学問

[冬季五輪を科学する]なぜカーリングでは氷をはくのか?

[冬季五輪を科学する]なぜカーリングでは氷をはくのか?

冬季オリンピックが開幕間近だ。なかでも人気上昇中のカーリングは、注目している人も多いだろう。

 

しかし、経験のない人には、「あのストーンは何でできているの?」「なぜブラシみたいなもので氷をはくの?」…など、疑問がたくさんあるはず。

 

そこで、本サイトでお馴染みの人気理科教師のなべ先生に、カーリングを科学的に解説してもらった。実は、カーリングにはたくさんの科学が潜んでいるという。

 

<参考>カーリング競技の基礎知識
カーリングは4人1チームとなり、2チームで対戦する競技。スキップ(主将)の出す作戦に従って、投球者がストーン(石)を投げ、スウィーパー2人がストーンの前をブラシではく。両チームが投球し終わった時点で、ハウス(円)の中心に最も近いストーンのチームがそのエンドの勝者となる。

 
 

Q.氷上を滑る丸い「ストーン」は何でできている?
A.スコットランド産の花崗岩で、20kgもあります

 

カーリングの原型が始まったのは15世紀のスコットランドといわれており、その場所の特産である花崗岩が今でも使われています。

 

ストーンはどんな石でも良いわけではありません。硬くて滑りやすく、丈夫なことが大きな条件となります。

 

花崗岩は、地下の深いところでゆっくりマグマが冷えてできる「深成岩」のうち、岩石をつくる成分である石英や長石の成分が多く白っぽいものです。
性質的には、(1)密度が大きい (2)吸水性が小さい(吸水性が大きいと、石の間に吸収された水が冷えて氷になったとき、体積が増えて岩石にひびが入ってしまう) (3)硬い…といった特徴があります。

 

大理石もまた、花崗岩と密度・吸水性が似ていますが、硬さに違いがあります。比較的柔らかい大理石は、ミケランジェロの彫刻にも使われますね。硬く緻密な結晶構造をしている花崗岩は壊れにくく、カーリング向きといえるでしょう。

 

Q.なぜストーンの前をブラシではく(スィーピングする)の?
A.氷との摩擦を少なくすることで、ストーンを同じ速度で遠くまで進めるためです

 

なぜ、ブラシではくと摩擦が小さくなるのか? 今考えられている理由は3つあります。

 

1.氷の表面の凸凹がなめらかになるため
「ざらざら」より「すべすべ」の方が摩擦が少ない=よく滑る、ということは、皆さんもイメージできますよね。

 

2.ブラシでこすることにより熱が発生し、氷の表面を溶かして水の膜を作るため
雨の日に自動車のタイヤが滑りやすくなるのと同じように、水の膜の上をストーンは滑りやすくなるという案です。

 

3.ブラシで氷が削られ、小さな氷の結晶を表面にまき散らすため
下に丸太を敷いてピラミッドの大きな石を運んだように、下に敷かれた氷の粒子の「ころ」の上に乗って、少ない摩擦で動くのではないかといわれています。

 

どれも正しそうですが、なにせミクロの世界のことで、なかなか決定打が出されません。もしかしたら、複合的な理由かもしれませんね。

 
 

Q.投げたストーンがすい~っと右や左にカーブして進む場面がありますが、なぜストーンはカーブするの?
A.ストーンに緩やかな回転をかけると、回転の方向によって右か左にカーブしながら進むのですが、そのメカニズムはわかっていません。

 

ストーンを時計回りに回転させると右へ、反時計回りに回転させると左へカーブします。

 

ストーンは底の部分の中央がくぼんでいるので、氷との接触面はリング状になります。逆さまにしたコップと床との接触面も同じリング状ですね。この逆さまのコップをカーリングのように回転させながら斜面を滑らせると、やはりカーブしながら進みます。しかし、カーブの方向は、なぜかカーリングの場合とは逆方向なのです。

 

[冬季五輪を科学する]なぜカーリングでは氷をはくのか?_01

 
 

[冬季五輪を科学する]なぜカーリングでは氷をはくのか?_02

 
 

コップのカーブのしかたは、通常の摩擦の考え方で説明がつきます。

 

高さがあるコップを斜面に乗せると、コップの重心は円の中心よりやや前の方になります。したがって、前方部分(A)が後方部分(B)よりも斜面を垂直に押さえつける力が大きく、摩擦も大きくなります。

 

[冬季五輪を科学する]なぜカーリングでは氷をはくのか?_03

 

したがって、コップを時計回りに回転させた場合
摩擦力の大きい前方部分(A)…ふちが右に動く→摩擦力は左向き
摩擦力の小さい後方部分(B)…ふちは左に動く→摩擦力は右向き
したがって、コップは左方向へカーブするのです。

 

[冬季五輪を科学する]なぜカーリングでは氷をはくのか?_04

 

これとカーリングの動きがなぜ違うのかは、まだ解明されていません。ストーンはコップに比べて高さがなく、それほど前につんのめっている(重心が前方にある)わけでもないため、前後の摩擦力の差の影響は受けにくいのでしょうか。だからといって、真逆になるというのはとても不思議ですね。

 

摩擦熱が関係している? 解けた水の膜が関係している?…今さまざまな国がこの現象を科学的にとらえようと、最新の設備を使って研究を始めています。

 

 

いまだ解明されていない科学の謎が潜んでいるカーリング。ストーンの動きや氷の状態にも注目して観戦してみて! 

 
もっと知りたい人はコチラ→
◆ミクロからマクロまで、自然界の現象を観察し、真理を探る【物理学

 


【なべ先生】
立命館宇治中学校高等学校 物理教諭 渡辺儀輝
FM番組の科学ニュース、ケーブルテレビの実験ショー、新聞の科学解説記事などで幅広く活躍。「すべての子どもたち、大人たちが理科好きになってほしい」と願っている。

注目キーワード

藤崎雅子 編集者・ライター

藤崎雅子

高校の先生方向けキャリア教育の専門誌にて、全国の高校の取り組みを取材しレポートする連載を担当するなど、教育関係の雑誌やサイトを中心に活動。ほか、二児の母としての目線を生かした様々なテーマの取材・執筆活動を行っている。

ページのトップへ