高校生の保護者のためのキャリアガイダンス2015
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互い切磋琢磨させて教育効果を高めたい、という考えです。 高校・大学を通じて三要素をバランス良く育成するとすれば、「知識・技能」の一要素のみに偏った1点刻みのペーパーテストだけで入学者を選抜する「大学入試」をいつまでも続けていてはいけない、というのが中教審の問題意識です。 そのため、センター試験に代えて新設する「学力評価テスト」では、教科にとらわれない「合教科・科目型」員の声が聞かれます。これからの大学教育では、正解のない課題を自ら見つけ、自分なりの解決方法を見いだしていく力を付けさせようとしている中では、深刻な問題です。 東大や京大が16年度から一部の募集定員とはいえ大胆な入試改革に踏み切る方針を発表したのも、そうした危機感が背景にあったと言えます。一定の学力は必要だとしながらも、後は多様な尺度で評価して、学生に多様性を持たせ、入学後にお「総合型」の問題を出題するとともに、成績提供を点数ではなく段階別に表示することにしたのです。これにより思考力などを測ることができるだけでなく、大学側も1点刻みで合否を判定できなくなるため、必然的に調査書や面接結果など多様な資料を集めることを余儀なくされるわけです。 1点刻みの合否判定でない選抜で、公平な入試になるのか――と疑問に思われることでしょう。受験競争が厳しかった時代に学生生活を送ってきた保護者の世代はもとより、今の大学・高校関係者の多くにもそうした声は根強くあります。 しかし答申はあえて、そうした「公平性」をめぐる社会の意識を改革し、多様な力を多様な方法で「公正」に評価し選抜することが必要であるという意識を醸成していくべきだ、としています。これからの厳しい時代を生きる生徒・学生に必要な力を付けさせるため、あえて社会の観念に対して挑戦状をたたきつけるとともに、それを実現する改革方策を断行しようとしているのです。授業、体験、課外活動・・・高校生活全体が重要に ところで、中教審答申の正式名称は「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」といいます。ここからも、単なる「大学入試改革」を目指した答申ではないことが読み取れます。 そればかりか、答申には「『高大接続』の改革は、『大学入試』のみの改革ではない」と、はっきり書いてあります。現行の入試が改革された後の姿は、もはやペーパーテスト中心の「入試」ではなく、多様な評価に基づく「入学者選抜」なのです。 大学入学者選抜は、ゴールではありません。大学に入ってからの教育を通して、どのように社会で通用する能力を付けるかが問われているのであり、そうした大学教育を受けるに耐え得る力を付けることが、高校教育に求められているのです。 それは決して「受験学力」だけで足りるものではありません。アクティブ・ラーニング(※)を含めたさまざまな授業や、さまざまな校内外での体験活動、さらには課外活動など学校生活の全体を通じて身に付くものです。そうした能力を丁寧に評価して選抜しようとするのが、今回の「高大接続改革」なのです。普段の高校生活を一生懸命過ごすことが、ますます重要になってくるでしょう。図1 大学入学希望者学力評価テスト(仮称)の概要図2 大学入学希望者学力評価テスト(仮称)の今後の予定高大接続改革実行プラン 2015.1.16 文部科学省中央教育審議会 第95回 2014.11.20 資料より作成目的実施方法内容回答方式対象者これからの大学教育を受けるために必要な能力について把握する。「確かな学力」のうち「知識・技能」を単独で評価するのではなく、「知識・技能」の活用力を中心に評価● 年数回実施● 英語は民間の資格・検定試験を活用● 教科型に加えて、「合教科・科目型」 「総合型」の問題を組み合わせる ※将来的には「教科型」は廃止● 段階別表示による成績提供多肢選択方式だけでなく、記述式を導入大学入学希望者 (社会人も含め、誰でも受験可)29年度(2017)「新テストの実施方針」 策定(初頭)30年度(2018)プレテスト実施(30年度中)31年度(2019)本テスト 「実施大綱」(31年度初頭)32年度(2020)本テスト実施※調査や討論、グループワークなどにより課題発見・解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習35

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