カレッジマネジメント204号
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58リクルート カレッジマネジメント204 / May - Jun. 2017大学は、最終学歴となるような「学びのゴール」であると同時に、「働くことのスタート」の役割を求められ、変革を迫られている。キャリア教育、PBL(課題解決型学習・Problem Based Learning)・アクティブラーニングといった座学にとどまらない教授法、地域社会・産業社会、あるいは高校教育との連携・協働と、近年話題になっている大学改革の多くが、この文脈にあるといえるだろう。この連載では、この「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目しながら、学長及び改革のキーパーソンへのインタビューを展開していく。各大学が活動の方向性を模索する中、様々な取組事例を積極的に紹介していきたい。今回は、創基200周年の2015年に「明日の山口大学ビジョン2015」を打ち出し、新学部開設や改組にも積極的に取り組む山口大学で、岡 正朗学長にお話をうかがった。山口大学は、1815年に長州藩士・上田鳳陽が山口市内に開いた私塾「山口講堂」に始まる。山口県=長州藩が明治維新胎動の地などの歴史を背負う中で、山口大学も国立大学に生まれ変わり、発展してきた。卒業生でもある岡 正朗学長は、「非常に歴史のある大学で、それを誇りに思っています」と言い、創基200周年の2015年に発表した「明日の山口大学ビジョン2015」について説明する。「グローバル化、第4次産業革命、ソサエティ5.0の中では多様性のある人材の育成が非常に重要ではないかということで、留学生とか地域の人々とか、分け隔てなく受け入れ、多様性を容認するダイバーシティ・キャンパスを目指すことを、明確に書いているのです」その一方で岡学長は「我々の大学は地方創生に貢献しないと存在価値がない」とも言う。「世界」「地域」という2つの大きな課題の両立を象徴するのが、2015年度開設の国際総合科学部のカリキュラムだ。2年生秋から3年生夏までの1年間は海外留学するが、4年生の1年間は地域でプロジェクト型課題解決演習を行う。山口大学のキャリア教育の根底には「社会に必要な人材を育成していく」という方針がある。「どういう能力を持つ人材が世の中で必要なのか、我々はそれに応えていかなきゃいけないと思っています。何でも変えるわけではないけれども、今の時代に全く合わない人材では良くない」。今の時代に必要な力として山口大学が取り入れたのが、例えば「知的財産教育」「アントレプレナー教育」だ。「知財教育」は、2013年度から全学部の1年生2000人全員に必修化した。2015年7月には全国の大学の「教育関係共同利用拠点」になっている。「アントレプレナー教育」の例としては、2016年度の大学院再編で、理学部、工学部、農学部の大学院を創成科学研究科の1研究科とした際、学部から博士前期課程の6年一貫教育に、ベンチャー教育、❼山口大学学修成果(能力と行動)の可視化を柱に人材育成岡 正朗 学長長州藩の私塾「山口講堂」が起源地域のリーダーを育てるYFL育成プログラム

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