カレッジマネジメント205号
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56リクルート カレッジマネジメント205 / Jul. - Aug. 2017を受ける等の経緯もあり、前政権時代から成立が見送られてきた。外国大学の誘致はモディ政権においても高等教育の国際化に向けた優先事項のひとつとなっているが、現在に至るまで大きな進展はない。一方、インドの高等教育機関の海外での分校設置については、連邦レベルの大学評価・学位授与機関である大学補助金委員会(UGC)の定めるインフラ、教員資格、学生選抜、授業料等に関する規則・規範に従うこと、大学本校の管理下で入学、監督、指導、評価、学位授与について管理されていることを前提に認められている。現在、インドの高等教育機関の海外分校のキャンパスは17あり、アラブ首長国連邦(UAE)、マレーシア、シンガポール、モーリシャス、ネパール等の国に展開している。当初、IITやインド経営大学院等のインド最高峰の政府系教育機関も、印僑の多い東南アジアや中東地域への分校展開を検討していたが、これらの高等教育機関は海外市場よりも国内の需要を満たすことに集中すべきという政府からの反対を受け、実現に至らなかった。海外分校の中には政府系教育機関の分校も見られるが、とりわけ活発な海外分校展開を進めているのは私立の教育機関マニパル大学である。インド国内に医科大・カレッジを持つ同大学は、専門的訓練を受けた医科歯科分野の教員不足に直面するネパール、国際化や民営化に積極的でなおかつ印僑の多いドバイやマレーシア等に、現地政府とUGCの双方からの許可を得て分校を設置している。ネパールのマニパル医科カレッジでは、ネパールやインドのみならず、スリランカ、バングラデシュ、南アフリカ等からの学生が学んでいる。また、ドバイのマニパル大学ではUAE人はおらず、南アジア、中東、アフリカ諸国等の26カ国からの外国人学生(80%はUAE在住)が学んでいる。インド国内では受け入れる外国人学生数に制限があるが、マニパル大学は外国分校を設置することで外国人学生を多く受け入れ、学生の多様化を図っており、大学全体の財源の3分の2は外国分校からの収益となっている。こうした分校の経営方針や学術的活動についてはUGCが定期的に評価しており、政府はインド国外に展開する分校の質保証にも努めている。インド版大学ランキングの指標開発グローバル化に伴う国際競争の激化や人材の流動化は、労働市場のみならず高等教育の現場にも見られ、各高等教育機関の国際的位置づけを「大学ランキング」や「世界水準大学」といった国際的水準に照らしてアピールして質の高い人材を確保しようとする動きがある。しかし今日「世界水準」と称されるものは、国際的評価や研究成果、外国人学生・教員の受け入れ等、とりわけ英語圏を中心とする先進国に有利な指標が用いられており、途上国や新興国の高等教育機関の現状からかけ離れたものとなっている。こうした指標は、途上国や新興国の高等教育機関の多くにとって質向上を動機づけるものにはなっておらず、「遅れた教育機関」というレッテルを貼られるだけに過ぎない。こうした中インド政府は、2016年に高等教育機関をランクづけするための国家機関ランキング枠組み(NIRF)を開発した。2017年には、このランキングに参加した3319の教育機関のうちトップ100の名前が公表された(ランキングへの参加は任意)。インドの政府系高等教育機関では、個人の能力出典:https://www.nirndia.org/大項目小項目ウェイト(%)教育・学習・資源学生数6.0%30%教員(とりわけ専任教員)対学生の比率9.0%教員の博士号取得状況と経験6.0%財源とその活用状況9.0%研究と専門的実践出版物10.5%30%出版物の質12.0%知的財産権・特許の出願・発行・認可状況4.5%プロジェクト・専門的実践・政策立案の実施3.0%(学生の)卒業後の成果大学での試験合格者比率12.0%20%博士課程修了者数8.0%アウトリーチと包括性他州・他国からの学生比率3.0%10%女性教員と女子学生の比率2.5%経済的社会的弱者層出身の学生比率2.5%身体障害のある学生のための設備整備2.0%評判雇用主・研究資金提供者等からの評価2.5%10%学者同士の評価5.0%社会一般の評価2.5%表1 国家機関ランキング枠組み(2017年度)のパラメーター

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