高見 泰地

棋士(叡王)
公益社団法人 日本将棋連盟
文学部史学科/2017年3月卒

将棋と学業の板挟みに苦しみ 退学も考えた大学時代

高校3年のときにプロ棋士になったので、大学時代は将棋と学業の両立に苦しむ毎日でした。対局中も明日の授業のことが頭をよぎり、対局が終わると息つく間もなく勉強。そうして頑張っても、対局に勝つと次の対局が入るので結局授業に出られなくなり…勝てば勝つほど単位が遠のくというジレンマの中、大学に進まなかった同世代の棋士たちが実力を上げていく姿を見て猛烈に焦りました。退学も考えましたが、大学があるから将棋で活躍できないのだとしたらそれも自分の実力だ、どんな理不尽さも引き受けようと覚悟を決め、なんとかやり抜いたという感じです。学生の個性や長所を伸ばしてくれる立教の自由な校風、先生方の温かさにも助けられました。

自分のすべてで臨んだ叡王戦 プロ7年目でタイトル獲得

2017年の春、棋士として大きなチャンスが舞い込んできました。叡王戦がタイトル戦に昇格することが決まり、8大タイトルの一つになったのです。大学を卒業し、将棋に100%集中できる環境を得た矢先の知らせに、「タイミングにも運にも恵まれている。ここでやってやろう」と心を新たにしました。長い間思うような結果を出せなかった悔しさ、あきらめず積み重ねてきたこと、すべてを爆発させようと。それからは夢の中でも考えるのは叡王戦のことばかり。1%でも勝率を上げるため、できる努力は何でもしました。そんな必死さが勝利を呼び寄せたのかもしれません。2018年5月、「棋士になってタイトルを獲る」という小学校からの夢が叶いました。

勝負師としての支えは 立教で培ったあきらめない

叡王戦の前は単なる若い棋士の一人だったのが、現在はタイトル保持者として挑まれ、勝つことを常に求められる立場にいます。会社に例えるなら平社員が急に役員になったようなもので、プレッシャーはありますが、それも力に変えて戦っていきたいですね。大学時代、将棋と学業に悪戦苦闘する中で培われたあきらめない心は、勝負師としての私の柱です。もし立教に進んでいなかったら、今も応援してくださる先生や友人との出会いもありませんでした。卒業まで5年かかってしまいましたが、それすら最高のタイミングで叡王戦を迎えるための道のりだったのかもしれません。いつかすべてが力になる。そう信じられる今に感謝しながら今後も歩み続けます。