カレッジマネジメント211号
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10リクルート カレッジマネジメント211 / Jul. - Aug. 2018トが人間の仕事、特に物理的な負荷が高い業務をロボット技術で支援することや、定型的な事務処理の業務をAIで効率化することにより、労働力不足を補うことができるのではないか。情報通信業では、IT知識・技術に精通した人が今後より一層必要になってくる。AIが多種多様な業界の企業に導入されるようになることで、情報通信業のみでなく各産業のそれぞれの企業でデジタル知識に精通した人材が必要になる。今後、推計以上に情報通信の業務に従事する人材は増加していくと考えられる。その他のサービスには派遣労働者が含まれている。ここもAI時代には推計以上に就業者数が増えることが予想される。詳しくは後述するが、AIの導入はホワイトカラーの事務作業をはじめとする定型的な業務の自動化を促す。それは人材に求められるスキルがAIにはできないスキルとなり、そうしたスキルを持つエキスパートは兼業・副業をはじめとする柔軟な働き方でこそ強みを活かせるようになる。AIは働き方そのものを変化させるきっかけとなると考えられるのである。一方で、製造業、鉱業・建設業、そして卸売・小売業では就業者数が減少傾向にある。製造業及び鉱業・建設業で就業者数が減少するのは、業務の機械化・自動化が進むことが要因の一つと考えられる。例えば進捗状況に応じた業務の変更について、これまで人間の目で個別に見て判断しなければならなかったものを、AIを用いた画像判読で特に重要と考えられるものを判定することができる。人の知識や経験に基づく最終的なノウハウ・判断まで全てをAIが代替することは難しいが、視覚や聴覚といった人でなければ認識できなかった情報を、AIがサポートすることによって人の業務の負荷を軽減することは可能になるだろう。卸売・小売業では、商品の在庫管理や物流の最適化や、画像認識やセンサー等のデジタル技術を活用した無人店舗の拡大、バックオフィスにおける定型的作業や事務処理業務の自動化が見込まれる。野村総合研究所では、英オックスフォード大学のオズボーン准教授、フレイ博士との共同研究によって、AI・ロボット技術による職業のコンピュータ化可能確率を推計した。図2-2に、個別の職業について自動化可能確率と雇用者数の分布を示す。ここでは、総合事務員、会計事務従事者、その他の一般事務従事者等、「事務職」すなわち「ホワイトカラー」が、たくさんの人が従事していながら代替可能確率が高いこ21世紀の自動化はホワイトカラーで起こる1008060402050001,0001,5002,0002,5003,0003,5000雇用者数(千人)コンピュータ化可能確率(%)出所) NRIと英オックスフォード大学マイケル A.オズボーン准教授等との共同研究(2015年)ビル・建物清掃員配達員会計事務従事者総合事務員庶務・人事事務員販売店員調理人飲食物給仕・身の回り世話従事者その他の運搬・清掃・包装等従事者介護職員(医療・福祉施設等)その他の営業職業従事者看護師(准看護師を含む)食料品製造従事者電気機械器具組立従事者自動車運転従事者その他の一般事務従事者図2-2 職種ごとのコンピュータ化可能確率と雇用者数の分布就業者数が多い事務職・ホワイトカラー業務も、コンピュータにより代替が可能となる

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