カレッジマネジメント211号
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6リクルート カレッジマネジメント211 / Jul. - Aug. 2018「2030年には、今と比べて約800万人の働き手が減少する」労働政策研究・研修機構(JILPT)による「平成27年 労働力需給の推計」では、わが国の労働力人口※1について、2014年の実績である6586万人から2030年には5800万人へとおよそ800万人、割合にして約12%減少するとの予測がされている(図1-1)。同時期の人口総数全体の減少率が約8%であることを踏まえると、少子高齢化の進展は今後の労働力不足をさらに加速させていくことが不可避であることを示している。この800万人という数字は四国二つ分の人口総数とほぼ等しい。日本は2030年に向けて、四国二つ分の労働力を失うことになるのである。この推計モデルでは、まず消費等のデータから産業別の労働力の需要を推計し、次に雇用等のデータから性・年齢階級別の労働力の供給を推計。さらに需給調整を有効求人倍率、完全失業率、賃金上昇率等の関数を利用してシナリオ別に2030年の労働力人口を推計している。人手不足に対する打ち手としてまず考えられるのは、このシナリオの一つで想定されている、女性・高齢者の就労促進である。最も楽観的な予測シナリオである「スウェーデン並みに女性が働き、高齢者が5年長く働く」という仮定※2における推計においても、労働力人口は約200万人減少するという結果が示されている。重要なのは、「スウェーデン並みに女性が働き、高齢者が5年長く働いても、人手不足は解消しない」という点で人手不足に対する日本の選択2030年の日本1※1労働力人口とは、満15歳以上の人口のうち、就業者、休業者、完全失業者の合計である。※230~34歳女性の86%(現69%)が労働参加し、60~64歳男性の91%(現75%)が労働参加するとし、経済成長が2%進むというシナリオである。野村総合研究所ICTメディア・サービス産業コンサルティング部未来創発センター(兼務) 上級コンサルタントうえだ・えとな AI、決済、通商など、複数の事業領域にまたがる戦略の構築・実行支援、および政策立案に従事。AIと共存する未来を提言してきた。上田 恵陶奈野村総合研究所インサイトシグナル事業部主任コンサルタントこうたに・よしき 情報通信分野、金融分野、製造分野における新規事業立案やマーケティング、3DプリンターやIoT、APIなどの新領域に関する検討に多く従事。光谷好貴野村総合研究所ICTメディア・サービス産業コンサルティング部主任コンサルタントきし・ひろとし テクノロジーを起点にした情報通信・放送分野の事業戦略、デザイン思考の実践によるイノベーションマネジメントを通じた戦略立案・実行支援に従事。岸 浩稔野村総合研究所ICTメディア・サービス産業コンサルティング部コンサルタントおのでら・もえ 情報通信・放送分野、物流分野における事業戦略、ビジョン策定、イノベーション戦略、通信及びイノベーションに関する政策立案に従事。小野寺 萌2030年の日本の労働市場と求められる人材迫りくる労働力不足産業構造・就業構造の姿とは特集 2030年の高等教育寄稿

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