カレッジマネジメント206号
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58リクルート カレッジマネジメント206 / Sep. - Oct. 2017接続」として採択された。これは、「グローバル人材育成事業」に盛り込まれている「主体的留学プログラム(Active Studying Abroad Program: ASAP)」をさらに推進することを目的として、日中英トライリンガルの育成を大学入学後からではなく、入学以前から準備することを目指すプログラムである。グローバル人材育成に積極的に取り組んでいる高校との高大連携・高大接続を進め、2017年度からは、高校時代に大学の単位修得ができるアドバンスト・プレイスメントを開始した。ここで興味深いのは、高校生に対して授業を提供する大学は、杏林大学だけではないということである。桜美林大学や共愛学園前橋国際大学等と連携し、これらの大学とは相互に単位互換ができる仕組みとしている。すなわち、杏林大学以外の大学に入学しても、杏林大学のアドバンスト・プレイスメントで取得した単位を加算でき、その逆も可としているのである。さらに、将来的にはコンソーシアムを形成することを目指している。地域の健康と福祉を守るグローバル化は大きな課題であるが、他方で、大学は立地する地域との連携も欠かせない。とりわけ、医学・保健医療系学部をもつ大学としては、地域の健康や福祉への貢献は単に大学の社会貢献のみならず、教育・研究にとっても重要である。これまで、三鷹市における認知症地域連携、八王子市におけるまちづくりフォーラムの開催、羽村市内の中学生に対する自動体外式除細動器(AED)講習の実施、多摩地域における観光事業への学生参加等、地道な地域貢献をしてきた。これらの取り組みの延長に、2013年度の「地(知)の拠点整備事業」への採択がある。「新しい都市型高齢社会における地域と大学の統合知の拠点」と題する事業は、図2に示されるように、三鷹市・八王子市・羽村市と連携し「杏林CCRC」を構築し、「生きがい創出」「健康寿命延伸」「災害に備えるまちづくり」をキーワードとして、教育・研究・社会貢献の体制強化を図る取り組みである。3つのキーワードに沿って地域に関する科目群の整理・統合、地域をフィールドとしたボランティアやインターンシップの実施による、地域に貢献できる人材を育成するとともに、各学部はそれぞれがもつ資源を利用して、地域の関係者と協力して地域への貢献を目指す。たとえば、医学部は医師会との協力による地域医療への参加、保健学部は学校の保健教育への協力、総合政策学部は地域の要請にもとづく講演会の開催、外国語学部は外国人居住者や観光客の通訳ボランティアなどである。「これらの取り組みは、地域活動そのものが、今やグローバルな視点がないと機能しないという観点に立って行っています。突き詰めて言えば、災害弱者である、高齢者、メンタルな問題を抱える者、外国人などのマイノリティを保護することが重要です。とりわけ外国人の増加に関しては、病気や災害への対応を準備しておくことが必須になっています」と、学長は地域社会の現実を語られる。グローバル化とは、海外への視野の拡大だけではなく、地域における現実課題としても生じており、この双方に力を入れることは、もはや必然になっているのである。図2 杏林CCRC※の全体像三鷹市・八王子市・羽村市杏林大学地域関係者意見の集約杏林CCRC研究所(大学・自治体・シンクタンク)杏林大学と自治体等地域のあらゆる関係者が地域課題について話し合う場杏林大学と地域関係者(おもに一般市民)とのインフォーマルなコミュニケーションの場杏林CCRCラウンドテーブル杏林コモンズ●学内教育 地域志向科目拡充(地域志向既存科目の整理・統合、新規科目の設置) ウェルネス科目群●社会貢献 生きがい創出の場 健康寿命延伸プロジェクト 災害に備えるまちづくり●研究 CCRC研究:持続的発展を可能とする少子高齢社会の未来像の構築 →国内外CCRC先進地域環境調査や杏林CCRC解析など 地域志向研究 →「生きがい創出」「健康寿命延伸」「災害に備えたまちづくり」において、 地域の実態調査や課題解決型の研究に取り組む生きがいづくりコーディネーター※CCRC:Center for Comprehensive Regional Collaboration の略

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