  
●学校の特色を前面に出し体験を通して生き方を考える「自己発見演習」
- 藩校以来の伝統を基に改革
- 学習の動機付けとして
- 1学期から企業・学校訪問
- 特別活動の取り入れ
●企業・大学等見学
●地域学校探究
●総括
●学校の特色を前面に出し体験を通して生き方を考える「自己発見演習」
藩校以来の伝統を基に改革
「創立330年」というのが、岡山県立和気閑谷高校の今年度のうたい文句だ。同校の歴史は江戸時代中期の寛文10(1670)年、庶民のために建てられた「閑谷学校」にまでさかのぼる。儒学と朱子学を中心とした学校で、旧制中学校、新制高校となってからもその伝統は受け継がれた。教育目標の最初に「誠実・勤勉」(陽明学者中江藤樹の「信・勤・倹」に由来)を掲げたり、旧閑谷学校で年1回、孔子を祭る「釈菜式」の祭官に同校の教職員が任命されていることなどに、その一端がうかがえる(岡山県教委は、儒教は宗教ではないから問題ないとの立場を取っている)。
とはいえ、重藤和彦先生が「普通科では特色を出すのは難しい」と言うように、表面上は他の高校と大きく変わるものではなかった。それが平成11年度から普通科の学区制が小学区から中学区に改編されるのをきっかけに、各校は県教委から特色を出すよう求められた。
そこで学校改革の中心に据えたのが「閑谷学校以来の伝統の発展と継承」だったと、同校の卒業生でもある竹内良雄先生は振り返る。昭和39年まであった閑谷校舎で行われていた全校集会での論語購読も今春から復活。教育課程の面では平成11年度から普通科を福祉、国際、文理の3類型とし、国際類型には英語系とともに中国語系を置いた。そして、普通科、商業科共通の必履修科目として開設したのが、1年生の「自己発見演習」(教科「総合」)だ。
■岡山県立和気閑谷高校の「自己発見演習」
学習の動機付けとして
「自己発見演習」の単位数は2単位で、隔週土曜日を終日この時間に充てている。和気閑谷高校に入学してくる生徒は「決してレベルの高い子ばかりでなく、入ったはいいが何をしていいか分からないことが多い」(重藤先生)。教科の授業よりも前に、学習の動機付けをすることが先ではないか――。こうした議論の末、1年生のうちに▽将来の目標を持てる▽内面に向き合って自分を語れる▽地域社会に出て身の回りのことを知ることができる、といった願いを込めて開発したものだった。
指導は第1学年に所属する教員全員で当たる。具体的な指導計画づくりも、基本的には学年団に任せている。初年度となった昨年度の場合、学年主任ら5人によって構成された「J企画」が原案を作り、全体に返しながら成案を練り上げていった。
1学期から企業・学校訪問
その結果作られた指導計画では、まず1学期に「企業・大学等見学」を置いた。これには早いうちから目的意識を持たせたい、というねらいがある。内容は、従来の進路指導なら2年次以降に実施してもおかしくないもの。「確かに早すぎるという意見はありました。でも、2年生からは類型に分かれるのですし、進路指導に早すぎるということはないと思います」と、1学期の責任者で、進路指導課所属の笹埜圭亮先生は話す。
夏季休業中を中心に実施する「地域学校探求」には、主体的に学ぶ姿勢や能力を身につけさせるだけでなく、地域や学校に目を向けさせ、郷土愛や学校への帰属意識に目覚めさせようというねらいがある。
「スピーチコンテスト」は、自己表現の方法や他人とコミュニケーションを行うスキルを磨くため。その一方で、自己の心情を吐露させることで、自分を見つめ直すきっかけとした。実際に人前で話をするのは初めてという生徒が多かったが、終了後のアンケートでは「ものすごい自信がついた」「やればできるんだ」といった感想が相次いだという。
特別活動の内容も取り入れ
学校行事の要素を組み込んでいるのも、この科目の大きな特徴。年2回の閑谷研修では、春に学校の歴史を学び、秋には国宝・旧閑谷学校講堂で論語講読を行う。これも学校への理解と愛着を深めることを期待してのことだ。
さらに、秋の文化祭(楷楓祭)に向けた準備や「和気アルプス登山」も、この時間内に実施している。これらは厳密に言えば特別活動に分類される内容だが、「仲間づくり」を通して他人を知り、自分も見つめ直す機会にすると位置付けている。こうした活動中心の学習を生徒も楽しんでいるようで、土曜日に休む生徒は格段に少なくなったという。
試行錯誤で始めた実践だったが、教える側にとっても十分な手ごたえを感じさせたようだ。「(担当教科である)数学の授業に比べたら、10倍から15倍のエネルギーを使いましたよ」と笑う笹埜先生は「進路指導関係では、教師になって一番充実していたと思います」と振り返る。
■平成11年度の実施例
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