カレッジマネジメント203号
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42リクルート カレッジマネジメント203 / Mar. - Apr. 2017きるようになるという。そして3年目に漸く、現場でどう理論が応用されているかを見定める力がつき、自分で料理を組み立てながら創造的な新しいレシピも作ることができるようになるという。つまり、3年間の学びを通して理論と実践が架橋できる力がつくというわけである。実際、高度調理技術マネジメント学科では、1年次に基礎的な知識・技術・理論を学び、2年次後期には学外の企業や施設3カ所で「キャリア形成実習」(384時間)を半年間かけて行う。単に学外に出て研修を受けるというのではなく、学生が個人のテーマを持って研修に臨む。そして、3年次には専門教員の指導の下で論文やオリジナル・レシピを作成していく。こうして、理論を身につけつつ、それを活かす機会が持てるよう、従来以上に現場との連携を強めるカリキュラム編成になっている(図表3)。「料理人が調理場で一生過ごす時代は終わった。これからは飲食業界に就職したとしても、理論的な理解がないままにただ包丁使いがうまいだけではやっていけない。先を見据える力を有し、リーダーシップを発揮して飲食業界を牽引していける人材を育成していきたい」。辻校長はそう語る。これまでとは異なる専門性が必要になるなか、単なる技能より理論が重要だという。もちろん、3年制学科はまだ1年目が終わろうとするところで、その成果が出てくるのはこれからだ。それでも辻校長は、3年間のカリキュラムを修了した学生達が分析力を獲得し、就職先の選択能力も磨かれているはずだと期待を込める。就職先は何も調理場に限る必要はない。例えば一般企業の商品開発部門で働いたってよい、そう校長は語る。3年間徹底的に学んだ修了生がどんな可能性を見せてくれるのか、数年後への期待が高まるばかりである。強みは教員の「教育力」こうして見てくると、「突き詰めたところで辻調の強みは何か」という問いが頭をよぎる。この質問に対する辻校長の答えはずばり「教員の教育力」だ。そう答える校長の様子に迷いはない。辻調の教育理念は“Docendo Discimus”(ドケンド・ディスキムス)──「私達は教えることによって学ぶ」を意味するラテン語だ。初代校長・辻 静雄氏の教育哲学が込められている。この言葉が示唆するように、職業教育を担う教員は常にアンテナを張り、学び続けること、頭を空っぽにして新たに学び、またそれを学生に還元していくことが求められる。教員はずっと学び続け、それを見て学生も一緒に学んでいくというのが基本理念の意味だと辻校長は語る。それ故、プロフェッショナル教育を行うために重視して1年2年3年実習●調理実習(300時間)●総合調理実習(92時間)●インターンシップ(32時間)実習●調理実習(300時間)●総合調理実習(92時間)実習/演習●高度調理実習(148時間)●サービス(60時間)●HACCP演習(30時間)実習/演習●総合演習(168時間)●調理研究実習 (168時間)●高度調理実習 (104時間)●サービス(52時間)実習●キャリア形成実習(384時間)※学生がテーマを持って3カ所の企業や施設で実務に従事実習/演習●高度調理実習(252時間)●サービス(112時間)●HACCP演習(30時間)理論●食生活と健康(90時間)●食品と栄養(150時間)●食品の安全と衛生(150時間)●飲食キャリア概論(30時間)理論●食生活と健康(90時間)●食品と栄養(150時間)●食品の安全と衛生(150時間)●調理理論と食文化概論(180時間)●飲食キャリア概論Ⅰ(30時間)理論●マネジメント論(60時間)●調理技術理論(120時間)●料理のための外国語 (30時間)理論●飲食キャリア概論Ⅱ(112時間)●マネジメント論(52時間)●調理技術理論(130時間)●料理のための外国語(26時間)理論●マネジメント論(112時間)●調理技術理論(250時間)●料理のための外国語(56時間)前期前期後期後期調理技術マネジメント学科(2年制)高度調理技術マネジメント学科 (3年制)図表3 2年制学科と3年制学科のカリキュラムの違い

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