カレッジマネジメント211号
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57リクルート カレッジマネジメント211 / Jul. - Aug. 2018直面することになる。山積する課題に対応するため、まず建学の精神や教育理念に基づき、どのような人材を育成しているのかという観点から、将来に向けた戦略の軸となる中長期ビジョン、中期計画に基づく工程表を策定する必要がある。志願者の量と質、学部・学科の再編、入学前・入学後の学生の意欲向上等、様々な課題への対応が求められる。しかし、中位に位置するこのセグメントは、マーケティング上では「スタック・イン・ザ・ミドル」とも呼ばれる。拡大戦略も差別化戦略もとれず、意思決定が遅れ、どっちつかずの戦略に陥る可能性があるということだ。そうした事態に陥らないためにも、改革の推進に向けた意思決定のスピードを上げるためのガバナンス改革、教職協働やSD・FDの推進、組織の一体感の醸成という組織課題への対応が重要課題となる。・カテゴリーキラーの戦略左上の小規模・高倍率のセグメントで、マーケティング上でいうと、「カテゴリーキラー」あるいは「ニッチャー」と呼ばれるポジションである。小誌208号で「小さくても強い大学」として特集した、小規模でも強い個性によって志願者を集めている人気大学は、このセグメントである。このポジションで重要なのは、まずどのカテゴリー(領域)のキラーを目指すのかを決めることである。国際性、資格取得、地域密着、研究力、業界連携、就職等、その領域で徹底的に特色や強みを磨いていくことが重要となる。突きつめていけば、強みを活かして全国募集型の大学にもなりうる。しかし、このセグメントでは、2019年に新設される「専門職大学」が競合となる可能性がある。いずれにしても、ポイントは、「形容詞の付いた規模志願倍率【カテゴリーキラー】・カテゴリーキラーとしての特徴付け・形容詞のついた付加価値の高い人材・【プロフェッショナル】の育成・個性を強みに、 全国募集型大学に・専門職大学の 学生争奪戦【淘汰予備軍】・定員確保 ・経営再建・地域ニーズに基づく公立化の検討 ・専門学校との学生争奪戦【大手総合人気大学】(リーダー)・中長期のポジションの確立(ブランディング)・より質の高い入学者の確保・多様性の確保(地方・女子・外国人・社会人)・アジアの大学との競争・他大学との統合・連携(M&A的拡大)・付属校、係属校の統合・閉校・収益の多角化(寄付金等)【中規模・中倍率大学群】(チャレンジャー)・生き残りのポジション確保(個性化・差別化、 ブランディング)・スタック・イン・ザ・ミドル(どっちつかず) からの脱却・志願者数(「量」)の確保(歩留り向上策)・入学者の意欲向上(入学前・初年次教育)・学部・学科の改編(商品ラインアップの見直し)・付属校の統合・閉校【カテゴリーキラー(単科)】(ニッチャー)・差別化による特徴強化 (どんなプロを育成するのか)・付加価値の高いプロの育成 (国際、就職、資格、語学、地域etc.)・資格+人間力や教養【淘汰予備軍】(フォロワー)・毎年の定員確保 →地元密着型(Local to Local) →地元高校とのリレーション強化 →定員補充のための、留学生の取り込み →定員の縮小による充足率向上・学部・学科の再編(商品ラインアップの見直し)【中規模・中倍率大学群】・生き残り大学としてのポジションを確立・地元公立大との競合・大学ブランド力低下による 付属校の募集悪化【大手総合人気大学】・法人としてブランド校のポジションを確立 ・グローバル化への対応 ・国立大との競合・多様な学生の確保(留学生・社会人・地方戦略)高倍率 (8倍~)中倍率 (3~8倍)低倍率 (~3倍)小規模大学 (1学年~750人)中規模大学(1学年750~2000人)大規模大学 (1学年2000~)大学セグメント別経営課題の整理海外の有力大学マーケティング上の課題組織課題全てのセグメントで意思決定のスピードアップが必要に教育の質保証・PDCAサイクルの実践教職協働・スタッフディベロップメントガバナンスの強化・ブランド力の向上個性化 差別化メッセージ理念に共感 した学生確保※大学規模については日本私立学校振興・共済事業団「今日の私学財政」に基づいて算出特集 2030年の高等教育図2 【改訂版】2030年を見据えた私立大学のセグメント別競争戦略の考え方 編集長の視点

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