世界を変えるU33

美容で世界を変える

MixiCheck

美容術で、がん患者さんを
元気にする。

三田 果菜(さんだ かな)さん
Happy Beauty Project クキュア 代表

三田 果菜

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Interview Q1.どんな問題に取り組んでいますか?

「がん患者さんの美容に、新しい選択肢を。」

—三田さんが代表のHappy Beauty Projectとは、どんな取り組みですか?

「美容術で女性とまちを元気に!」をコンセプトに、さまざまな活動を行っています。
その1つが、がん患者さん専門の個室美容室「Ccure -クキュア-」です。

今の日本は、2人に1人ががんになり、3人に1人が、がんで死亡する時代だと言われています。
数字的には夫婦のどちらかががんになってしまう程、がんはとても身近な病気です。

がん患者さんの8割の方が抗がん剤治療をします。
抗がん剤治療をすると、約8割の方の髪の毛が抜けてしまいます。
現在、がん患者さんの数は約70万人ですから、単純に計算すると、私の住む京都府にも1万人くらいいることになります。

ですが、街で会うことはほとんどありません。
加齢による薄毛と違い、抗がん剤投与による脱毛は、髪の毛だけでなく、眉毛やまつ毛も抜けてしまいます。
外見が変わってしまうことで、人前に出にくくなってしまったり、友人と会うのもちょっとためらってしまったり。
病気は治っても、これまでと同じような生活ができなくなってしまう人はたくさんいます。

Ccure-クキュア-は、がん患者さんたちの日常の美容と健康をトータルにサポートする個室美容室です。

その人の好みやスタイルに合わせられるよう、さまざまなウィッグを用意し、美容のプロとして、髪以外のご相談にものりながら、一人でも多くの方が当たり前のようにおしゃれを楽しんで元気になるお手伝いをしています。

また、がん患者さんの数は年々増加しています。
数年後には、美容室のお客様の半分が、がんになるかもしれません。
がん患者さんをサポートできる理美容師の育成や受け入れサロンの増加にも取り組んでいます。

—患者さんと、そうではない方とでは、美容の仕方も変わるのでしょうか?

髪を切るのは同じでも、脱毛中は、髪の悩みやケアをしなければならないことも増え、特別な知識は必要です。
また、お客さま一人にかかる時間も通常より長くなる傾向にあるので、受け入れを躊躇するサロンも少なくありません。

美容室に行きたいけど、行けない患者さんはとても多いので、市場としての可能性も大きいのですが、経験がないからと受け入れに消極的になっているだけなんですね。
なので、理美容業界全体に対して、がん患者さんの現状や対応の仕方、ニーズの大きさを伝えながら、1軒1軒、経営コンサルタントのような関わり方もしています。

動き出してみると、それなら、ぜひ受け入れたいというお店もたくさん出てきましたし、
「お客さんががんになってしまったんだけど、どうすればいいか悩んでいた」
なんて声もあるくらいです。
そこで「Can Be」というアイコンをつくり、受け入れOKのお店には、このマークを掲げてもらっています。

—少しずつ理美容業界も変わってきていますね。

ただ、10年以内には、私の仕事がなくなっていて欲しい。
特別なサービスではなく、当たり前のサービスになっているべきだと思っています。
それこそ、理美容師を養成する学校の段階からカリキュラムに入れていく必要があります。

がん患者さんをサポートできるようになれば、これからの高齢化社会にも活かせるはず。
本来、理美容師は、お客様を笑顔に元気にする仕事。おもてなしの世界ですよね。

技術を磨くことも大事ですが、いかにお客様に共感して、寄り添えるか。
サービス業としての基本だと思います。

その人の好みやスタイルに合わせて、おしゃれを楽しんでほしいですね。

Interview Q2.今の取り組みをやろうと思ったきっかけは?

「がん患者さんには、美容を相談できる相手がいなかった。」

—美容を医療に活かそうと思ったきっかけを教えてください。

16歳の時に身近な方ががんになりました。
抗がん剤投与を行い、見た目も変わっていく姿は、とてもツラそうでした。
たまたま父が理美容関係のサロンをやっていて、お店が閉まってから、みんなでその方のサポートをしていました。
その時に、他の方はどうしているのだろうか、と疑問を感じたのがきっかけです。

私自身、高校生の時に髪が抜ける経験をしました。
隠せる程度の小さな脱毛でも、不安でした。
この原体験も、今の取り組みにつながっていると思います。

そして大学3年生の時に、親から美容の道に進まないかと言われました。
もしお店をするならなら、その場所があってよかったと心から思ってもらえるようなお店をやりたいと思いました。

お店のアイデアを考えているうちに、高校生の頃の疑問が頭に浮かんできて。
調べてみると、がん患者さんは、ウイッグ(かつら)を使用している人が多い。
全国にウイッグ屋さんは数十社もあります。
一見、選択肢がたくさんあるような気がしました。
がん患者さんをサポートしたいと考えた時、周りからはウイッグ屋さんになったら、と言われましたが、どうも違う気がする。
そこで、もっと深く知るために実際に病院に聞きに行ったのです。
がん患者さんたちと話をしてみると、やはり事情は少し違っていました。

抗がん剤を投与するとたった2週間ほどで副作用で髪が抜けてしまいます。
患者さんたちは、ただでさえ体がしんどい状態の中、抜けるまでのわずかな期間を費やし、焦る気持でウイッグを購入していました。

ウイッグを買ったのはいいけれど、相談も比較もできずに焦って選んでいるから、自分に本当に似合うのか不安だったり、ウイッグをしながら自毛が生えてきた時どう調整すればいいのか、カラーリングをいつからしていいかもわからない。
これではおしゃれもできないですよね。
お医者さんも美容については専門外。美容という点では相談相手がいませんでした。

それで、がん患者さんが安心しておしゃれができる、専門の個室美容室をはじめました。

Ccure –クキュア-は、完全個室制なので、ゆっくり美容について相談できます。

Interview Q3.どんな高校時代でしたか?

「自分が動けば、物事は変わる。」

—三田さんは美容師の資格も持っていますが、美容師を目指していたのですか?

両親が理美容関係の仕事をしていたので、子どもの頃から理美容師の免許の取得を勧められていました。

最初はあまり興味がなかったのですが、高校に通いながら、通信教育で理容の勉強をしていました。
勉強していくうちに、理美容って七五三や結婚式といった人生の門出に立ち会えるステキな仕事だとわかって少しずつ興味がわいたのですが、理美容の道に進むつもりはあまりありませんでしたね。

英語の勉強がしたくて、高校1年生の夏休みに1ヶ月だけカナダにホームステイに行ったのですが、日本で習った英語がまったく通じなくてびっくりしました。
このまま話せないのはイヤだなと思い、密かに来年また行こうと思っていました。

そこで自分でお金を払って留学しようとカナダ大使館に電話して、「カナダに留学したいんです」と伝えると、留学斡旋会社を紹介してもらって。
とはいえ、とても自分では払えない額でした。
ただ、そこまで行動していた情熱が伝わったのか、親も理解してくれて、高校2年から2年間カナダに留学させてもらいました。

カナダの高校を卒業できる単位を取得して、大学も行く気満々だったのですが、日本の高校を卒業してほしいという親の説得もあって、泣く泣く帰国することに。
1つ年下の子たちと一緒に高校3年生の9月から転入しました。

—大使館に電話する行動力はすごいですね。当時、夢はありましたか?

ぼんやりと英語を使った仕事をしたいなと思っていました。
それで、大学は英文科を選びました。
友達をつくりに行けば良いと親に言われて、大学では色々楽しみ、頑張ろうと気合いを入れて進学したのですが、周りはバイトや遊びに忙しそうで。私も流されてしまっていましたね。

なんとなく居心地の悪さを感じていた私をある先生が学生会に誘ってくれたんです。
そして、そのすぐあとに新潟中越地震が起きました。
学内で募金は募られていましたが、私は困っている人たちがたくさんいるのだから、もっとみんなが関われるやり方はないかなと思っていました。

でも、学生会では年間行事以外のことに取り組むのは難しいとのことでしたので、アイデアはないかといろいろなところに相談して駆け回っていたら、一週間後のハロウィンに向けて、国際交流のために海外の留学生をその時期に十数名受け入れているという話を聞きつけたんです。
しかも、留学生たちは今のプログラムではハロウィンを楽しめないし、日本人学生とももっと接する機会を増やせるのであればお互いにとって良いのではないだろうか。
そこでひらめいて、ハロウィンダンスパーティーを企画して、チケット代をチャリティにしたイベントを開催したんです。
それから、ハロウィンダンスパーティーは国際交流センターの恒例行事になりました。

出来ないことも出来ることに、動かすことができた。
自分が動けば、物事は変わるんだって、実感しました。

高校時代の留学は、人生の大きな転機になりましたね。

Interview Q4.高校生のみんなにアドバイス!

「アイデアは、移動距離に比例する。」

—人生の先輩から高校生へメッセージをお願いします。

私の大切にしている言葉があります。
「アイデアは、移動距離に比例する」
知らない土地に行く。知らない人と会う。興味のない本を読む。
そうすることで、思いもしなかったことを知り、新たな知識を得て、自分の視野が広がっていくことを実感できると思います。

あまり興味のなかった理美容を勉強したことでCcure -クキュア-は生まれました。
カナダに留学したことで、異文化に触れ、人間として一回り大きくなったと思います。
だから、食わず嫌いをせず、どんどん行動してほしいですね。

そして、もう1つ大切なのが、自分が正しい位置にいるかを確認すること。
いくら遠くまで移動しても、それが正しくない方向かもしれませんよね。
できるだけ遠くまで移動したら、ときどき自分の歩みを振り返る、きっと人生を切り拓くアイデアが思いつくと思いますよ。

アイデアは、移動距離に比例すると思います。怖がらずにどんどん知らない世界に飛び込みましょう。


三田 果菜(さんだ かな)さん
Happy Beauty Project クキュア 代表

・1983年京都生まれ。30歳(2014年3月現在)。
・京都理容美容専修学校理容科・美容科修了。同志社大学大学院修了。
・2007年から「美容術で女性とまちを元気に!」をコンセプトにHappy Beauty Projectをスタート。
・がん患者・脱毛症患者のトータルビューティー&ヘルスサポートを行う専用個室美容室Ccure -クキュア- をプロデュース。