カレッジマネジメント204号
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29ート養成や指導者養成を掲げる大学が多いが、中央の場合敢えてそうした道は選択しない。地域に密着し地域社会の抱える課題解決を目指す、地域貢献型の学部を予定している。それは大学が立地する多摩の地域特性に由来する。多摩ニュータウンを抱える多摩地域は高齢化が加速している街であり、日本が将来直面する諸課題の最先端を走る。そうした地域を対象に、ライフデザインの観点から健康と福祉、そのためのスポーツを考える学部の設置は、地域貢献に留まらず、近い将来日本社会全体が抱える課題解決への貢献ができると考えてのことである。これらが実現の暁には6学部から9学部へ、伝統的な学部構成から時代のニーズを汲み取った学部構成へと変貌を遂げることとなる。大規模なインフラ整備とポテンシャル強化施策第2の柱がキャンパス整備である。現在中央大学は、多摩キャンパスに本部と文系学部があり、都心の後楽園キャンパスには理工学部がある。この後楽園キャンパスに多摩にある法学部の移転を計画している。同じく都心の市ヶ谷キャンパスにはロースクールがあり、法学系の教員は多摩と市ヶ谷を行き来せねばならず、時間的ロスが大きい。また、中央大学法学部・ロースクールは、法曹界に多くの人材を輩出している伝統を持ち、司法試験合格者のOB・OGが在学者の指導にも当たっている。このOB・OGは都心に事務所を構えているケースが多く、在学生が都心にいればより手厚い指導が可能になる。これらが、法学部の後楽園キャンパスの移転理由である。2022年の完成を目標に調整を進めており、都心において法学教育を一体的に展開し、法曹界や国家公務員として活躍する人材の育成を目指す。その後の多摩キャンパスは、よりグローバルなキャンパスとして位置づけたいという。国際寮やグローバル・ラウンジの設置や遠隔授業設備を充実させ、自然にあふれた広大な敷地を活かしたキャンパス整備を進める予定である。もちろん、ここには先述の新学部のための新たな施設・設備を設置することも含まれている。多摩キャンパスのグローバル化は、大学全体のグローバル戦略があってのことである。これが第3の柱である。国際共同学位の構築、全ての科目を英語で教えるプログラムの設置をはじめとし、そのための国外からの留学生、国外への留学生、外国人教員、国外大学で学位取得した教員等にはいずれも目標値を掲げ、それを目指してグローバル化を進めようとしている。そして、第4の柱はスポーツ振興事業である。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに中央大学出身者・在学生を20名以上送り出すことが目標である。そのためにスポーツ振興・強化推進室を設置し、事業を推進しようとしている。スポーツは大学のブランディングにつながることを意識しての戦略である。なぜ今動き始めたのか外から見ると、1993年の総合政策学部設置以来動きのなかった中央大学が、なぜ今ここまで大きく動き始めたのか不思議に思う。それについて酒井正三郎総長・学長は、「1993年の総合政策学部設置の頃に中央と同程度の学部数を持っていた私学は軒並み、この20年余に学部新設・改組でもって学部数を増やしてきました。本学もこれまで何の動きもなかったわけではありません。新学部設置の構想も3〜4回あったかと思いますが、いずれも実現には至りませんでした。今ようやく現状を脱却し、『實地應用ノ素ヲ養フ』という建学の精神に立ち返り、中央大学としての価値ある独自性を出そうという方向に動き始めたのです。Chuo Vision 2025は、その象徴なのです」と話される。では、なぜこれまで動くことができなかったのか。「それは偏に学内の意思決定システム、言わばガバナンスの問題であったと言うことができます。例えばある案件に対し、学部教授会が1つでも反対すれば、その案件は日の目を見ることができませんでした。また、本学は法人組織の長である理事長と教学組織の長である学長が別の体制になっているため、両者の合意をとることも容易ではありませんでした。そうしたなか、この度の学校教育法改正は、大学を動かしていくための追い風となりました。法人と教学とが一体となってこうしたビジョンを作ることができたのは、実は今回が初めてなのです」とのことである。確かに、学校教育法改正による学長のリーダーシップの強化は1つの契機だろう。だがそれ以上に、人口減少や少子高齢化、グローバル化等の外部環境変化に加え、競合大リクルート カレッジマネジメント204 / May - Jun. 2017特集認証評価第3サイクルに向けて

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