カレッジマネジメント211号
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50経済・経営・人文・法・薬学部の5学部からなる松山大学は、1923年に創設された松山高等商業学校を淵源とする95年の伝統を持つ大学である。初代校長加藤彰廉の示した「真実・実用・忠実」の「三実」を校訓とし、在籍学生数約6000名、教職員数約350名と四国地域の私立大学で最も大きい学生規模を擁している。このような地方の伝統ある私立大学である松山大学では、2017年1月に歴代最年少である42歳で学長に就任した溝上達也理事長・学長(学校法人松山大学の理事長は松山大学学長が兼務する制度が採られている)のもと、2026年度までの10年間を対象とする「MATSUDAI VISION 2027 学校法人松山大学 第1次長期経営計画」を策定している。この長期経営計画の策定は、「中長期経営計画検討プロジェクトチーム」(後述)を中心に、経営面は新井英夫常務理事(法学部教授)が、教学面は熊谷太郎副学長(経済学部教授)がそれぞれ担当して進められた。新井常務理事、熊谷副学長は、溝上理事長と同世代であり、法人と大学が一体となって、40代の責任者が中心となり長期経営計画の策定が進められてきたのである。この長期経営計画の策定の背景とその特徴について、お話をうかがった。なぜ松山大学では、10年間を視野に入れた長期経営計画の策定を進めてきたのか。この質問に対して、「愛媛経済圏の動向、文部科学省が進める教育改革へ対応してい第1次中期計画の完成時が創立100周年くにあたって、地方に立地する大学として大学運営のための計画が必要であるという認識は、10年くらい前から学内で意識されてきた」と新井常務理事は話す。しかし、松山大学では学長の任期は1期2年とされ、最長でも3期6年までとされていることから、長期で経営を見ることが難しく、組織としてのウィークポイントとなっていた。このようななか、溝上理事長は、昨年1月に理事長・学長に就任して最初に、長期経営計画の策定に着手した。長期経営計画の策定自体が、法人内部で以前から必要性が意識されていた課題であったためだけでなく、例えば、耐用年数を迎えた施設の建て替え等、直面する一つひとつの課題に取り組むためには、財務を含めた計画的裏付けのある中長期的な方針が必要であると考えたためである。経営計画の策定に当たっては、法人として10年後の2027年を見据えた長期経営計画を策定し、この計画に基づいた具体的な実行計画として4年間を対象期間とする中期計画を作るという進め方が採用された(図1)。長期経営計画で方向性を明確にしたうえで、2018年度中に2019年度から2022年度までの4年間を対象とする「第1次中期計画」を策定し、創立100周年を迎える2023年に第1期中期計画が終わるというタイムスケジュールが描かれている。そして、2023年度から2026年度の「第2次中期計画」を策定・実行することで、長期経営計画の目標とする10年後の2027年を迎えるという全体の計画である。これら中期計画の内容を、単年度の事業計画書・事業報告書に反映させリクルート カレッジマネジメント211 / Jul. - Aug. 2018「『知』の拠点」であり続けるために地方の伝統大学が打ち出す長期経営計画溝上達也理事長・学長松山大学C A S E340代の責任者が推進する長期経営計画策定< MATSUDAI VISION 2027 >

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