カレッジマネジメント206号
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48リクルート カレッジマネジメント206 / Sep. - Oct. 2017近畿大学(以下、近大)は巻頭でご紹介した通り、今年の調査で知名度は総合・文理別・男女別全てで1位、志願度は関西で10年連続1位の関西大学に並び、初の総合1位となった。昨今メディアをにぎわす近大だが、その強さはどこから来るのか。本部のある東大阪キャンパスで塩﨑均学長に話をうかがった。スケールメリットを活かした実学研究医学部附属病院長と医学部長を経て塩﨑氏が学長に就任したのは2012年。当時話題になったインターネット出願「エコ出願」を開始する前年のことである。「まず全体を知り現場を見なければと、就任後1年は全国にある全学部と研究所を訪問しました」。全国にある、との言葉の通り、2017年7月現在、近大は14学部48学科11研究科を6キャンパスに擁し、23の研究所等と3つの病院のほか専門学校や附属校等を抱える、コングロマリットとも言える大法人である。日常的に現場の状況を把握するのは容易ではないだろう。就任行脚で感覚値を掴んだ後は、大学での様々な意思決定に当たり、各学部の意見をどう集約しているのか。「毎月一度、本部に学部長を呼んで昼食会をしているのです。顔を合わせて同じ釜の飯を共にすることで、コミュニケーションがスムーズになります」と塩﨑学長は笑う。それぞれの学部の現状を聞き、大学としての意思決定の方向性を説明し、学部長に意見をしてもらう。必要に応じて学部に持ち帰り討議し、学部からフィードバックを行う。こうした会話がガバナンスのベースになっているという。意思決定はトップダウンではなくミドルマネジメントを巻き込み、全体で議論する姿勢こそが肝要だと話す。「私達が大切にするのはオール近大であること。何しろ学部学科数が多い。総和として生み出せる価値の大きさで勝負したいのです」。2012年に発足し、東日本大震災で福島第一原発事故の影響に苦しむ福島県川俣町の復興支援を行う「“オール近大”川俣町復興支援プロジェクト」は、まさに学長の言葉を体現している。「マイナスからゼロへ」という被災からの再生支援と、「ゼロからプラスへ」という復興支援を2本の柱を軸に、医療ケア、現地の除染、復興のための整備や名産品の開発等、ほぼ全学部総動員であらゆる側面から支援を行っている。こうした全方位型の活動ができるのは多様な学問領域を持つ総合大学の醍醐味であり、蛸壺と揶揄される日本の高等教育にあって、学部の壁を超えて連携し、社会に実際的な価値を返している好例と言えるだろう。6年間の活動を経て、2017年5月には包括連携協定を締結した。また、近大の民間企業からの受託研究は275件で全国2位(文部科学省「2015年度大学等における産学連携実施状況調査」)、外部からの受託研究費は10億3500万円余りで西日本私大1位(朝日新聞出版「大学ランキング2018年版」)等、社会と結びついた研究活動の実態は具体的な数値にも表れている。独創的な研究を社会に還元し循環サイクルを構築するまさに実学の大学であるが、近大の言う実学とは、世間建学の精神に根差した改革のリアリティで偏差値序列に挑む塩﨑 均 学長近畿大学C A S E1

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