カレッジマネジメント217号
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18リクルート カレッジマネジメント217 / Jul. - Aug. 2019は、ガバナンスや意思決定プロセスの見直し等で、私立大学に一定の影響を与えたことが分かる。ただし、個別の事例を見ても、それぞれの事情に合う形での変更を実施しているようである。今回の法改正の前から、自ら必要な学内制度の改正を行ってきた大学も少なくないことも分かった。制度改正の議論において、ガバナンス改革は手段として捉えられ、それを行うことによって大学改革が進むというロジックが前提にあるが、多くの大学改革を調べ、インタビュー調査をする機会が多い筆者の印象はむしろ逆で、教学改革・入試改革等で一定の成果を上げて学内の信頼感を得たところで、必要なガバナンス改革も実現でき、それによってさらに改革がしやすくなるという時間的順序をたどる大学が多い。法改正は確かに大学の行動に一定の影響を与えるが、ガバナンス改革の議論だけでは限界もある。今回の私立学校法等の改正が衆議院で議論された際に、筆者は参考人に呼ばれ、「2015年の学校教育法の改正で、教授会のチェックが利かなくなり、私立大学の入試の不祥事は起きたのか」と質問を受けた。教授会の位置づけという制度の変更そのものが直接に不祥事につながるとは思わないが、制度変更が構成員の意識の変化に影響を与えたのであれば、間接的な影響がないとは言えない。教授会を諮問機関とし、トップの権限を強化する傾向の中で、教授会が「学長の責任だそうですから勝手にどうぞ」と教員の無関心や白けムードになっている話を聞くことがある。また、学部長等の損な役回りになりがちな役職を教員が忌避する話を聞くことも少なくない※7。ごく一部の話かもしれないが、これらは望ましくない変化だと危惧している。教授会を通じた経営参加と合意による意思決定は、責任の所在が曖昧になり、多くの教員が管理運営に多大な時間を割かれる課題がある一方で、教員が責任を持って考え、学内運営に関わる良い面もあった。教員の経営参画を単純に制限するのではなく、別の形でのより良い参加のあり方や、教員の責任ある参加や当事者意識をどのように育てるのかについての議論が不足している020406080100(%)020406080100(%)学科長学部長副学長学長図4 選任方法の見直し図5 改革への取り組み(注)私学高等教育研究所「私立大学におけるガバナンス及びマネジメントに関する調査」(2017)より作成(注)私学高等教育研究所「私立大学におけるガバナンス及びマネジメントに関する調査」(2017)より作成無回答未定見直す予定はない現在、見直すか否か検討中学教法改正で見直した過去(約20年の間)に変更無回答取り組んでいない改正後に取り組んだ改正前(約20年の間)に取り組んだ監事の常勤化理事の常勤化 理事長の補佐体制の強化 事務職員の経営参画 方針や計画の達成度評価の強化 意思決定プロセスの見直し 経営と教学の連携・協力体制の強化 企画部やIR組織を整備・強化教育の質向上のための教学マネジメント強化 将来構想、中期計画の策定・改正 22.311.714.69.517.22.640.512.817.523.057.339.833.942.023.439.430.726.63.344.939.137.612.86.978.51.85.852.24.416.141.23.615.036.93.351.123.02.632.822.62.649.616.10.445.312.82.233.27.32.23.639.89.99.124.12.640.19.112.425.22.940.96.91.8大学改革を推進するために何が必要か①教員の責任ある経営参加と当事者意識の醸成

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