海外大学を目指す人ってどんな入試対策してるの?

海外大学進学への注目度がここにきて急速に高まってきている。海外大学を目指す人のためのプログラムも進学塾などを中心に続々と登場し、少しずつ環境が整備されはじめてきた印象だ。

 

しかし、一般の高校生にとっては、海外大学に入るための準備といわれても、英語以外、具体的に何をするのかピンと来ないところ。というわけで、気になるその中身を紹介しよう。

 

早稲田アカデミーIBSでは、この4月から「東大受験生のためのハーバード併願コース」をスタート。初年度は高校1年生が3人、3年生が2人という少数精鋭のプログラムだ。

 

スピーディーかつ正確に英語で話せるようになるための英語による授業と、社会哲学や比較文化論といった一般教養を学ぶ日本語による授業という2タイプの指導を実践している。早稲田アカデミー教務顧問の松井義明さんは、単に知識を詰め込むだけの受験指導とは目指すところがまったく異なると説明する。

 

「対話型の授業を通して、考える力、発信する力を養っていきます。自分が生きていく意味、教育を受ける意味、世界に羽ばたいていく意味を常に考えることで、単なる学力だけではなく、いわば“自分力”を高めていくことがこのコースの目的なのです」

 

武蔵中学・高校を運営する学校法人 根津育英会武蔵学園は、テンプル大学ジャパンと提携して、将来英語圏の大学への進学を目指す中高生を対象とした「Musashi Temple RED Program」を2014年8月に開講予定。武蔵中学・高校以外の生徒も受け入れており、この8月に行う中学2年生対象のパイロット版サマープログラムの募集をしたところ、情報公開と同時に応募が殺到したという。

 

「中学1年夏から高校3年6月までの5年間を2年・2年・1年の3段階に分けて、英語で議論できる力を養っていくプログラムです。欧米型の、調べて、書いて、討論するタイプの授業に対応できる力を養うことを目的に、英語で考え、議論する授業を行っていきます」(学校法人 根津育英会武蔵学園 理事 植村泰佳さん)

 

このプログラムの特色は国や文化の枠を超えて共有できる“科学”をテーマとしていること。最初の2年では、例えばニュートンやエジソンなど科学史上の重要人物等をトピックに取り上げて英語を学び、中学3年からの2年間では、例えば英語による授業でガリレオの実験を再現するなど、英語で科学を学んでいく。直前期の1年はSAT(大学進学のための共通試験)対策などに充てる。

 

「現状では、日本の高校生は必要な準備もできておらず、情報もないため、日本の高校生が海外大学という進路を選択することが難しい。生徒の選択肢を広げてあげることがこのプログラムの狙いですね」(植村さん)

 

海外大学では、入学者選抜の際、学力だけでなく、エッセイ(自分を表現する小論文)などを通して人物を評価する側面が日本より強い。また、議論中心の授業のスタイルも日本とは大きく違う。

 

つまり、大学に入るためにも、入ってから学ぶためにも、単なる知識だけではなく、考える力、議論をする力など人としてより本質的な素養を磨いておくことが重要になる。前述のプログラムの目標もそこにあるわけだ。

 

前出の松井さんは「あと5年もすれば、海外大学との併願は普通のことになっていくのではないか」と指摘。同時に、「日本の中学・高校教育自体が大きな転換期を迎えている」とも。

 

その意味では、今回紹介した両プログラムは、単なる海外大学受験対策というだけではなく、時代を先取りした教育の取り組み例といえるのかもしれない。