カレッジマネジメント203号
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57リクルート カレッジマネジメント203 / Mar. - Apr. 2017的に鍛え上げる教育と、それを支える教職員の切磋琢磨こそが、AIUの強みそのものなのであろう。こうした人材輩出の高い実績を背景に、2013年度から面接官に卒業生を据えるユニークなAO入試を行っている。AO入試は志望理由書・調査書・英語小論文や英語・日本語の面接等を総合的に評価するが、そのうち卒業生を起用しているのは日本語面接だ。在学中の学業成績・課外活動・卒業後の活躍等を総合的に勘案し、起用する卒業生を決めるという。卒業生には事前の個別指導等により、面接を行う背景や採点方針の周知徹底、個人情報の守秘義務等を指導している。交通費等の費用負担は全てAIUが持つという。そうまでして卒業生を起用する理由は、「質の高いマッチングを期待して」とのことだという。「AIUの中退率は全学年通して約4%と、全国平均より低いスコアです。これは入学段階できちんと大学が志願者に求める内容とのマッチングができているから。本学では広報活動でも、在学生による母校訪問とは別に卒業生による高校訪問を依頼するケースもありますが、非常に協力的です。高校生から見ても卒業生を見ることは、この大学で精進1にも満たない。大学で学ぶとはどういうことか、その広がりを体感してほしいと思っています」との趣旨だ。日本語による授業とディスカッションのほか、EAP等英語の簡易プログラム、留学生・卒業生との交流等が行われる。入試ではセミナーで提出した2点のレポートのほか、面接・調査書・志望理由書等で総合的に合否が決まる。運営側からすれば極めて負荷の高いこの取り組みには、当然「AIUを模擬体験することで精度の高い募集マッチングを行う」という募集上の目的もある。前述したAO入試と同じく、選考段階できちんと手間暇をかけ、AIUに最適な人材を選抜しようとする大学のスタンスが強く感じられる。中津室長は「AIUの理念を確認すれば、厳しい教育を行う理由や、選抜で何を重視するかは理解できるはず。逆に、そこが一貫していないのは社会に対して無責任ではないか」と苦言を呈する。何を学ぶために、どんなスキル・コンピテンシーを、どう評価するのか。入試は受験生のみならず、社会へのメッセージにもなりつつある。マッチングを軸にしたAIUの入試のさらなる進化が楽しみである。(本誌 鹿島 梓)するとどうなれるのか、教育成果の可視化という効果も大きい。これからも入試・広報活動において卒業生の協力を得ていきたい」。日本ではあまり馴染みのないやり方だが、米国アイビーリーグ等では統一テストとコモンアプリケーションによる願書入試が行われる傍ら、書類に加え卒業生による面接が行われるケースも多くある。日本では「公正性」と「公平性」が問題になりやすいが、入試の専門家による設計自体が概ね信頼を得ている米国との文化の違いが色濃い。大学の理念が明確で、それに紐づいた教育システムが盤石だからこそ、取り組める内容ともいえる。大学教育の模擬体験で適性を確認するAIUではほかにも独自の入試制度がある。「グローバル・セミナー入試」と銘打つそれは、秋田県内の高校生を対象に2010年から開始された。10名の定員枠に5倍以上の志願者が集まる。志願者は、まず5月と8月に実施される「グローバル・セミナー」への参加が必須となる。セミナーは2泊3日キャンパスで行われるが、主たる目的は「県内の高校生の教養力向上」。即ち、「高校までに勉強している領域は、本来の学問領域の10分のTOEFL ITP® TEST 550相当以上GPA成績(評価平均点)2.50以上図 大学4年間のカリキュラム概観

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