法科大学院?予備試験?司法試験受験までのステップが複雑化

裁判官、検察官、弁護士。まとめて「法曹(ほうそう)」とよばれるこの3つの法律専門職に就くためには、司法試験に合格し、その後、司法修習という研修を受ける必要がある。ここまでは知っている高校生も多いはず。ただし、司法試験を受験するまでのステップは、今、少々ややこしいことになっている。

 

昔は、法曹になろうと思ったらシンプルに司法試験を受験すればよかった。ただし、当時の司法試験は合格率2~3%という超難関。試験内容も細かな知識を問う傾向が強く、受験テクニックや暗記力の勝負になっていたため、合格して法曹になる人材が「暗記型の試験に強いタイプ」に偏ってしまうという問題点が指摘されていた。

 

その問題を解消するため、2004年に登場したのが法科大学院。法曹を目指す人は、いったん法科大学院に入り、法律知識だけでなく、考える力や実務能力もしっかり磨いたうえで、司法試験を受験するという新たなルートができたのだ。法科大学院修了が受験資格となる新しい司法試験も考える力を重視した内容となった。

 

これだけならまだわかりやすいが、実は、今、司法試験の受験資格を得る方法がもう一つある。それが2011年からスタートした司法試験予備試験。経済的に苦しくて法科大学院に通えない人たちなどのために設けられた試験で(といっても誰でも受験できるのだが)、この試験に合格すると、法科大学院修了生と同じ扱いになる。

 

法曹になるまでの流れ

 

そう聞いて、「法科大学院に通わずに受験資格が得られるなら、そっちのほうが手っ取り早いのでは?」と思った人も多いはず。確かにその通りで、今、トップクラスの大学生を中心に大学在学中に予備試験合格をねらう層が増えているのだ。

 

その結果、当然といえば当然の逆転現象が起きている。2012年の司法試験では、予備試験で受験資格を得た人たちの合格率が68.2%と、どの法科大学院出身者よりも高かった(法科大学院のトップは一橋大学法科大学院の57.0%)。法律業界関係者に話を聞くと、将来の就職先である法律事務所でも予備試験組に対する評価が非常に高いという。

 

ただし、予備試験の制度上の位置づけはあくまで「予備」。そのため合格者は1年に200人強と少なく、合格率は3%程度という狭き門。司法試験の受験者数は7000人以上いるので、予備試験組はごく一部に過ぎず、メインのルートが法科大学院であることに変わりはない。

 

そんなわけで、堅実に法科大学院進学をめざすか、確率は低くても予備試験にかけるか、その両にらみでいくか…法曹志望者にとってはなかなか悩ましい状況。なかには法科大学院在学中に予備試験を受験する人もいる。ちなみに予備試験を第一目標にするなら、大学入学後早々に準備を始める必要あり。法曹をめざす高校生は、このしくみをしっかり理解したうえで、早めに作戦を練っておこう。