カレッジマネジメント208号
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40リクルート カレッジマネジメント208 / Jan. - Feb. 2018首都大学東京(以下、首都大)は2005年に東京都立大学・東京都立科学技術大学等4校の統合により誕生した、東京都の公立大学である。「大都市における人間社会の理想像の追求」を大学理念の根幹に据え、都市に集積する様々な課題に対し、社会と連携しながら、広い分野横断的視野と深い専門的学術の教育研究を担う。2017年3月に発表した第三期中期計画の中には、「入試改革の推進」と題し、「2017年度にアドミッション・センターを設置し、教学IRに基づく入学者選抜方法の検証・改善を行い、2020年度以降に実施予定の大学入学者選抜改革に対応する」「国際バカロレア資格等を活用した入試を拡大するとともに、AO入試等の多様な選抜による募集人員を全体の30%に拡充する等、志の高い多様な学生を選考するための入試制度を充実させる」とある。「2020年入試改革、2024年高校指導要領改訂等を見据え、入試の大きな方向性を示す必要があります」と、アドミッション・センター長の川上浩良教授(入試改革学長補佐)は話す。また、その実行段階に関し、いくつかのポイントがあるという。まず、運営組織変革である。新たにアドミッション・センターを設置し、より戦略的・包括的に入学周りの業務を担うものとした。入試設計・運営に加え、高大接続の設計や、入試ごとの成果検証・分析に基づき改善開発等も行う。「まずは現行入試の分析と、それに基づく2020年の入試設計に取り掛かっています。指導要領の科目変更等もあるのでそのまま使えるわけではありませんが、まずは現状のエビデンスを棚卸し、今後のデータ集積も踏まえ、ゆくゆくは入学時点の試験・科目等とカリキュラム・成績、卒業までの横断解析に取り組んでいきます」。その結果をもとに大方針を示し、採りたい学生像とその方法論を議論していく。合わせて東京都教育委員会や都立高校との連携、カリキュラムサポート等も行うという。次に、教育再編である。首都大は2018年に4学部7学科から7学部23学科へ、学部学科を大きく変更する。開学から10年余り経過する中、社会も大きく変化しており、教育体制を現状に合わせて再構築したわけだ。特に都市環境学部は都市に特化して学ぶ、国内でも稀有な学部である。「地球上の人口の7割は都市部で生活しており、人類規模の問題の大半は都市で起きています。『都市』というテーマで学部を作り、学問系統を構築しているのは本学特有と言えます。その中身は観光科学、都市機能や環境整備、ランドスケープデザインを含めた建築や政策面のアプローチに至るまで、極めて多岐にわたり、異なる分野融合、文理融合で学びます」。首都大は首都に根差す大学であってこそ、首都大というわけだ。その他詳細は誌幅の都合上割愛するが、全体的には時代の変化に対応し、少子化でも選ばれる大学になるための価値議論の末の再編であるという。前述した首都大にしか掲げられない理念を、入学者選抜、教育、卒業においてどう整合させるのか。見てきた通り、教育面では理念に沿った改革が進んでいる。育成人材は都市部の課題解決者として卒業後も活躍する実績を持つ。では入学者選抜においては、理念を入学者選抜にどう活かすのか川上浩良アドミッション・センター長大都市東京に根差し課題解決を担う多様な人材を選抜する高大接続の入学者選抜6首都大学東京2020年に向けた改革

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