高校生の保護者のためのキャリアガイダンス2016
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あるでしょう。そんな挫折や失敗を乗り越えたときは、「1分」よりもっと成長するかもしれませんね。鈴木▼痛みや苦しみがあるときこそ、ぐっと伸びる。「成長痛」みたいなものですね。●とはいえ、わが子には失敗させたくないのが親心でしょう。椿▼自分も高校生の子どもをもつ保護者の一人なので、よくわかります。しかし、だからといって周囲が失敗回避に動いてしまうと、かえって子どものためにはならないんですよね。森口▼つまずきから、自らの力で立ち上がることができたときの成長は大きいですよね。例えば、何かの活動で失敗してしまったとき、どうやって解決したらいいか、自分で考え動くことで力がつきます。しかし、潜在力があるのに、「誰かが解決してくれるのではないか」と自分で動かず、誰かに頼ろうとする生徒が増えているように感じています。頼まれもしないのに周りがいつも助けてあげると、手を差しのべてもらうことに慣れてしまって、行動を起こす力を奪うことになるのではないでしょうか。鈴木▼保護者の方には、ぜひ「失敗させる勇気」と「挑戦に対する称賛」をセットでもっていていただきたいですね。「失敗してもいいんだよ」と背中を押し、もし失敗してしまったら「あなたらしく挑戦したことはすばらしい」と認めることで、きっとお子さんはその失敗経験を糧にできるでしょうから。●日常のかかわり方を見ると、「毎朝子どもを起こす」「子どもの部屋を掃除する」という保護者は多いようです(p7・p10コラム参照)。椿▼勉強面などに比べて生活面は保護者のテリトリーなので、かかわりやすいんでしょうね。河口▼朝の起床は生活習慣だけでなく主体性の問題でもあるので、自分で起きてほしいところですね。遅刻するからと起こされて学校へ行くことに、自分の意思はないですよね。「休む」「遅刻する」などの選択肢がある中で、自分は「時間を守って登校する」を選ぶんだ、という意識をも韮山高校(静岡・県立)鈴木映司先生堀川高校(京都・市立)森口安紀先生松戸高校(千葉・市立)椿 仁やす三みち千先生担当科目は地理、バレー部副顧問、進路課。日本キャリア教育学会認定キャリア・カウンセラー、スクールカウンセリング推進協議会認定ガイダンスカウンセラー。「一人ひとりの心に灯をともす」がモットー。担当教科は家庭科、吹奏楽部顧問、学務部長。同校が学校改革を推進した時、進路指導主事として難関国公立大学合格実績に貢献。常に「生徒のキラっと光る何かをみつける」を意識。担当科目は生物、生物部顧問、進路指導部長。日本キャリア教育学会認定キャリア・カウンセラーの資格をもつ。進路指導歴26年で培ったノウハウを、後輩の先生に継承していくことが目下のテーマ。ってほしいんです。森口▼私は、進路選択へのかかわり方に、少し注意が必要だと考えています。今はできていなくても自ら自覚して行動するようになる基本的な生活習慣ならば、少しくらい依存しても問題ないと思います。しかし、大きな意思決定やそのための行動などは、必要に迫られて急にできるものではないですよね。ある程度の経験や知識が必要になります。主体的に進路の情報収集をしたり、志望校や学部を自分で決めたり、子ども自身が考えて動くように促していくとよいのではないでしょうか。河口▼同感です。私がいつも高校生の保護者の皆さんにお願いしているのは、「手放してあげましょう」の一点張りです。ある場所に行くとき、道を知っている人についていくだけだと、いつまでもひとりで行けるようにならないですよね。自分で地図を見て判断しながら歩いていけるよう、保護者の方には依存させる度合いをなるべく減らしていただきたい。依存と自立のうち、依存の割合を減らせば減らすほど、その分、子どもは自立するでしょう。●高校生になったのを機に、少し子どもとのかかわり方を見直したほうがよさそうですね。河口▼だからといって、これまでの関与を今後は一切やめてください、とい「失敗させる勇気」が子どもの成長を促す自信や決断力が育つよう少しずつ手放しを子どもの成長は、植物が伸びていくようにゆっくり。毎日見ていると気づかないかもしれません。鈴木先生ではよくないの?中学までと同じかかわり方6for Parent 2016

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