カレッジマネジメント206号
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84リクルート カレッジマネジメント206 / Sep. - Oct. 2017また、他の課との調整が必要な事項、課を超えた連携・協力が不可欠な課題も多い。担当者レベルで自発的に調整や協力が行われることが望ましいが、課長自身が積極的に他の課と対話する姿勢を示すことで、それらがより促進される。実際に、課長同士がどれだけオープンかつフランクに話し合えているだろうか。職場の規律を維持するとともに、健全な職場環境を確保することも課長の重要な役割である。具体的には、責任を持って担当業務を遂行させること、やって良いことと悪いことを明確に伝えて守らせること、業務負荷や人間関係など職場の状態を把握し、必要ならば改善措置を講じることなどである。最後は人材育成である。第一の役割と並ぶ課長の最も重要な役割の一つと言える。組織における人材育成はOJT(On the Job Training)とOff-JT(Off the Job Training)に大別され、一般的にはOJTの役割が大きいとされている。課のパフォーマンスと個々の職員の成長の両方を勘案したうえで業務を付与し、適宜的確な助言と動機付けを行いながら、一定の成果をあげさせ、さらに難度の高い仕事に取り組ませる。O-JTの機会を与えることも必要であるし、ロールモデルとして自身の仕事ぶりを部下に示すことも重要な役割である。以上、述べたことを改めて整理すると、1)課の機能の具体的業務への展開と成果の実現2)問題発見、企画立案、改善促進3)課を超えた調整と連携・協力4)職場規律の維持と健全な職場環境の確保5)人材育成の5つが課長の基本的な役割となる。これら5つの役割を担うために、いかなる能力(知識、スキル、態度)が求められるのだろうか。1つ目は、課長の役割に対する理解である。上に述べた5つの役割に加え、自学において課長に期待される役割を正しく理解することが不可欠である。5つの役割を支える「5つの能力」2つ目は、担当業務に関する知識である。自分が率いる課が担当する業務の目的、根拠となる法令や背景となる政策動向、基本となる業務処理方法・手続き、実務上の判断を行ううえでの視点や基準等に対する理解が必要である。個別実務について部下より精通している必要はない。より大きな枠組みの中で、業務を捉え、本質を理解することが重要である。3つ目は、業務を効果的・効率的に推進するためのスキルである。課題を具体的な業務に落とし込み、優先順位をつけ、部下に割り当てる。仕事を進めやすい環境を整える能力も求められる。4つ目は、問題解決のためのスキルである。定性情報や定量情報の収集・分析、解決方策の検討、上位者や他部門を巻き込むための説明等がその要素であり、特に、若い段階から論理的思考力を鍛えておくことが大切である。5つ目は、対人関係能力である。コミュニケーション、動機づけ、意見・利害の調整等がその要素となる。これらの能力と上に挙げた4つの能力が合わさることで、上位者、部下、他部門等との間で信頼を構築することができ、信頼構築がリーダーシップの発揮に繋がる。次に、部長の役割について考えてみたい。「部長」は、トップマネジメントの1つ下の階層として、トップの考え方に直に触れる機会も多い。従って、その方針を課長に正確に伝え、課長による具体的業務への展開を促し、その遂行と成果実現のための指導・助言を行わなければならない。また、トップマネジメントを支えるスタッフとして、トップが行うビジョン・戦略の構想、方針・計画の策定、重要な意思決定等に関して、情報の提供、助言、提案などを行うことで、積極的に関わっていく必要がある。部内における課間の連携の促進、課を超えた経営資源の調整・再配分、既存組織の枠組みを超えたプロジェクトの創出とチームの編成、部を超えた調整と連携・協力も重要な役割である。さらに、視野を多様なステークホルダーや地域・社会・世「部長」には課長と異なる固有の役割がある

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