カレッジマネジメント204号
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30リクルート カレッジマネジメント204 / May - Jun. 2017学が様々な改革を進めるなかで、もう泰然自若とはしていられない、中央大学を変えねばという危機感に後押しされ、それが学内で共有されるようになったのではと思う。こうした機運を生み出す学内装置として機能したのが、2007年に全学的自己点検・評価システムを構築したことではないだろうか。自己点検・評価は大学の恒例行事となった感があるが、それにどこまで力を入れるかは大学によって大きく異なる。中央大学では2007年にその仕組みを全面的に構築し、図表2のように5つの委員会として組織化した。興味深いのは、単に認証評価のための委員会ではなく、大学の内部質保証を担保するための委員会として実質的に機能させようとしている点である。この中心にあるのは「大学評価委員会」である。学長が委員長となり、法人と教学の役職者20名で構成される委員会であり、大学評価の実施・運営に関する基本的な事項を決定し、自己点検・評価報告書を確定する。これは全学的な運営方針を決定する組織であり、その実動部隊が下部の「大学評価推進委員会」である。「組織別評価委員会」は、学部、研究科等の学内の組織に対応して51に分化した委員会であり、それぞれの組織の課題について点検・評価を実施する。それに対し、分野系評価委員会は、教育と研究、あるいはアドミッションや施設・設備等、大学を運営するに当たってのミッションや役割に応じて12の分野に分け、全学横断的な観点から点検・評価を実施する。この2つの委員会がタッグを組み、Chuo Vision 2025の実現に向けた取り組みの質を高めている。やや遅れて2013年に設置された「外部評価委員会」は、1期2年、大学関係者を中心に10人に外部評価委員を依頼している。自己点検・評価の妥当性・客観性を高めるために、全国から著名人に委員を引き受けてもらい、大学評価委員会に対して助言を行う機能も備えているという。自己点検・評価を担う委員会をこれだけの規模で、これだけの役割を負わせている大学は多くはなく、いかにして大学を内部から動かそうとしてきたかが分かる。さらにいえば、機関別認証評価を申請する前年度に実施する重点自己点検・評価だけでなく、年次自己点検・評価を毎年度行っていることに驚く。この年次自己点検・評価を行うことで、大学の現状や課題を自ら確認し、その解決策を検討し、さらに翌年度、その解決策の実施の程度を点検・評価するのである。メッシュ構造とボトムアップ・トップダウンこうした組織体制を構築しても、それをどのように稼働させてPDCAサイクルを回すか。それが最も肝心である。そのために2つの仕掛けがあるように見える。1つは、組織別評価委員会と分野系評価委員会とのメッシュ構造である。内部質保証のための組織体制図表2 大学評価に係る委員会構成図・ 「自己点検・評価報告書」の内容を基礎とした、諸活動の進捗及び成果の確認、評価の実施・ 大学評価委員長に対する評価結果の報告、大学評価委員会に対する助言・ 大学評価の実施・運営に関する基本的な事項の決定・「自己点検・評価報告書」の確定各点検・評価分野に関する諸活動について、全学横断的な観点から点検・評価を実施※12分野各組織の諸活動に関する点検・評価を実施※51組織大学全体に係る自己点検・評価、組織別評価委員会及び分野系評価委員会が取りまとめた自己点検・評価結果の集約、調整、総括大学評価委員会大学評価推進委員会分野系評価委員会組織別評価委員会外部評価委員会連携・調整助言・勧告助言・勧告報告報告依頼報告調整調整

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