芝浦工業大学
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技術Technology042
2018.09.27

加速する健康志向、
次に注目される栄養成分は何?

ちょっと意外? 工業大学の中にある食品栄養学研究室

芝浦工業大学には工学系と生物学系を複合的に学ぶことのできる生命科学科があります。ここでは、生命体にとって避けられない遺伝や老化などの現象を解明するためのカリキュラムが組まれており、工学的技術を駆使した実験や検証などを通して生命体について幅広く学びます。その生命科学科の中にある食品栄養学研究室では、チョコレートや赤ワインなどに含まれている成分「ポリフェノール」の働きに注目し、メタボリックシンドロームや認知症、鬱病の予防や改善方法の開発、アンチエイジング効果などの解明について研究を行っています。

チョコレートのいいところ探しで見つけたポリフェノール成分

この研究室を担当する越阪部奈緒美教授は、もともと大手食品メーカーの医薬品部門で研究開発の職に従事していました。ある時、チョコレートのネガティブイメージを刷新するべく、いいところを探すようにと会社から命じられ、着目したのがカカオ豆に含まれた「ポリフェノール」という成分でした。当時、ポリフェノールには抗酸化作用やホルモン促進作用があることが知られており、越阪部教授が発表したチョコレートに含まれるポリフェノールの研究結果は、すぐに注目を集め、日本中にココアブームが到来。その後、食品メーカーからは高カカオポリフェノールチョコレートが発売され、大人気商品となりました。他社からも類似商品が売られるようになり、美や健康をサポートする高カカオポリフェノールチョコレートはひとつのジャンルを確立しました。

工学的観点から見つめる「ここにしかない栄養学」

現在、研究室では「栄養大学とは違った工学的観点からの研究を目指したい」と語る越阪部教授の指導のもと、ポリフェノール類がさまざまな症状の改善に作用するメカニズムの解明を行っています。これまで、体内であまり吸収分解されずにほぼ排泄されるとされていたポリフェノールですが、ここでの研究によって摂取直後に心臓や血管などの循環系を刺激する作用や、エネルギー代謝を高める作用があることが実証されるなど、さまざまな作用が明らかとなりました。とはいえまだまだ研究すべき課題は多く、今後も大きな発見に期待が高まる研究室です。

学生インタビュー:
生命体は未知の世界、実験結果の多様さが学生たちを引きつける

研究室には、現在18名の学生が在籍しています。栄養学と聞くとどうしても女子学生の比率が高い印象がありますが、今年は男子学生14名、女子学生4名と男子学生多め。年度によってのばらつきはあるものの、最近は男子学生が増えているそうです。この研究室ではそれぞれのテーマ別でチームを組んで研究を行っています。4年生の石井結子さんは、今年から研究室に在籍する新人さん。「本格的な研究がスタートしてまだ数ヶ月。実験用のネズミの飼育などを担当していますが、ネズミがストレスを抱えた状態では、確かな数値結果が出させない場合があるんです。なので、先輩たちにはネズミの気持ちになって飼育するように教えられました。やっとネズミの扱いに慣れてきたところです」。修士課程2年目の藤井靖之さんは研究室内でもベテランクラス。ポリフェノール摂取によって変化する脳の神経伝達物質の調査をしています。「実験ではネズミの脳を写真に撮って観察しているので、目に見える変化を実感できるところが研究の面白さだと思います」。計算で出てくる答えとは違い、変化や結果が無数に存在する生命体の奥深さ……それが学生たちを研究に没頭させる魅力のひとつかもしれません。

システム理工学部/生命科学科/生命科学コース/食品栄養学研究室
越阪部 奈緒美 教授
メタボリックシンドローム、ロコモーティブシンドロームや認知症の予防のための食品をメーカーと共同研究しています。美容食品の開発におけるシーズ(種)として食品・化粧品会社に活用されています。