世界を変えるU33

スポーツで世界を変える

MixiCheck

スポーツの力で、世界から争いをなくす。

菅原 聡(すがわら そう)さん
NPO法人GLOBE PROJECT 代表理事

菅原 聡

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Interview Q1.どんな問題に取り組んでいますか?

「フットサルを楽しんで、世界から地雷をなくす。」

—菅原さんが代表をつとめるGLOBE PROJECTの取り組みを教えてください。

スポーツで社会問題の解決を目指すNPO団体です。

今、世界には推定1億個以上の地雷が埋まっていて、新たな地雷が毎年数万個のペースで埋められていると言われています。
日本には地雷が存在しないので、想像がつきにくいかもしれませんが、思いっきりスポーツをすることができない、安心して歩くことさえままならない。
そんな場所が世界中には、あふれています。

地雷は誰かが取り除くか、誰かが踏んで爆発するまで半永久的にそこに埋まり続けます。
当然、危険なため地雷が埋められている場所に近づくことはできず、その地域の復興や開発に大きな障害となっています。

地雷原から地雷を除去する費用は、1㎡あたり約1ドル(≠100円)。
たとえばフットサルコートは縦30m、横20m程度ですから、広さは約600㎡。
約600ドル(≠6万円程度)あれば、フットサルコート分の広さの地雷原から地雷を除去することができるのです。

そこで、参加費の一部を地雷除去にあてる「KICK THE MINE CUP」というフットサル大会を開催しています。
1回のフットサル大会ごとに、使用したコートと同じ面積分の地雷除去費用にあてています。
2006年から、これまでに89大会を開催してきました。

—どこの地域に埋められている地雷を除去しているのですか?

世界的に地雷汚染の激しい地域のタイとカンボジアです。
実際の地雷除去は専門的な技術が必要なので現地の団体が行いますが、目に見えて、地雷がなくなっていくのがわかるのは嬉しいですね。

両国ともサッカーが盛んな国なので、サッカーを通して、サッカーができなかった場所でサッカーができるようになっています。

現在は、Jリーグとも連携し、さらに活動を拡大していきたいと思っています。

また、地雷除去以外に、東日本大震災で被災した東北3県のなかで、プロサッカー選手を目指す小学生を日本代表戦に招待する「Dream Ticket Cup」も開催しています。

困難な状況でも、夢を追いかけることをあきらめないでほしいですからね。
これまでに200人以上の子どもたちを日本代表戦に連れて行くことができました。

大好きなスポーツを楽しむだけでなく、楽しむことで誰かのためになる。
その方がスポーツをするのも、もっと楽しくなりますよね。
スポーツの力を、世界の問題解決につなげていきたいと思っています。

日産スタジアムで開催した「KICK THE MINE CUP」。

Interview Q2.今の取り組みをやろうと思ったきっかけは?

「親を殺された少年が、一番幸せな瞬間はサッカーと答えてくれた。」

—GLOBE PROJECTをはじめたきっかけは何でしょうか?

大学でラグビー部に入部したのですが、あまりのレベルの高さにびっくりしました。
このまま続けても4年間、試合に出られないかもしれない。
小学生の時からラグビー漬けの生活でしたから、試合にも出られず、ラグビーしか知らないまま社会に出てしまってはまずいと思ったんです。
世の中を知るためにはどうすれば、いいか。
図書館に行っても、よくわからない。新聞を読んでも、よくわからない。
だったら、自分で世界に行ってみようと思ったんです。

大学を休学し、1年かけて、東南アジア、中央アジア、ヨーロッパ、東欧、中東、アフリカ、アラスカなど40ヶ国くらい旅しました。
観光地だけではなく、難民キャンプや紛争地帯といったあまり旅行者が訪れないところにも足を運び、世界の現実を目の当たりにしました。

そして、アフリカのウガンダの難民キャンプで、二人の少年に出会いました。

—ウガンダは、隣国コンゴの紛争によって、たくさんの難民がやってきていますね。

ウガンダのアルーアという場所にある難民キャンプに行きました。
ギフトくんという15歳の少年に、難民キャンプにいる理由をたずねると、13歳の時に突然村を襲われたと答えました。

家族は全員殺されてしまい、残った村人と川の水を飲み、外で眠り、3週間歩き続けて、隣の国のウガンダに逃げてきたそうです。
最後の2日間は、飲まず、食わず。それまで物乞いはしなかったのですが、どうしても耐えられず、見かけた大きな家の住人に掃除でも洗濯でも何でもするので、どうか食べ物をくださいとお願いしたそうです。
すると、その家の家主が「お前はどこの部族だ」と聞いてきた。

たいがい隣接する部族同士は仲が悪いんです。
部族名を告げると、「お前らに与える水はない」と言われて、笑いながら敷地から放り出されたそうです。
その翌日に難民キャンプの職員に拾われたとのことでした。

あまりの悲惨な現実に言葉につまったのですが、ある質問をしてみました。
僕は旅をするなかで、現地の子どもたちに「将来の夢」を聞いていました。
サッカー選手やクリケット選手という答えが多くて、貧富の差にかかわらず「スポーツ選手」は人気の夢だったんです。

ですが、ギフトくんの答えは、「自分の村を襲った部族を殺しにいく」でした。
彼の気持ちを考えたら簡単に、それはいけないことだ、とも言えませんでした。

それで、「何をしている時が一番幸せ?」と別の質問をしてみたんです。
すると「サッカーをしている時」と言ってくれました。
その時、たまたま自分がサッカーシャツを着ていたので、彼と服を交換しました。

—コンゴの紛争の原因は何なのですか?

コンゴの紛争は、タンタルという鉱石の奪い合いから起こっています。
世界の6割のタンタルがコンゴで採れるため、ものすごい利権なわけです。

このタンタルは、僕らが持っている携帯電話に必ず使われています。
充電池が熱くなり過ぎるのを防ぐ効果があります。
このギフトくんの現実に、間接的であっても、自分も関係しているということを知って、がく然としました。Tシャツをあげて、満足している場合じゃないなと思ったんです。

そして、もう一人。
グルという地域にある元少年兵が集められた村で、チャールズくんという少年に会いました。
少年兵は、絶対に逃げないようにするため、自分の家を襲わさせられるのですが、チャールズくんも、殺さなければお前を殺すと脅され、泣きながら自分の母親の腕を斧で切り落としたそうです。

チャールズくんの描く絵は、ぜんぶ人々が殺し合っていました。
でも、一番幸せな瞬間をたずねると、「サッカー」と答えてくれました。
一緒にサッカーをしたら、本当に幸せそうでした。

その時、思い出したんです。
僕は高校2年生の時に父を亡くしました。
途方に暮れていた時に、90人のラグビー部員が駆けつけてくれました。
大丈夫かと声をかけてくれなくても、一緒にグラウンドを走って、笑っていれば、嫌なことや悲しいことを忘れられたんですね。

紛争や難民や貧困の問題は、政治的、経済的なアプローチが必要です。
そして、最終的には教育が一番大事になってくると思います。
でも、スポーツにもやれることがあるんじゃないか。
そう思って、スポーツで社会問題を解決するGLOBE PROJECTを立上げました。

アフリカで出会った子どもたち。サッカーは、国境を越えて世界中の子どもたちが大好きでした。

Interview Q3.どんな高校時代でしたか?

「受験は待ってくれるけど、夢は待ってくれない。」

—菅原さんの高校時代を教えてください。

父親の影響で、小学校からラグビーを習っていて、高校では日本一を目指していました。

ポジションは、フッカー。スクラムの時は、一番前で体を張っていました。

朝も放課後も、土日も、すべてがラグビーです。
ラグビー以外の時間は、体力を温存するために暇があれば寝ていました(笑)。

高校3年の冬まで部活を頑張ったら、すぐ受験が迫ってくるのはわかっていました。
でも、「受験は待ってくれるけど、全国大会の舞台である花園は待ってくれない」がチームメイトのなかでは合い言葉のようになっていましたね。
だから、ギリギリまでとことんラグビーに打ち込みました。

最後まで日本一にはなれず、すべてを費やして、これ以上できないというくらい、ベストを尽くしても、叶わない現実がある。現実の厳しさを知った経験でもあります。
世の中ハッピーエンドばかりではないですから。

ただ、人生の中で、何かを一生懸命やりきったこと。
それを共有できる仲間がいる経験は、大きな財産になっています。

もし、高校に戻れるなら、もう一度ラグビー部に入って、日本一の夢を叶えたいです。

—ラグビー漬けの3年間ですが、将来の仕事のイメージはありましたか?

高校2年の春に父親を亡くしました。まだ43歳でした。
一生懸命努力して、いい大学を出て、いい就職をしても、死んでしまったら、まったくハッピーじゃないなと思いました。

僕は部活を頑張っていましたが、進学校でもあったので、周りは有名大学を目指していました。
その中で、果たして自分は何を目指せばいいんだろうかと、悩んでいましたね。

高校3年の冬まで部活があったので、受験勉強はそれから。
ラグビーばかりしていたので、間に合わず浪人しました。
浪人時代に早稲田大学のラグビー部が大学日本一になり、当時のキャプテンが高校の先輩だったこともあって、早稲田大学を志望しました。
部活に注いでいたエネルギーをすべて受験勉強に注ぎました。

県大会で優勝できましたが、最後まで日本一の夢を果たすことはできませんでした。

Interview Q4.高校生のみんなにアドバイス!

「受験勉強は、部活のトレーニングに似ている。」

—人生の先輩から高校生へメッセージをお願いします。

僕は高校3年間をラグビーに注ぎました。
浪人して、はじめて勉強が楽しくなりました。

ラグビーでは、毎日一生懸命走っているのに、1ヶ月経っても全然足が速くなってない(笑)。
でも、その勢いで英単語を覚えたら、1ヶ月もするとものすごく成績が伸びるんです。

成績がどんどんあがっていくとやっぱり面白くなっていくんですね。
10問中8問くらいわかるようになってきたら、最後の2問がわかるまで、もう徹底的にやる。
8割覚えればいい…ではなく、10割完璧に覚える。
時間の使い方もそう。家から予備校までの間の時間をどう使うか。
すべてを無駄にせず、受験勉強に注ぐ。
ラグビーのトレーニングに似ていると思いますね。

高校時代、チームには全国でもトップクラスの選手たちがいました。
日本代表に選ばれ、日本一を目指すような選手たちは、日々の生活から徹底していました。
会話もすべてラグビーの話ですし、自宅ではラグビーのテレビを見ながらご飯を食べる。
もちろん炭酸飲料も飲まず、お菓子も食べない。
本気で日本一を目指すには、ここまで徹底するんだと刺激されました。

逆に言えば、まだまだ自分には努力する余地があるなと思ったんです。
受験勉強はツライと思いますが、やるなら徹底的にやってはどうでしょう。
部活を頑張るように受験勉強を頑張ったら、成績もあがって楽しくなると思いますよ。

部活のエネルギーを受験勉強に注いだら、楽しくなるかもしれませんよ。


菅原 聡(すがわら そう)さん
NPO法人GLOBE PROJECT 代表理事

・1983年北海道生まれ。30歳(2014年3月現在)。
・早稲田大学第二文学部卒。在学中に1年間、世界一周の旅に出る。
・2006年、スポーツを通して社会問題を解決するGLOBE PROJECTを創設。
・使用コートと同じ広さの地雷を除去するフットサル大会「Kick The Mine Cup」を開催。
・「Kick The Mine Cup」は、現在まで89回開催している。