに人をあてはめる、欧米諸国の企業に多く見られる「ジョブ型」に対し、日本企業の特徴は人を中心に管理し、人と仕事の結びつきはできるだけ自由に変えられるようにしておく。どの仕事を担っているかよりも、社員としてわが社のメンバーであるか否かを重視するため、「メンバーシップ型」と呼ぶのです。従来型の日本企業に多いメンバーシップ型企業では、一定レベルの基礎力がある学生を新卒で一括採用します。その上で、それまでに身につけてきた知識や個性、価値観を一旦ゼロリセットし、会社独自の価値観や文化を学ばせる。その会社の人間として一から育てるわけです。人材育成ではゼネラリストの育成を目指します。いくつかの部署を人事異動でローテーションし、会社の業務全般への理解を深めさせる。そうしてより広い範囲について判断や意思決定ができるように育てていくのです。係長より課長、課長より部長というように、より広い範囲で判断と意思決定ができる人材が、社内的地位も待遇も上がっていきます。一方である特定の領域で専門性を高め、その領域では社外でも評価されるようなプロフェッショナル人材も社内に存在することがありますが、メンバーシップ型企業ではプロフェッショナル人材の社内的地位や待遇がゼネラリスト人材を超えることはありません。つまり社員が合理的に判断すれば、ゼネラリスト人材として昇進を目指したほうが得だということになる。日本的なメンバーシップ型企業は、社内にプロフェッショナルを生みだしにくい組織構造だといえます。──大久保さんは、日本企業は従来の「メンバーシップ型」からプロフェッショナル人材を活用できる「プロフェッショナル型」へ移行すべきだと説いています。まずお聞きしたいのですが、大久保さんのいうプロフェッショナル人● PROFILE1983年株式会社リクルート(現 株式会社リクルートホールディングス)入社。1999年にリクルートワークス研究所を立ち上げ、所長に就任。2010年〜2012年内閣府参与を兼任。2011年専門役員就任。現在、労働政策審議会職業能力開発分科会委員(厚労省)等を務める。著書に『会社を強くする人材育成戦略』、『マネジャーのための人材育成スキル』、『キャリアデザイン入門Ⅰ・Ⅱ』(以上、日経文庫)、『日本の雇用―ほんとうは何が問題なのか』(講談社現代新書)等多数。プロフェッショナルが活躍できるダイバーシティ型経営へ会社の一員であることを重視する、画一的な「メンバーシップ型」企業から、高い専門性を持つ個性的な人材が活躍できる「プロフェッショナル型」企業へ──。日本企業の転換を説く、リクルートワークス研究所の大久保幸夫所長に、そうした転換が今求められる理由、プロフェッショナル化を前提とした場合の働き方の変化などについて聞いた。(聞き手/本誌編集長 小林 浩)大久保 幸夫リクルートワークス研究所 所長編集長インタビュー

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