高校生の保護者のためのキャリアガイダンス2017
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25for Parent 2017 「数カ月かけて準備を進めるので、ものすごい達成感です。実際の授業が始まると、もう終わったような気になるほど(笑)」(三谷さん) そんななかで、授業を受ける側から教える側の視点がわかるように。 「どんなことにも、何かしらの意図があったんだと気づきました。おかげで他の授業でも、何でこれをするのかと、よく考えるようになりました」(安藤さん) そういう気づきが日頃の学びを深め、広い好奇心につながっている。 「まずは海外留学。申請をちょうどしたところ。いろんなことに挑戦したいと思います」(木ノ下さん)SAとして、後輩学生たちのサポートをいかにしていくか。仲間同士の連携や打ち合わせも念入りに。1年の成長を大きく実感できる瞬間でもある。人前で話すのが嫌いで、自分から積極的に何かをすることがなかった。テニス部には所属していたが、楽しければいいというタイプで、リーダーシップなんて考えたこともなかった。今、自分がこんなことをしているなんて、自分でもびっくり。ごりごりの体育会系野球部で、ひたすら野球。部活以外はほとんど何もしていなかった。言われたことをひたすらやって、でもなかなか成果も出せず、耐え忍んで頑張っていた。放送部には所属していたけれど、あまり活発に活動していなかったし、自分もあまり力を入れず。一度だけ、「変えてやる!」って言い出したことがあったけど、それも何もできずに失敗。口では「将来、大きなことをするんだ」など言っていたが、何も行動が伴わず、ぼんやり過ごしていた。中学では生徒会長、高校でもバレーボール部部長など、何かしらリーダーシップをとる役割だった。良い成績をとることが第一で、何が正解なのか、どういう行動をすればいいか、人の顔色から判断するようなところがあった。でも、大学では正解のないことばかり。今とは全然違っていた。経営学部の1年生は全員必修、2年生の前期は、経営学科は必修、国際経営学科は選択で履修する共通プログラム。企業の協力を得て、企業から出される課題に対し、半年かけて調査・研究・話し合いを繰り返し、プレゼンテーションを行う。どのような提案を行うかももちろんだが、その過程で、チームの中でいかに自分の力を発揮していくか、チーム力を生かすか、経験を通じて体験する。「カリスマではないリーダーシップ」を目指す。どんな高校時代でしたか?新しい学びが、なぜ必要なのかビジネス・リーダーシップ・プログラムとは?安藤さん●香蘭女学校(東京・私立)卒業木ノ下さん●立教池袋高校(東京・私立)卒業石井さん●湘南白百合学園高校(神奈川・私立)卒業三谷さん●成田国際高校(千葉・県立)卒業 今、世の中は大きく変化しています。グローバル化や情報化、ビジネスの高度化・専門化など、多くの社会的要因の変化に伴い、従来の教育の考え方が成り立たなくなってきています。新卒者の無業やニートなどが社会問題化するにつれ、学校から仕事への移行における構造的な問題も指摘されるようになりました。まさに、「学校から仕事・社会へのトランジション(移行)」が大きな課題となっています。 そこでの重要なポイントは、3つ。「主体的な学習態度」と、「対人関係やコミュニケーション」、「将来の見通しというキャリア意識」です。社会で働く人にとってみれば、当然と思える姿勢ばかりでしょう。言われたことしかしない、では社会では通用しませんし、他者との協働作業は不可欠です。将来の見通しを立て、未来と現在をつなぐ力をつけると、驚くほど意欲的に行動し、さまざまなことを貪欲に学び、強くなっていく学生を目の当たりにします。そこで、社会とつながるプロジェクト学習やアクティブ・ラーニングなどによって、力をつける意味があるのです。 「話はできない。声も小さい。でも、もくもくと問題を解いたりする子どもも尊重すべき」という声も聞かれます。しかし、多様な価値観の尊重と、その子どもが将来どうなるかということは別です。 大学では、そのような学生が社会で厳しい状況に置かれる確率がかなり高いことを知っています。残念ながら、社会で求める力というのは確実にあるのです。「個性」として見過ごすのではなく、社会といかにつなげ、大学で主体的に学び、力強い大人として社会で働き、生活を営めるようにする。そういう教育が重要なのです。社会で力強く生きる学生を育てるには、教育は変わらざるをえないのです京都大学高等教育研究開発推進センター教授大学院教育学研究科兼任溝上慎一先生撮影/平野 愛

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