カレッジマネジメント211号
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55リクルート カレッジマネジメント211 / Jul. - Aug. 201818歳人口は、2017年120万人から2030年には104万人にまで減少する。これから13年間で16万人減少することになり、大学進学率を現状のまま約5割として計算すると、8万人がマーケットからいなくなり、定員規模1000人の中堅大学が80校なくなる計算になる。その時の大学の定員充足率をリクルート進学総研で試算すると、全国平均で93.3%となる。将来構想部会では、2033年には18歳人口が100万人を切り、定員充足率が全国平均で約85%になると予測しているが、2030年時点で既に大きく定員割れの状況となる。さらに、これは全国平均であり、都道府県別全体として定員を確保できるのは、P16〜17の人口減少マップ通り、東京都と沖縄県のみという計算になる。全体として、“地方”“小規模大学”が厳しい状況にあるとされているが、将来の人口減少マップを見ると、今後その傾向はさらに強まるものと考えられる。このような状況に対し、政府も手をこまねいているわけではない。日本国内における高等教育全体の規模や地域配置と、国際競争に耐えうる教育・研究の質の向上をどのように両立させていくかというテーマが大きな課題として浮上している。国内における高等教育全体の規模や地域配置については、既に大規模大学の定員超過率の抑制が、小規模大学の定員充足に対して一定の成果をあげている。今後は、地方創生の観点から、10年にわたって東京23区内の大学に対する定員規制も行われる予定である。さらに、2040年に向けた議論が進められており、特に話題を呼んでいるのが大学間連携・法人統合である。一つの国立大学法人が複数の国立大学を経営できるようにする制度改正が検討されており、既に名古屋大学と岐阜大学の間で法人統合の議論が進められている。こうした国立大学の法人統合は、これから増えてくると予測されるが、統合により法人としての生産性向上、競争力の強化を実現できるかが大きなポイントとなろう。さらに国公私立大学の一体的な連携に基づく統合も視野に入れた一般社団法人「大学等連携推進法人(仮称)」の設立が提示されている。それぞれ各地域において、学問領域の多様性を担保しつつ、経営の効率化を図っていくことを想定しているのではないだろうか。日本の高等教育を長期的な視点で考えると、機能や役割の分担を明確にした大学の統合や連携システムが各地域で構築され、大学間で相互に補完しつつ“地域の高等教育を担うシステム全体として”、効率化、競争図1 2030年のマクロ環境変化まとめと高等教育機関への影響・日本の人口減少、2030年まではアジア、2050年にはアフリカの人口が増加(欧州・中国は人口減に)・日本の労働人口は、約800万人(四国二つ分の人口総数)が消滅 ・国際的な外国人労働者の獲得競争⇒国内労働は多様な労働力の活用(女性・高齢者・外国人)・日本の成長産業は「ヘルスケア(医療、福祉、介護等)」、「情報通信(AI、ロボット、IT等)」・AIの活用、ロボット化等により職種ニーズも変化(特にホワイトカラーで自動化が進む)上流工程(企画職、研究開発職等)、IT関連職、高付加価値な営業・サービス職・生産性向上(働き方改革)・国連が取り組む『持続可能な開発目標(SDGs)』への対応が進む・様々な分野でICT・AI活用(FinTech、HR Tech、EdTech等)の進展・人生100年時代「学ぶ時期→働く時期→老後」の3分割から、学ぶと働くが行き来する人生にマーケット規模の縮小と教育・研究の高度化の両立(連携・統合)・TeachingからLearningへ・ブレンディッド教育・学修成果重視社会人の学び直し機会(ICTの活用)・アジアの大学の台頭・多極化への対応 (or海外キャンパス)高等教育機関への影響本格的な多様性(ダイバーシティ)への対応(女性・社会人・留学生)Ⅰ.人口減少への対応2030年、高等教育機関の展望適正規模・地域配置と質向上の両立が課題に編集長の視点

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