【リーダー育成-第5回】「社会人基礎力を習得」中京大学EXP

日本の大学で増えているリーダー育成プログラムを紹介しているこの連載も、5回目を迎えた。

 

今回は、中京大学経済学部で2008年4月から始まっている、「エグゼクティブ・プログラム(以下EXP)」について紹介しよう。

 

■EXPの目標とは?

EXPは、コミュニケーション力、論理的思考力、などの社会人基礎力を学ぶ「ビジネス・ベーシック科目」と、就職活動に必要な自己分析、業界研究などを行う「キャリア・マネジメント科目」からなる。

 

2年生の春学期から始まって、200名→100名→50名と段階的に選抜。最終選考で選ばれた50名は、3年生の春学期から始まる「キャリア・マネジメント科目」(2コマ4単位)の受講権利が得られる。

 

EXPの大きな目的は、「社会人になってから役立つ基礎力を身につけること」と、「今後、各業界のリーディングカンパニーへの就職をサポートすること」にある。

 

■参加した人の声は?

成田和正さん(23歳)は、就職に役立つ実践的な内容に魅力を感じ、EXPの受講を決めた。経済学部の正規科目として単位認定される点もありがたかったと言う。結果として2回の選考をクリアし、EXPに設定された5科目すべてを受講した。

 

なかでも一番受けてよかったと思うのは「ビジネス・ベーシック科目」で勉強した「ロジカル・シンキング」。15回の授業のうち、前半は感覚ではなく、筋道を立てて論理的に考える方法などを学び、後半は前半で学んだスキルを使って、グループごとに、実在する会社の新規事業や戦略を立てるという内容だった。

 

成田さんのグループが担当したのは、ある電気部品メーカー。

 

企業を取り巻く社会環境を知るために、新聞を読んで発表する課題もあり、これにより経済の動きに以前より興味がわいたそうだ。また斬新なアイデアの出し方、細かい計画の立て方など、前半で学んだ手法を生かすことができた。

 

「プレゼンテーション」の授業も役立ったという。

 

就きたい仕事や就職したい会社についての研究成果を発表。その様子をビデオ撮影し、話し方や発表方法の改善点について講師や他の学生がアドバイスしてくれる。発表の機会は1人、3~4回ある。

 

「『え~』『あの~』など、無意識に言ってしまう言葉を減らす、はじめに質問や身近な話題からスタートするなど、具体的なアドバイスを受けました。最終的には、自分の発表に自信がもてるようになり、人前で話すことが怖くなくなりました」

 

■社会人になって役に立ったことは?

2013年3月に大学を卒業した成田さんは、大手コンビニエンス・チェーンに就職。各店舗のオーナーへの経営アドバイスを行うコンサルティング業務職として採用された。現在は、準備期間として、コンビニエンスストアの店長として忙しい毎日を送っている。

 

「仕事ではEXPで学んだことがそのまま生かせています。例えばお店の企画を考えるときには、どういうお客さまに来てもらいたいか、どう客単価を上げるかを具体的に考えることができます。また店長会議では事例や質疑応答などを採り入れ、毎回工夫を凝らして発表ができています。これは自分の大きな強みだと感じています」

 

そんな成田さんに高校生へのメッセージをうかがった。

 

「EXPは、ひたすら講義を聞き、知識を習得するという授業とはまったく違います。与えられたテーマについて自分ならどうするか、それはなぜかを考えることが常に求められます。そのため、情報を収集し分析し、自分なりの意見をまとめ、その根拠を示す、という流れに沿って考え行動する癖がつきました。これは就職活動でも生かせましたし、働くうえでも欠かせない基本的な力です。このような力を実践的に身につけられる機会は実に貴重なものです。ぜひ多くの高校生に挑戦してほしいですね」