芝浦工業大学
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技術Technology021
2018.07.26

脳でコンピューターを動かし、
よりよい社会を築く。
「意思をよみとる」研究とは

まるでSF!?操作は不要、
思うだけで車椅子を
自由自在に動かす技術研究

電子工学は、現代の産業や社会の発展に必要不可欠な基盤とされており、その知識や技術は、自動車、鉄道、通信、食品、医療、宇宙事業など、さまざまな現場で生かすことのできる応用力と社会的ニーズの高さが特徴の分野です。

芝浦工業大学は「単科大学」という強みを生かし、電子工学科内の研究室も専門別に幅広く細分化されています。例えば、半導体やロボットをテーマとする科学的でテクニカルな探究に励む研究室もあれば、人間の生態にフォーカスしたテーマを掲げてそこからよりよい社会づくりを目指す研究室もあり、その多種多彩さに将来への期待を膨らませる学生も少なくありません。

電子工学科・生体電子工学研究室は、意思表示や身体を動かす際に人間の脳から発信される極微弱の電流信号を正確に測定し、そこから得た分析結果やデータを使って脳と暮らしをつなぐ研究に取り組んでいます。これは、頭の中で何かを思うだけで、コンピューターなどの機器の起動や運転を自由に制御できる技術(BCI=Brain-Computer Interface)の実用化を目指すというものです。

この技術が実用化レベルに達すると、身体を自由に動かすことのできない四肢麻痺の人が、脳からの意思のみで電動車椅子を自由に動かすことができるようになります。また、ストレスや疲労などによる心身的変化や感情を検出することで自動車運転を制御し、不注意からの事故抑制に役立てることも可能となるそう。

産学連携で生まれた「JINS MEME」は、未来のストレスレス社会を握る大切なきっかけ。

研究室では産学連携への取り組みから、実際に製品化へと繋がったものもあります。メガネブランドJINSと東北大学との共同研究によって生み出された「JINS MEME」は、メガネ型のウェアラブルデバイス(※)です。これは、メガネに装備された眼電位センサーが、眼球の動きやまばたきの頻度などを計測し、スマートフォンのアプリを通して自分自身の眠気や集中力のような内面の変化を可視化することができるというもの。このプロダクトはライフサイエンス分野への波及・応用の可能性が高い技術ということが認められ、経済産業省「Innovative Technologies 2014」の審査員特別賞を受賞するという実績をのこしました。

現在、研究室では加納慎一郎教授の指導のもと、17名の学生たちが研究テーマ別にチームを組みBCIに関する研究や技術開発を行っています。加納教授いわく「学生たちの雰囲気はいいですね。こちらが出した指示に対してなんだかんだいいつつも、ちゃんと研究をやってくる真面目な子たちばかり」だそう。ここでの研究は人間の脳を相手にするため、数学のように答えや結果が1つとは限りません。年齢、性別、個人の性格によっても脳波の数値は異なり、その多様性と奥深さが学生たちの探究欲を刺激しているのかもしれません。

自分の興味を研究や進路に繋げることができるのが電子工学科の魅力。まずは興味探しが未来を切り開く第一歩。

これから進学先を検討する高校生たちへのアドバイスとして加納教授はこう語ります。「電子工学を通して学べる知識や技術は、さまざまな現場で活用可能なすそ野の広さが魅力です。卒業後の進路についても、電子工学科の生徒を求める企業はジャンルレスになってきました。工学を学びたいけど何を選択すればいいのかわからないという人は、まずは自分自身が何に興味があって何を面白いと思えるのか、たくさんの本を読んでみて、自分はコレだというものを見つけてみるのがいいですね。きっとそれが今後の研究や将来の進路にも結びつけることができると思います」
※ウェアラブルデバイス……身体に装着した状態で利用することが想定された電子機器デバイス

学生インタビュー:
お互いの得意分野を共有することで精度の高い結果が生まれる。やりがいのある研究環境

現在、生体電子工学研究室には17名の生徒が在籍しています。男女比は圧倒的に男性が多いものの、年齢や性別をあまり意識することなくフランクに話し合える環境のようです。

加納先生の「脳波でモノを動かせる」という話に興味を持ち、この研究室へ入ることを決めた齋藤詩織さんは、「研究で脳波の測定もやりますが、それ以上にデータ分析のためのプログラミング作業も多いです。ここに入るまであまりプログラミングについては勉強してなかったので、最初はかなり焦ったりもしましたが、先輩や同級生があれこれとアドバイスしてくれるのですごく助かっています」と、お互いの得意分野の知識を共有しつつ助け合える仲間の存在が強みだと語ります。

脳波で義手を動かすための研究を行っている但木栄一郎さんは、「ここは、“これがやりたい新しいテーマがあればどんどんやってもいい”という方針が良いところだと思います。それに対して加納先生や周りの先輩たちは、その結果をより高めてくれるようなアドバイスをくれます。義手を動かす研究では両手足を動かすことがスタート時の目標でしたが、今はもっと精度を高めて親指と小指を動かす計測や分析をやっています。次のステップに進めることがやりがいにも繋がるので、ここに興味をもった人はぜひ来てほしいですね」。

工学部/電子工学科/生体電子工学研究室
加納 慎一郎 教授
生体信号からヒトの状態を推定する技術は、四肢麻痺などの患者のコミュニケーションや、ドライバーの運転事故防止のための生体センシングを実現するための手段として注目されています。