カレッジマネジメント211号
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8リクルート カレッジマネジメント211 / Jul. - Aug. 2018さて、図1-2右下の領域「新たな労働力の雇用」では、先に言及した女性や高齢者の雇用促進がまず挙げられるが、ここでは外国人労働者の雇用という視点を考えてみたい。日本では労働力不足の問題を考える際に、外国人労働者をより受け入れるかどうか、という議論が多く聞かれる。しかしそこには「門戸を開ければ外国人は来てくれる」という暗黙の前提が存在している。図1-3に日本の在留外国人の人数と人口に占める割合を示す。外国人人材の活用が叫ばれて久しいが、日本にいる外国人の数は大きくは増えていない。「高度人材」や「技能実習生」という、就労を前提にした外国人人材の獲得については、日本は既に積極的に受け入れを進めているのだが、なかなか増えていないのが実情である。日本が積極的に受け入れを行っている対象の外国人であっても、これまでに大きく人数が増えていないのは、日本の就労先としての魅力が高くないことが一つの外国人は呼んでも来てくれない要因にある。スイスのビジネススクールIMDが発行しているWorld Talent Report 2017では、外国人人材を自国のビジネス環境に惹きつける国別ランキングでは、対象となる先進諸国63カ国のうち日本は51位となっている。日本の労働環境をグローバルな視点で見てみると、①日本語が要求されるという語学の壁、②国際的には決して高くない給与水準、③高いサービスレベルの要求、という三重苦の構図が見受けられる。改めて考えてみると果たしてどのような人材が日本で働きたいと思ってくれるのか、半分冗談であり半分本気の話として、漫画やアニメが好きな人しか日本で働いてくれないのではないか、とも考えられる。国際的な人材獲得競争も勃発している。図1-4に、日欧中における生産年齢人口の推移を示す。日本は少子高齢化の課題先進国だといわれ、生産年齢人口すなわち働き手人口は1995年をピークに減少を始めていた。欧州は2010年から減少が始まったが、実は中国でも2015年をピークに働き手が減少し始めている。労働力の獲得元としてアジ出所) 法務省「在留外国人統計」2,500201510502,0001,5001,00050002008年12月末2009年12月末2010年12月末2011年12月末2012年12月末2013年12月末2014年12月末2015年12月末2,2172,1862,1342,0792,0342,0662,1222,232(万人)(%)高度人材比率在留外国人出所) United Nations “World Population Prospects, the 2015 Revision” (数値は中位シナリオを使用)よりNRI作成1210864201985199019952000200520102015202020252030(億人)(年)日本は1995年がピーク欧州は2010年がピーク中国は2015年がピーク中国は2025年から 総人口減、労働輸入国へ日本欧州中国図1-3 日本の在留外国人数と高度人材比率の推移日本にいる外国人は、あまり増えていない図1-4 日欧中の生産年齢人口(15歳~64歳人口)の推移中国をはじめとするアジア各国も、労働力不足問題に直面。国際的な労働力獲得競争が起こる

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