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【対談】堀江貴文×チームラボ代表・猪子寿之が語る「アートが変える未来」

【対談】堀江貴文×チームラボ代表・猪子寿之が語る「アートが変える未来」

各分野のトップランナーをゲストに迎え、堀江貴文の独自の視点で様々なテーマを深掘りする、スタディサプリLabのイノベーション×クリエイティブコース。
 
第1回のゲストは、集団的創造をコンセプトに世界で活躍するウルトラテクノロジスト集団・チームラボ代表の猪子寿之氏。
 
今回は、アートを切り口に、互いの考える世界の未来について語ってもらった。
 

グローバルになった瞬間、すべてが変わった

 
【対談】堀江貴文×チームラボ代表・猪子寿之が語る「アートが変える未来」
 
堀江:最近、日本にいないでしょ 
 
猪子:そうですね。
 
堀江:ちょっと最近、チームラボやり過ぎなんじゃないの笑
 
猪子:いえ、いえ、いえ、いえ、やり過ぎてないですよ笑 でも、今、海外でいっぱいやってますね。1月にはロンドンで展覧会をやりました。
オープン前にチケットが全部売り切れたんですよ。
 
堀江:なんでそんなに人気なの
 
猪子:なんですかね わかんないです。
 
堀江:いつも都合が合わなくて、なかなか行けてないんだよね。
 
猪子:来てください笑 北京で先週はじまって、前売券がオープン前に1万2000枚くらい売れたんです。
 
堀江:すごいね、誰が買うの
 
猪子:わかんないけど、素敵な人たち笑アートなので客層が本当に良くて。去年開催されたシリコンバレーでの展覧会も、いろんな人がきてくれました。 
 
現在の世界のトップ3の企業の創業者かその奥さんが全員アートを買ってくれたり、誕生会を展覧会場で開いたりしてくれています。人類の新たな時代を創った人たちに評価されるのがうれしいですね。
 
【対談】堀江貴文×チームラボ代表・猪子寿之が語る「アートが変える未来」
 
堀江:何人くらい来るの
 
猪子:何十万人くらい来たんじゃないですかね。
 
堀江:そんなに来るんだ。そういう展覧会はチームラボが資金も出して、全部運営もしているわけ
 
猪子:いえいえ。海外だと事業主がいたりして、国によって違うんですけどね。僕らは今PACEというギャラリーPACE GALLERYに所属しているんです。
 
PACEはニューヨークにギャラリーがあって、ロンドンや北京や香港にもギャラリーを持っているんです。シリコンバレーでは、僕らのためにギャラリーを作ってくれて、大きな展覧会をやってくれたんです。
 
堀江:PACEというのは何者なの
 
猪子:ギャラリーなんですが、日本語で言うと画商になるんですかね。アーティストを育てつつ、美術館やコレクターにアートを売っているんです。
 
育ててもくれるし、チャンスも作ってくれる存在ですね。
 
【対談】堀江貴文×チームラボ代表・猪子寿之が語る「アートが変える未来」
 
堀江:なるほどね。チームラボのデジタルアート以外も扱っているわけだ。
 
猪子:もちろん。ピカソやイサム・ノグチなどもう死んだ人も合わせて全部で80人ほどのアーティストを扱ってます。
ジェームスタレルもPACEですね。世界の二大ギャラリーとか四大ギャラリーとか言われるギャラリーのうちの一つです。
 
堀江:なんで、そんな世界のトップのすごいところがチームラボを扱ってくれるようになったのよ。どうやって選んでるの
 
猪子:なんでなんだろう笑 ピカソなんかは現れて100年くらい経ってますけど、何十年か経った時に、美の概念、美の基準を変えていくものを探しているんですかね。語弊がある言い方かもしれないですが、アートって究極「誰が美の基準を変えるのか」という世界なんだと思うんです。
 
堀江:PACEとは、いつ頃から契約してるの
 
猪子:一番最初の展覧会が、2014年。
 
堀江:割と最近なんだ。
 
猪子:そうなんです。急に変わったんですよね。その変化が起こったきっかけは、とてもわかりやすいんです。村上隆さんが台北台湾の主都にギャラリーを持っていて、2011年に展覧会をやらしてくださったんです。「世界で戦った方がいいよ」って。
 
「日本はアートの理解はないし、新しいことを評価する国じゃないから」とまでは言ってないけど、そういうニュアンスでした笑

【INFO】村上隆…1962年生まれ。現代美術家、ポップアーティスト。日本の現代アート界を切り開いてきた第一人者。

堀江:うん、うん、やってたよね。
 
猪子:2012に台湾の国立美術館から国立美術館としてはじめてのデジタルアートの個展の依頼が来て、2013年に国際美術展覧会「シンガポール・ビエンナーレ」にビエンナーレのメインのアーティストとして参加して、超大きな作品を作ったんですよ。シンガポールは国際都市だし、アートへの考え方も違うし、そういう人たちとの接点も多くて。
 
いろんな人の目に触れたんでしょうね。そのあとにすぐPACEから声がかかりました。
 
堀江:なるほどね。それから全然変わっちゃった感じがするもんね。
 
猪子:すごく変わりましたね。2011年までの僕らって、なんだったんだろうってくらい笑 グローバルレベルの評価の価値観と、ローカルである日本の評価の価値観が、ここまで違うとは思いませんでした。
 
堀江:うん、うん。
 

 
猪子:それまでは、自分が興味のあることって、誰も興味ないし。
 
興味持たれなくてもいいかって思ってたんです。自分が本当に興味のあることは、仕事して稼いだお金でやれていればいいかなって思ってましたから。
 
でも、グローバルになった瞬間、みんなが「すごい」って言ってくれて。日本では全然言われなかったですから。
 
堀江:そしたら、日本でもすごい人来るようになったじゃん。
 
猪子:実はそれまで日本では一回も展覧会とかやってなかったんですよ。
 
堀江:あ、そうなんだ。
 
猪子:はじめて東京で個展をやったのは、2015年なんです。未来科学館で!50万人近く来てくれました。
 
堀江:お金の話をするとさ。入場者数人あたり、いくらもらえるとかの契約があるの
 
猪子:国やパートナーごとに違っていますね。PACEは、僕らのアートを売って、シェアするというビジネスなので、元々は入場者数にはあまりこだわっていなかったんです。
 
堀江:でも、入場料はとるんでしょ
 
猪子:いえ、とってなかったんですよ。多分PACEに限らず、ニューヨークのギャラリーって、どこも全部タダなんじゃないですかね。
 
アートを買ってくれたりするから、僕らも別にいいかって思ってたんです。
 
堀江:あーそーか。
 
猪子:で、東京でやってみた。若い世代の人は来てくれるかもなとは思っていましたけど、日本のお金持ちの人たちは、僕らみたいな新しいアートにはお金を払わないと思ってたんです。
 
だから、日本の偉い人や金持ちに認められなくてもいいや、日本では違う生き方をしようと思ってたんですね。
 
堀江:そしたら
 
猪子:若い世代がいっぱい来てくださって、ペイしたんですよ。
 
そうしたらPACE側がビックリして。今までのようにアートを一部の人に物として売るだけよりも、多くの人に体験として売るというのも、多くの人にアートを触れてもらえていいんじゃないかって、すごい長い歴史のあるギャラリーが考え方を変えたんです。
 
今回の北京はPACEが主催なんですけど、はじめてチケット制にして売ることは現実的じゃないような作品ばかりでいいんじゃないかと言うことになっています。
 

アーティストは、なぜ世界の歴史に名を残せるのか。

 

 
堀江:アートって、ぶっちゃけよくわかんないんだよね。
 
この前、バスキアの絵が、123億円で落札されたじゃない。その価値がわかんなくて。みんなだって、美術の教科書みて、「これは綺麗な絵だな」ってのはもちろんあるけど、「何これ」ってのもぶっちゃけあると思うんだよね。

【INFO】バスキア…ジャンミシェル・バスキア。アメリカ・ニューヨーク生まれの画家。その生涯は映画化もされている。

 
猪子:大前提として、歴史に名前が残っている人って、サイエンティストか、革命的な大規模な国家を作った人か、アーティストじゃないですか。革命家はわかりやすいですよね。サイエンティストもわかるでしょ。でもアーティストはなんで歴史に名が残っているんだろうって思ってるんじゃないですか
 
堀江:そうだね。なんでだろうって思うね。
 
【対談】堀江貴文×チームラボ代表・猪子寿之が語る「アートが変える未来」
 
猪子:アーティストって、サイエンティストと似ているんですよ。
 
サイエンティストのおかげで、人類の見えている世界は広がってきたと思うんです。例えば、人間の目。肉眼なんてフォーカス範囲が浅くて狭い。
 
目の前に指を出されると、僕の顔が隠れて見えなくなってしまうくらい。でも、今、スーパーボールを思いっきり投げても、みんな見えると思うんです。
 
それって全員が物理の法則をなんとなく共有財産として持っているから、予測がついて見えているんです。
 
その知識を持つ以前は具体的に見える範囲が狭かったのに、サイエンティストのおかげで見える範囲が広がった。
 
サイエンティストは、人類の見える範囲を広げてきたと思うんです。対して、アーティストは、「人類の世界の見え方を変えてきた」と思うんです。
 
例えば、「雨を描いてください」と言われたら描けますよね。
 
堀江:雨 うん、描けるだろうね。
 
猪子:それって、人類がそう見えていると思い込んでいるから描けるわけなんですよ。1877年に描かれた有名な絵があります。タイトルは『パリの通り、雨」。
 
明らかに雨の日のパリを描いているわけです。
 
【対談】堀江貴文×チームラボ代表・猪子寿之が語る「アートが変える未来」
 
堀江:雨が見えない。
 
猪子:これ、雨が描かれてないですよ。ぼんやりとしか。描かれているのは傘を差す人と雨で濡れた石畳の路面。この時代は、こういう風に雨が見えていたわけです。実は同じ頃に浮世絵が世界ではじめて雨を線で描いているんです。
 
堀江:なるほどね。
 
猪子:正確に言うと、いきなりではなく、100年くらい前から無名の浮世絵師が描きはじめていて、そしてみんなが知っている歌川広重の『大はしあたけの夕立」が描かれるわけです。
 
堀江:浮世絵は版画だから、こういう表現になったんでしょ。
 
猪子:いやいやいやいや笑 説明すると長くなりますが、違います 
 
堀江:違うの
 
猪子:ちょっと難しい話になりますが、僕らは自分の目のフォーカス範囲がそんなに狭くて浅いとは思っていない。
 
だから過去まで遡って、目を縦横無尽に動かしたりして見た映像を脳で再構築してると思うんです。
 
現代人はそれをパースペクティブ遠近法みたいな論理構造で再構築していますが、近代以前の日本は再構築に使う時間が西洋より長かったと思うんですよ。僕の仮説ですけど。だから、線になった。
 
堀江:時間軸が長いから、雨の点が軌跡になって線になったわけだ。
 
猪子:そう そして結果的に、この絵は世界的にものすごい影響を与えました。
 
堀江:ゴッホが模写したりとかしてるみたいだしね。
 
猪子:アートとサイエンスの違いを考えると、絶対的に正しいか正しくないかを証明できるかどうか。
 
堀江:サイエンスは、証明できるよね。
 
猪子:はい。アートはどうか。例えば時間がある空間は、四次元情報ですよね。絵は脳が処理しやすいように、その四次元情報を二次元化する。
 
その解答の一つとしてパリの絵の雨はぼんやりしていたわけです。四次元情報を二次元化するって、無限に解答があるわけですよ。
 
その時に、人間が気持ち良かったり、美しいと思ってしまったり、衝撃を受けてしまったものが、結果的に広がっていくんだと思うんです。
 
【対談】堀江貴文×チームラボ代表・猪子寿之が語る「アートが変える未来」
 
堀江:なるほどね。
 
猪子:四次元を二次元化するっていうのは、答えは無限にある。2次元化された答えとしては真実だけれどもそれは非常に偏った見方ですよね。
 
堀江:偏ったというか、無限のパターンの中の一つだよね。その過程で、試行錯誤があったわけだから。
 
猪子:そうですね。で、広重が雨をこう描いて、それが世界に広がっていくと、みんなもなんとなく無意識に「雨はこう見えている」と思い込むんですね。
 
堀江:雨って線だよね、と。
 
猪子:そうです、そうです。つまり広重の絵によって、世界の見え方が変わったとも言えるわけなんですよ。だから、アートというのは、人類の世界の見え方を変えてきたというわけなんです。
 

なぜバスキアの絵は、123億円もするのか。

堀江:面白いね。こういう授業ってさ、なんで日本の美術の授業とかでやんないのかな。
 
猪子:それはアートの概念を日本があまり理解していないからだと思いますね。教養のあるお遊びくらいにしか思ってない。
 
堀江:だって、そういう風にしか言わないじゃない。
 
猪子:そう。だから、誰も本当のことなんて知らない。
 
堀江:なんで本当のこと、教えてくれないの。
 
猪子:いや、それはちょっと言いづらいですけど・・・笑
 
堀江:これまでアートに興味もなかったし、その世界で何もしてなかったから全然知らなかった。こんな話はじめて聞いたよ。
 
猪子:聞いたら、面白いでしょ。究極、これは僕の解釈ですよ。
 
堀江:いいよ、いいよ、面白いよ。
 
【対談】堀江貴文×チームラボ代表・猪子寿之が語る「アートが変える未来」
 
猪子:アートが世界の見え方を変えてきた。もう少し具体的に言うと、「美の基準」を変えるとどうなるか。人は合理的ではなく、やっぱり感情で動くんです。だから、人間の行動すべてが変わりますよ。
 
堀江:ま、そうだよね。
 
猪子:そうすると、世界が動くんです。経済も、政治も、何もかもが。だから、アートってすごく重要視されるんです。でも、歴史においてサイエンスと同等に重要視されるのって、納得いかないんじゃないですか
 
堀江:別に納得いかないことはないけど、なんでだろうっていうのはあるよね。わかんないから。
 
でも、結果がすべてなわけじゃない。バスキアの絵が億円で売れている理由はわからないけど、億で売れているという結果があるわけで、そこには何かがあるんだろうなとは思っている。理解はできなかったけど。
 
猪子:はい。そこを説明しますね。1960年代後半にアンディ・ウォーホルという人が現れました。

【INFO】アンディ・ウォーホル…アメリカの芸術家。ポップアートの旗手として世界に衝撃を与えた。

堀江:はい、現れましたね。ウォーホルは、俺でも知っています。
 
猪子:マリリン・モンローの肖像画やキャンベルスープの缶の絵で知っている人もいると思います。ちょっと歴史の話をすると、近代のはじめに産業革命が起こりました。人類は物を大量生産できるようになった。これは基本的には貧乏人のためのものだったんですよ。
 
堀江:貧乏な人に、そこそこいいものを安く手に入れられるようにするというね。それが産業革命だよね。
 
猪子:ウォーホルのいた年代って、パリコレでもオートクチュールしかありませんでした。
 
堀江:オーダーメードだね。服を既製品じゃなくて、一人一人の体に合わせて作る点ものね。
 
猪子:僕のおじいちゃんくらいの時代だと、街の仕立屋さんでオーダーメードの服を作るのが一流の証でした。あのルイ・ヴィトンでも、当時はパリに3店舗しかなかった。オーダーメードしかやっていないからですね。ウォーホルが出てくる年代後半までは。
 
堀江:オーダーメイドだから産業化しないわけだ。
 
猪子:このキャンベルスープは、当時どこのスーパーでも買えるものでした。「みんなが知っている」ものです。
 
マリリン・モンローは当時の大スター。もちろん「みんなが知っている」。ウォーホルは亡くなったマリリン・モンローの写真を使って、キャンベルスープの缶も同じような手法で大量に作った版画をギャラリーに展示したんです。
 
それを新しい世代の人たちが「かっこいい」と思ってしまった。もちろん「こんなのアートじゃない」といった批判もあったようですが。
 
堀江:なるほど。それまでは「かっこいい」と言えない雰囲気もあったんだろうね。
 
猪子:マリリン・モンローだけだと意味がなかったと思うんですよ。マリリン・モンローが、トマトのどうでもいい大衆向けのスープと同等に並べられてしまった。それをかっこいいと思ってしまった。セレブだからかっこいいのではなくて、それは「みんなが知っているものかっこいい」という概念です。みんなが知っているという概念、美の基準が新たに生まれてくるわけなんです。
 
堀江:ポピュラーであることがかっこいい、と。
 
猪子:まさにそうです その概念は表面的には、これまでなかったんですね。
 
堀江:アンディ・ウォーホル以前はそれがなかったんだ。彼が出てきたことで「これでもかっこいいんだ」となったわけだ。
 
猪子:それによって、ラグジュアリーブランドという産業が生まれました。オーダーメードじゃなくても、既製品でも高級に売れるようになっていったんです。
 
それまで既製品は大量生産されるものだから、かっこ悪いから、高級品として売れなかったのに。
 
【対談】堀江貴文×チームラボ代表・猪子寿之が語る「アートが変える未来」
 
堀江:なるほどね。
 
猪子:そして、それまでオーダーメードのための仕立屋さんだったのが、どんどんラグジュアリーブランドに変身していったんです。
 
オーダーメードをやらない代わりに、キャンベルスープの缶やマリリン・モンローのように自分たちのブランドをみんなに知ってもらうことを目指した。ウォーホルによって、新たな巨大な産業が生み出されたんです。
 
堀江:なんで、ウォーホルはこんなことをできたのかな。
 
猪子:「これはかっこいい、そういう時代になったぞ」と思ったんじゃないですかね。
 
堀江:論理的には、彼以前にも思いつくはずだけど、テレビが出てきた時代の影響とかもあったんだろうね。時代の寵児になったわけだ。何が当たるのかって、ホントにわかんないよね。俺だって、わかんなかったもん。球団買うって言っただけで、めちゃくちゃ変わったし。買ってもないのにね。
 
 —2004年、堀江氏がプロ野球近鉄バファローズの買収を申し出て話題に。結果、実現には至らなかった。
 
猪子:あれで変わったんですか。僕からすると元々有名でしたけど。
 
堀江:一般の人にとっては、それまで認知度なんて一桁だったのに、ほぼになった。あんなことが起こるとは
思わなかったけどね。買うって言っただけだよ。
 
猪子:堀江さんは気づいてたけど、みんなコストパフォーマンスがいいって気づいてなかったんでしょうね。
 
堀江:そうだけど、あそこまでとはね。だから、きっとウォーホルもずっと考えてたんだろうね。俺、こう思うんだけどなって。
 
猪子:セットだったのが良かったんですよ。マリリン・モンローだけだったら、スターだもん、いいに決まっているよねだった。それをキャンベルスープと同等に扱ったのが良かった。それがかっこいい。
 
堀江:すごくわかりやすいなぁ。面白いね。で、バスキアは、どうして123億円の価値があるの
 

猪子:結局世紀を語る時に、大量消費社会がきて、マスメディアが出てきて、人類の価値観がどう変わっていったかをちゃんと説明しようと思ったら、ウォーホル抜きには説明できないんですよ。現代の工業製品をニュートン抜きには語れないのと同じように。
 
堀江:そうだね。
 

 
猪子:美術館が20世紀後半の美を説明しようとした時に、少なくとも教育的な役割として、ウォーホルを所有したいですよね。
 
ないと20世紀後半を説明する展覧会ができないから。だから、重要なんです。特にウォーホルは、現れて50年経っています。もうウォーホルが美を変えたことは証明されたと言えます。現代を見たときに、ウォーホールの影響がないとは、もはや言えないから。そうなると、ウォーホルの価値は絶対に下がらないんです。しかも、もう死んでるから、もう作品は増えない。
 
だから、みんなウォーホルを手放さない。株と同じですね。ウォーホルはもうマーケットに出てこない。そうなると周辺の価値が上がる。周辺としてバスキアの価値が上がるわけなんです。
 
堀江:バスキアは、ウォーホルの周辺物件というわけだ。突然、価値が上がったわけでもないんだね。
 
猪子:ウォーホルにとって、バスキアは影響の大きな人物だったんです。共同制作もしていました。ウォーホルのある時代を説明するには、バスキアも外せないわけです。
 

アートコレクティブチームラボが、目指す未来とは

 
堀江:最後に、デジタルアート、チームラボの話をしましょう。チームでやっているよね。
 
猪子:アート、創造性、クリエーションは、個人から生まれるものだっていう暗黙の大前提がある。それに対して、「いや違う、集団的創造だ」と言っているんですよね。だから、僕らは、はじめからアーティスト名を「チームラボ」としています。
 
堀江:俺の本もみんなで作っているんだよ。ライターさんもいるし。でもよく「堀江さんが書いてない本は全部偽物だ」とか言われるわけ。
 
だけど俺の考え方を伝える媒体なんだから、どう伝えようが、正しく伝わればいいわけじゃん。それをやるのに「堀江貴文」と書かないとダメなんだよね。
 
チーム堀江だとダメみたいなことを言われる。同じように「猪子寿之」として出るように求められるでしょ。
 

 
猪子:僕には、「価値観を変えることが価値」なんですよ。だから、誰になんと言われようと、アーティスト名はチームラボですと言い続けています。アートコレクティブart collectiveと呼んでいるんですけどね。本質的には昔からある考えですけど、僕らは作る作品だけじゃなくて、世界に「アートコレクティブ集団的創造。アートは集団的創造だ」と明示していることも評価されているんですよ。
 
堀江:なるほどね。
 
猪子:だから、海外では、まったく僕の名前は出てきません。日本のマスメディア用に、三流文化人みたいな感じで個人で出ていますけど笑 ファウンダーとして僕を知っている人はいるかもしれないけれど、グローバルでは記事なんかでも常に「アートコレクティブ チームラボ」です。
 
堀江:そうなんだ。
 
猪子:あと物質的にあるかないかは価値として重要じゃない。デジタルでできる美は、今までの美とは違うってことをいろいろと提示しているわけで、それも世界では、美の基準を変えるかもしれないと思われています。50年後、100年後に、21世紀前半に誰が一番美の基準を変えたかってなった時に、チームラボになるかもしれないわけなんです。
 
堀江:チームラボは、どういう風に美の基準を変えようと思っているの?未来はどう変わると思うの?
 
猪子:物質的に存在するかどうかは価値には関係ない。
 
堀江:さんなんかからすれば、当たり前の話でしょうけど。
 
でも、一般的には、まだまだ物に価値を見出していますよね。僕らのアートは単にデータだけです。
 
でも絵には何億も払うけど、僕らのデータには払わない。もしその価値基準を変えられれば、実在するかどうかはもはや重要ではなくなるわけです。
 
アートは対、自分とアートという関係性だったものが、その空間にいる人々との関係性に変わる。それがデジタルならできる。
 
もっと言えば、境界という概念すらなくせるかもしれない。世界に自分が埋没していた方が美しいという基準を作れるかもしれない。
 
【対談】堀江貴文×チームラボ代表・猪子寿之が語る「アートが変える未来」
 
堀江:確かに、「個」という、individualの概念は近代のものだよね。とすると先祖返りとも言えるのかもね。元々、明治維新の時に持ち込まれた概念だし。individualは、つまりdivideできない。分割できないってことだよね。個人は分割できない、という前提で僕らはいるけど、そんなことないよねって。境界って曖昧だし。自分だって個に分割できるかもしれないし。
 
猪子:さすがです。まさにその通り それに分割だけじゃなく、いろんなものが連続しているかもしれない。もっと自分が世界の一部なんだって体験を与えたいなとも思っているんです。
 
堀江:そっちの方が自然かもしれないよね、心地いいかもね。
 
猪子:そう思っているんですよ。ウォーホルのように、潜在的にはあるけど、まだ明示化されていない美。
 
世界に埋没する、世界の一部なんだということを体感させて、心地いい、かっこいいとなれば、美の基準が変わっていくと思うんです。
 
アートは、論理的に説明する戦いじゃないんですね。結果的にかっこいいと思わせること。そして結果的に行動を変える。
 
堀江:それって、全部につながる話だよね。所有権もそうだし。家族の形もそうだし。人生のデザインもそうだし。
 
猪子:はい。長期的にいえば、全部に影響を与えられると思うんですよ。
 
堀江:アートって、わからないように変えられるよね。ウォーホルも、自然に変わっていったじゃない。「なんかウォーホルの言ってること、正しいっぽいけど、鬱陶しいよね」とかじゃない。自然だもんね、いいよね。
 
猪子:はい。だからこっそりと。結果、長い年月がかかってもいいから、世界に影響を与えて、行動が変わったらいいなと思っています。
 
堀江:すごくよくわかった。俺は子供の頃から、なんでこんな大変なんだろう、きついなって生きづらさを感じて生きてきたんだけどさ。
 
耐性があるから、どんな世の中でも生きていけるとは思う。でも、やっぱりきついのよ。
 
もっと楽に生きていきたいなとは思う。最近ようやく「堀江さん、正しいよ」って賛同する人も増えてきた。
 
だから、これからもちゃんと正しいことを言っていかないといけないとは思っているんだけど、チームラボで世の中変わりそうだね。
 

堀江貴文
1972年、福岡県生まれ。SNS mediaconsulting株式会社ファウンダー。現在は宇宙ロケット開発や、スマホアプリ「TERIYAKI」「755」「マンガ新聞」のプロデュース、また予防医療普及協会としても活動するなど幅広い活躍をみせる。
 
猪子寿之 チームラボ代表
1977年生まれ。2001年東京大学計数工学科卒業時にチームラボ設立。チームラボは、プログラマ、エンジニア、CGアニメーター、絵師、数学者、建築家、ウェブデザイナー、グラフィックデザイナー、編集者など、デジタル社会の様々な分野のスペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団。アート、サイエンス、テクノロジー、クリエイティビティの境界を越えて、集団的創造をコンセプトに活動している。
https://www.teamlab.art/jp/
 
 
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