元・渋谷ギャルが取り組む“難民高校生”の居場所づくり

家にも学校にも居場所を見いだせず、渋谷に入りびたる毎日。抜け出したいけど、どうしていいかわからない。高校は2年の時に辞めた。――2013年3月に刊行された『難民高校生』(英治出版)には、“居場所”をなくした女子高生のリアルが描かれている。すべて著者である仁藤夢乃さん自身の経験だ。

 

本にはその後の仁藤さんの変化もつづられている。高校中退後、高卒認定試験のための予備校に入塾。そこで、ある講師との出会いをきっかけに、クルド人難民問題や日比混血児(日本人とフィリピン人の間に生まれた子ども)問題の支援活動を始める。

 

明治学院大学入学後もさまざまな国際協力に取り組んだが、「あのような高校時代を過ごした私だからできることをしていきたい」との思いから、高校生を対象にした活動を行うように。

 

東日本大震災後は、被災地の高校生と一緒に支援金付き大福「たまげ大福だっちゃ」を開発・販売し、高校生と地域を元気づけた。

 

そんな仁藤さんが、大学を卒業した今春、仲間と一般社団法人Colaboを立ち上げた。自分と同じような“難民高校生”を減らそうと、高校生と社会の両方に対する働きかけに取り組んでいる。

 

「限られた人間関係のなかで生きている高校生は、ちょっとしたきっかけで家や学校での関係性が崩れるとすぐに居場所がなくなり“難民化”する、危うい状況におかれています。そして、こうした高校生の問題は都会だけではなく、全国どこにでもあるものです」(仁藤さん)

 

最初に着手したのは、渋谷にある事務所の一角に、女子高生が立ち寄れる場「コラボスペース」(写真)をつくること。まずは性的な被害者になりやすい女子に対象を絞り、居場所づくりに取り組んでいく。

 

元・渋谷ギャルが取り組む“難民高校生”の居場所づくり_1

 

「このコラボスペースが、家でも学校でもない第三の場所になるといいんですが。ただし、依存させる“たまり場”ではなく、“ふらっと立ち寄る場所”というイメージ。ここで私たちやボランティアの大学生とかかわることから、いろんな関係性へと広げてほしいと思っています」(仁藤さん)

 

今後は、さまざまな大人の話を聞いたり食生活を考えたりする「Colabo塾」の開催、太陽の下で体を動かし野菜を育てる「農園ゼミ」なども計画されている。また、高校生の現状を発信し、社会の理解を図っていく予定だ。

 

「高校生には、ぜひ自分から一歩を踏み出してほしい。例えば、興味ある活動があれば問い合わせてみたり、誰かに悩みを相談したり、今まで避けてきた現実に向き合ってみたり…自分なりの小さな一歩でいいから。その積み重ねで道が開けていくはずです。私たちはその背中を押せる存在になりたいですね」(仁藤さん)