カレッジマネジメント205号
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27リクルート カレッジマネジメント205 / Jul. - Aug. 2017する理系マーケットであった。それが現代、社会のあらゆるものがデジタル化され、インターネット、AI、ロボティクス、VR(仮想現実)・AR(拡張現実)等、技術革新は人間の思考や認知、判断等の役割を代替できるようになりつつある。まさに技術パラダイム転換期のまっただなかと言えるだろう。近年の技術革新の速さから、世界をドラスティックに変化させる可能性があるのは間違いない。技術が社会を変える時、必ずしも理系文系という別に拘わらず、現実社会の課題を技術でどう解決するのかという視点や、実際の取り組みの中で臨機応変に応用していく思考回路が求められる。今必要とされるのは、そうした近い将来、技術を担い社会を支えることができる人材である。2017年には国立で滋賀大学データサイエンス学部が、私立では7大学で情報系の学部学科が設置された。そのいずれもこうした時代ニーズに即した人材育成と教育内容を掲げている。例えば大阪工業大学ロボティクス&デザイン工学部は、アメリカで実績を上げているデザイン思考を軸に、顧客中心の課題発見力・解決力を磨く独自のカリキュラムを設計し、企業や地域が抱えるリアルな課題に対して解決策を提示できる人材育成をうたう等、学問領域のみならず教授方法にも、これまでにない新たな工夫を凝らしている。国際領域は「英語『を』学ぶ」から「英語『で』学ぶ」へ次に国際領域である。小誌では190が、海外提携校との共同学位によって学部学科の国際通用性を示し、学生のグローバル化を図る動きは、先進的でチャレンジングと言えるだろう。こうした動きをとれる大学・分野は限られるだろうが、グローバル化を推し進める一環で海外提携校を増やしてきた大学とドメスティックな市場に閉じてきた大学とで、ひとつの分水嶺となる可能性もある。2020年に向けたスポーツ領域の振興次にスポーツ領域を取り上げたい。スポーツ領域が拡大している背景は主に2つある。1つ目は、2020年東京オリンピックの存在だ。大学によっては中長期計画の中に、オリンピックアスリートをどれだけ輩出できるかの人数や、新増設改組も含めたスポーツ振興が盛り込まれるケースが増えている。2つ目は、P.17以降の複合分野動向、及び新増設トレンドでも取り上げたように、長寿化・高齢化に伴いニーズが高まる健康維持向上とスポーツを組み合わせた、医療系・生涯スポーツ系マーケットの拡大である。スポーツを学問として掲げる場合、従来は体育学部中心であることが多かった。同時に、体育会が強い大学がその受け皿として学部学科を設置し、競技アスリート養成や運営基盤強化を狙うことも多く、それは極めて合理的な手法であった。近年ではそうした競技スポーツの動きと並行して、指導者・体育教師への道のほか、生涯スポーツや健康・医療領域へ幅が広がり、また一方でスポーツ科学やスポー号にて、国際を冠する学部学科が増加している状況を解説した。そこから2年経過し、産業界のグローバル化進展や社会情勢も相まって、この領域は更なる拡がりを見せている。国際を冠する学部学科の新増設は、2015年12件→2016年13件→2017年14件と、3年連続で2桁増加。国立大学でも2016年千葉大学国際教養学部や福井大学国際地域学部等、2017年は宇都宮大学国際学部、神戸大学国際人間科学部等が設置されている。2018年開設に向けた2017年3月末認可申請にも公立小松大学の国際文化交流学部、長野県立大学グローバルマネジメント学部、京都外国語大学国際貢献学部等が並ぶ。以前は国際領域と言えば英語学習を中心としたマーケットの展開だったが、昨今はフィールドワークや学問の場自体がグローバル化し、語学はツールとして位置付けられている点で変化が見られる。従来であれば日本語で専門的に学ぶ内容が英語で行われるのであり、舞台やテーマがグローバルなのである。なお、立命館大学国際関係学部ではアメリカン大学との学部間ジョイント・ディグリーであるアメリカン大学・立命館大学国際連携学科が開設予定だ。ジョイント・ディグリーは2014年11月大学設置基準の省令改正により可能になった制度で、国内と海外の大学の学位を取得するに当たり、従来のように別々に単位を取得するのではなく、相互の単位認定により1つの大学に通う期間で両大学の共同学位を取得できるものである。近年人材流動化に伴い学位の国際通用性が叫ばれている特集 学部・学科トレンド2017

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