カレッジマネジメント228号
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23リクルート カレッジマネジメント228 / May - Jun. 2021オンリーワンの価値を最大限に高めることで、「選ばれる大学」を目指すことが求められている。これに当たっては、地域の産業構造や、それぞれの産業の市場動向も見極めながら、人材に係るニーズを踏まえた検討が必要不可欠である。ただし、ニーズとトレンドが異なることには注意が必要である。社会に求められる人材を育成していくことはもちろん重要であるが、表層的なトレンドを追うのではなく、研究を通して社会の本質的ニーズに応えつつ、次のニーズをリードできるような人材を育成していくことが理想である。地方大学は、様々な観点で地域でのプレゼンスを発揮することが期待されている。なお、ここでいう「地域」とは、必ずしも「地元」に限られず、県境や国境を超える連携も考えられるが、そのような場合であっても結果的に大学の力を「地元」に裨益させる可能性を模索する姿勢を欠いてはならない。大学の持つ知的・人的リソースの地域産業への貢献という意味では、まず地域産業の第二創業的なイノベーションにつなげる等、地域産業の磨き上げに資することが考えられる。地域産業には高い潜在力を持っている企業が少なくないので、その潜在力を引き出すことで、魅力ある地域産業を創出することも可能である。また、地元地域の産業が必ずしも成熟していない場合には、大学自ら新産業の創出につなげる等、新産業創出の原動力としての役割を果たしていく可能性も考えられる。「産学連携」は研究だけではなく教育面でも重要であり、質の高い人材育成につなげる視点も重要だ。キャンパス①地方大学の本質的な改革を促すために・「自ら開設」の原則をはじめ、DX等を踏まえた制度・運用を模索する・地方国立大学に対し地域への貢献を新たなミッションとして明示するとともに、運営費交付金を追加配分する等の環境整備の検討を行う・補助金予算の一部の運営費交付金への移管や、大学の自由裁量で活用できる補助金枠の創設等、運営費交付金の根本的な部分の見直しも含めて検討を行う②地方国立大学における特例的な定員増を価値あるものとするために・文部科学省と本検討会議で合意されたプロセスに基づき審査・選定を行った上で、極めて限定的で、特例的に行う必要性が認められる場合に、地方国立大学の定員増を認める・文部科学省は定員増を伴う改革については、従来の運営費交付金とは切り分けて、研究・教育に必要となる経常的な支援を行うべきである・文部科学省は、大学に対し定員増に関わるミッションや5年程度の目標を設定させ、中長期的に大きな裁量権を与えるとともに結果責任を問うような、包括的かつ結果管理型の契約的な考え方を取り入れるべきである・改革を行う組織に対して国からの支援も大学本体とは切り離し経営的に独立させること等、効果的な支援の在り方について検討を行う○18歳人口の減少・グローバル化やSociety5.0時代の到来・地方大学の厳しい現状を踏まえ、・大学の存続は地域全体の課題。首長や関係者のアクションが必要・地方創生に資する地方大学のモデルを早急に創出し、他に波及すべく、本当に変わろうとする大学・大学の中で特区的に改革を進める主体を見いだし、改革を進めるための支援を実施地方創生に資する地方大学が目指すべき方向性と国における対応について、本年9月から12月にかけて検討会議を計7回実施し、以下のとおり取りまとめを行った。※本取りまとめにおいて、「地方大学」とは、東京圏以外に所在し、地方創生への貢献をそのミッションとする大学を指す。・首長のリーダーシップにより地域の高等教育の将来像をデザインし、ステークホルダーで共有し、ビジョンの実現に向けた動きを具体化する・地域金融機関のサポートも受け、産学官が意見を交わす機会を恒常的に確保する①ニーズオリエンテッドな大学改革を目指すべき・人材ニーズ等を踏まえ、他大学との差別化により「選ばれる大学」を目指す②地域でのプレゼンスを存分に発揮すべき・大学の持つ知的・人的リソースにより、地域産業の第二創業的なイノベーションや新産業の創出につなげるほか、産学連携により質の高い人材育成を行う。また、民間や国公私を超えた大学間の連携・協働を行う③大学改革を実現するため、ガバナンス改革に取り組むべき・トップの覚悟とそれを学内に浸透させる工夫を行う。民間人材を積極的に登用する。学部・学科間の横並び意識に基づく「悪平等」を排するほか、「教員ガバナンス」によった学長選考プロセスを早急に見直す○地方を支える知の拠点として公立・私立大学は重要な役割を果たしており、今後さらなる飛躍が期待される○国立・公立・私立を問わず地方大学が、地方創生に資する大学を目指しトランスフォーメーションを進め、さらに魅力的に発展していくために本取りまとめを役立てていただくことを期待する○国は、以下について早急に検討・具体的に対応すべき○本検討会議を存続し、適宜文部科学省と意見交換することで、同省における議論と有機的に連動し、先導的影響力を行使することを期待○コロナ禍による急激なDX化をチャンスに、知的・人的リソースを地域経済活性化につなげる地方大学の実現のため、以下の方向を目指す○大学の力を活用しつつ、地方公共団体・産業界・金融機関等との連携により、地域が持つ潜在力を発揮し、多様なイノベーションを期待1.はじめに3.地方公共団体や産業界等への期待2.地方創生に資する地方大学が目指すべき方向性4.国における今後の対応5.おわりに地方創生に資する魅力ある地方大学の実現に向けた検討会議 取りまとめ 【ポイント版】令和2年12月22日 地方創生に資する地方大学の実現に向けた検討会議②地域でのプレゼンスの発揮特集 地方大学の新たな選択肢

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