大学の約束2016-2017
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Interview:学者 未来を語る益川敏英ますかわ としひで●1940年生まれ。名古屋大学大学院理学研究科修了。東京大学原子核研究所助教授、京都大学教授などを経て、2009年より現職。名古屋大学素粒子宇宙起源研究機構長・特別教授、京都大学名誉教授を兼務。2008年「クォークの世代数を予言する対称性の破れの起源の発見」で小林誠氏とノーベル物理学賞を受賞。京都産業大学 教授益川塾 塾頭10年後、20年後の未来を語るのは一番難しい。いっそ300年後なら語りやすいんですが(笑)。まずは、今ある日本の大学の問題点から考えてみたいと思います。一つめの問題は、〝ユニバーシティ〞(総合大学)ばかりが増えて〝カレッジ〞(単科大学、短期大学)が減ってしまったこと。これは、文科省が規制緩和の流れを受け、2003年度から大学新設の抑制方針を撤廃したことによるもの。以前は、カレッジにおいても生き残りを賭けたユニークな取り組みがなされ、面白い論文が数々発表されていました。ところが、最近は、どの大学も一様にユニバーシティ化になびいている印象があります。大学は各々の個性を必死に探し出し、それを生かして売り出していくべき。そうすれば、より多様な人材を供給できるようになるんじゃないかな。二つめの問題は、ハチャメチャな学生がいなくなってしまったこと。今の学生は、現状に甘んじているね。大学卒業後は〝そこそこ〞の企業に就職し、安定した家庭を築き、〝そこそこ〞の暮らしができればいい、と。それを表しているのが、海外留学希望者の減少です。大学の海外留学制度はどんどん進歩しているのに、それを利用して世界へ羽ばたいてやろうっていう学生が少ない。背伸びをしてでも、外へ出て思いきり暴れればいいのに。「ノーベル賞を目指したい」と意欲的な学生もいますが、それも口だけのことが多い。「この大学に入れたのだから、当然目指せるだろう」と。本当にいい研究をしたいという想いが感じられないのです。これと似た現象が、医学部志願者によく見られます。人間の病気を治すことに興味があるのではなく、最難関学部だからと選ぶ人が多い。もっと学問の中身を見て、本当にやりたいことをみつけてほしいものです。三つめの問題は、先生が忙しすぎること。道草を食う時間がないのです。無駄に感じられるような研究にこそ、ブレイクの要素が潜んでいるのですが。もちろん、目指すべきものはノーベル賞ばかりではありません。ただ、未来の大学では、先生も、学生も、よりのびのびと好きな学問を究めていけるといいでしょうね。11

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