芝浦工業大学
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技術Technology011
2018.09.27

月面を、力強く
走る車輪を考える

月面を覆う超微粒の砂「レゴリス」とは?

月の表面をとらえた写真を見ると、ゴツゴツの岩がむき出しになったようなクレーターが無数に写っているため、とても硬い地盤のようにも思えます。しかし、実は「レゴリス」と呼ばれる細かい砂で覆われた砂地なのはご存じでしょうか? このレゴリスは地球上の砂とは比べものにならないくらい小さな粒状のため、地盤はとても緩く、表面を歩いたり探査用のロボットを走らせるのは非常に困難だとされています。また、レゴリスにはガラスの粒子、岩の破片、鉄粉が含まれているため非常に磁気を帯びやすく、機械や宇宙服に付着すると故障や損傷の原因にもなりやすいそうです。これまでNASAが採用してきた探査ロボットの車輪は、細かいガラス片のようなレゴリスに耐えるべく、金属系の硬い車輪を使用してきました。しかし、傾斜のついた地盤上を走らせてみると、金属製の車輪は損傷には耐えることができても、その重さや硬さのせいで車輪はどんどんレゴリスの中へ沈下してしまい、効率よく走行することができません。

月面から災害地域までをカバーする空気レスタイヤの開発

芝浦工業大学システム理工学部の宇宙探査・テラ-メカトロニクス研究室では、この軟弱で危険な地盤上でも走行可能な探査ロボットを作るべく、飯塚浩二郎教授と20名の学生たちによって日々研究が進められています。研究室では、軟弱な地盤上でも平衡感覚を保てるように、軽さと柔軟さを活かした車輪の考案や、地盤の面と地盤中の支持力を利用したロボットの開発などを行っており、実際に月面に近い状況での砂地走行を可能にしました。この実績は、今後の宇宙開発や月惑星探査にも役立てることができるだけでなく、水害や大雪などで軟弱化した土地に適したレスキュー車両用空気レスタイヤの開発や、農業用モバイルシステムへの発展にも一役買っています。研究室の飯塚浩二郎教授は、「今後はもっともっと品質を高めて、社会で困っている人たちにフィードバックしていきたい」と語ります。

ロボット開発を通して社会貢献したい人におすすめ

この研究室に所属する学生たちは、立体設計を行う3D CADや加工機などを使ってロボットに使用する部品や電子回路の製作のほか、走行のための実験などが中心です。子どもの頃から宇宙や月に興味のある人はもちろんですが、ロボットや自動車タイヤなどの開発を通して社会の役に立ちたいと考える人にもおすすめしたい研究室のひとつです。

学生インタビュー:
外出の面倒臭さから、さまざまな移動に対する興味が芽生えた

現在、この宇宙探査・テラ-メカトロニクス研究室に在籍する学生は20名。男子学生ばかりの研究室かと思いきや、3名の女子学生が所属しているそうです。今回、お話を伺った伊東紘幸さん(大学院2年生)は、田畑の傾斜したあぜ道の除草ロボットを研究中。「もともと出不精のたちで、人間が移動することについては漠然とした興味がありました。大学進学後にここで不整地に対応する車輪の研究をやっていて、農業に関係する車両の研究もやっていると知って、この研究室に入りました。今はこの除草ロボットに自分の位置を認識させて動きを制御しようということに取り組んでいます。この開発を通して農業ロボットへの興味が高まったので、将来的には自動田植機やトラクターの開発に関わって農業生産者を助けていけたらと思っています」。伊東さんは研究で挫折を感じたりすることはあまりないそうですが、そういった学生たちのメンタル面についても飯塚教授がしっかりと対応しているそうです。「ここは研究が思うように進まず落ち込んでいる子がいても、飯塚先生がその様子を察知してフォローしてくださっているので、諦めて投げ出すことはないですね。それに、学生同士それぞれの得意分野をうまく共有して協力しあっているので、研究がイヤになったりすることは少ない気がします」。

システム理工学部/機械制御システム学科/宇宙探査・テラ-メカトロニクス研究室
飯塚 浩二郎 教授
不整地・軟弱地盤の移動を、理論的・実験的に分析することでその運動の特徴が見えてきます。この運動を用いて、被災地、農業現場、あるいは雪上へと展開できます。