大学の約束2016-2017
9/17

9 手で触れる名画。あるいは失われた国宝の復元。芸術と科学技術の融合が、驚くべき「クローン文化財」を生み出している。 文部科学省と科学技術振興機構が実施するセンター・オブ・イノベーション(COI)プログラムは、既存分野の壁を廃して産学が1つ屋根の下で共創に取り組むもの。なかでも東京藝術大学COI拠点「Arts & Science LAB.」は、芸術と科学技術の融合、また教育・医療・福祉産業との連携を図るプラットフォームだ。藝大とJVCケンウッドを中心に、ベネッセホールディングス、ヤマハ、ソフトバンクロボティクスなどが参画する。 その成果の1つに、超高精細の文化財複製、すなわちクローン文化財がある。藝大が誇る伝統技術と芸術家の感性、そして現代のデジタル撮影技術や2D・3Dプリンタ等の先端技術を駆使することで、同素材・同質感複製を作り出す。複製であるため、見るだけでなく「触る」ことも可能。こうしたイノベーションの一部は移動型美術展示により一般に公開されている。 2016年のG7伊勢志摩サミットにおいては、法隆寺金堂壁画「阿弥陀浄土図」とバーミヤン東大仏天井壁画「天翔る太陽神」の2点を展示。「阿弥陀浄土図」は火災で焼失、「天翔る太陽神」は戦火のなかで破壊された。それを絵の具の成分まで含め細部にわたり復元したのである。 「たとえモノが滅んでも、人間の知恵によってその魂を継承できる」と研究リーダーの宮正明氏は言う。「クローン文化財の制作は、文化外交であり世界平和を願うことでもあるのです」芸術と科学、デジタルとアナログが交差するイノベーション拠点東京藝術大学COI(センター・オブ・イノベーション)拠点Arts & Science LAB.東京藝術大学 大学院美術研究科 教授COI拠点 Arts & Science LAB.研究リーダー考える遊び場Photo:竹内洋平

元のページ 

page 9

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です