カレッジマネジメント206号
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67リクルート カレッジマネジメント206 / Sep. - Oct. 2017材として、本学にはなかった経済系の現代ビジネス学部という結論に達しました。不足している人員の新規募集を理事会に掛け合いました。それまでの大学運営は教授会に一任されていたので、純増ポストを理事会に提案できませんでした。だから既存メンバーだけの再編案しか出なかった。理事会と教授会の橋渡しがうまくいったと思います。打ち手と効果再編案がまとまったあと、宮城学院と改革案の評価を私自身で確かめたいと思い、宮城県内の28校の校長先生をお訪ねしました。「これまでは改革の動きが見えませんでしたね」と厳しい意見もいただきましたが、改革案については、おおむね評価されました。批判も評価もすべて教授会に出して共有しました。改革を実現しないと大きなダメージを受けることを、多くの教授会メンバーが意識したのです。こうして、2016年4月より、教育学部、生活科学部、現代ビジネス学部、学芸学部の4学部体制となったことで、どのような教育が行われているかが、外から分かるようになりました。これまでは、例えば教育に興味がある高校生がインターネットで検索しても、本学はヒットしませんでした。学芸学部では、中身を見るのにもう一つ下のレイヤーへ進まないといけない。そのワンクリックが一般の高校生にはハードルが高いのです。ただ、学芸学部には従来の5学科が残っています。まずは今年度から4学部化の評価を始め、5学科をどうするか、第二段階の改革の検討に着手しています。これを行うのは、2016年に立ち上げた学長戦略室です。将来計画、人事計画、広報、企画立案に関わることはほぼここに集めました。意思決定のスピードを上げるためには、様々なデータと情報が必要ですが、教員が教育と研究の傍ら行う従来の委員会体制では難しいのです。学長戦略室には専任職員を1名置き、教授会から学長指名した中堅・若手教員4人と兼任職員で構成しています。教職協働も大きな柱にしていて、職員は教員のサポート役ではなく、正規メンバーとして発言権、提案権を保証しています。「MGUスタンダード」でリベラルアーツ教育を強化もう一つ、2015年4月に全学生の基礎教育「MGUスタンダード」をスタートしました。近年、専門教育重視で、社会的な常識や教養がない人材の弱点が指摘されています。本学は一貫してリベラルアーツを重視してきたので良かったのですが、ただの一般教育では位置づけも不明確で学びのモチベーションも低くなります。「MGUスタンダード」には、本学の特徴のリベラルアーツの柱として、キリスト教教育を据えています。グローバリズムの中では、欧米人の思考や文化の前提を理解していないと、彼らの考え方が分かりません。さらに外国語を学ぶうえで、キリスト教に関わる比喩やたとえ話は直訳しても分からない。キリスト教教育自体がキャリア形成の一つにもなり、教養の幅を広げることになるのです。また女性教育として、女性が生きがいを持って将来像を描くためのカリキュラムを用意しています。例えば「女性と人権」科目等では、女性が働いてきた歴史を教えています。男女平等社会のはずなのに、就職、結婚、出産は、女性に負担が流れていくようなシステムになっています。社会に出て初めてこの過酷な状況に遭遇するのではなく、在学中に徹底的に自分の人生をデザインしなさいと教えています。これは共学の大学では教えにくい内容で、共学では男性型の教育の内容になることがしばしばあるので、いざビジネスの現場に出ると、女性がフィットしていないと感じるのです。女子大の共学化が進んでいますが、本学は女子大の特性を最大限生かした、魅力ある大学にしていきます。高校生に魅力のある大学だと見られるためには、魅力をどれだけ作り出し、発信するかです。届かなければ魅力がないのと同じだからです。そのためには、教育の中身を発信できるような内容に変えていかなければなりません。教員には、最新の研究成果を学生に還元するのは当たり前で、それを社会にも、どんどん発信してほしいとお願いしています。

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