キャリアガイダンスVol.402 別冊
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7Vol.402 別冊付録バイオ原料として期待されるエリスリトールの結晶「大切なのはこだわりと粘り強さ」と語る春見教授約5時間を要したホワイトタイガーの手術の様子専門医育成にも力を注いでいる枝村専任講師 「大学の動物病院には特に難しい症状を抱えた犬や猫が集まります。既存の治療法で対応できる場合は臨床の領域ですが、治らない場合は研究中の新規治療を採り入れる場合もある。このように臨床と基礎研究は密接に関連しています。また、日々患者さんを診ていると、細胞の研究をする際にも、『何のためにやるのか』を意識するようになる。それは臨床にも研究にもプラスに働きますから」 その両方ができるのは臨床例の豊富な動物病院を持つ獣医学科という環境が大きいと枝村専任講師。基礎研究への意識の高まりで学科単位の論文数も増加傾向。臨床の教員と基礎研究の教員がチームを組んで科研費の研究に取り組む動きなども盛んになっているという。* 日本大学生物資源科学部では、このように多様で刺激的な研究が日々行われている。各研究室では学生の主体性を重視した指導をしており、学部生時代から研究の醍醐味に触れるチャンスも。生命化学科や応用生物科学科では、約3割の学生が大学院に進むなど、研究職志向も着実に育まれている。研究職を目指す高校生にとって魅力は大きいはずだ。発展でたくさんのことが分かるようになり、今や微生物に関して新たな挑戦ができる段階に入っています」 そう語るのは生命化学科の春見隆文教授。主に研究しているのは微生物中に含まれるエリスリトールという物質だ。 「はちみつや果実など糖度の多い特殊な環境で生育する微生物を研究していたところ、モニリエラという菌にエリスリトールが含まれていることがわかりました。当時はその性質が明らかではなかったため、調べてみると、甘みはあるがカロリーがないことが判明。ダイエット甘味料に使えるのではないかと、食品メーカーと連携して研究を進めました」 甘味料としては実用化にも成功し、現在はさまざまな食品に利用されている。そして研究は次のステージへ──。 石油に含まれ、プラスチックなどの原料となるブタン系化合物は化学式で表すとC(炭素)が4つ。エリスリトールも自然界では非常に珍しいC4化合物で、発酵させ、還元することでブタン系化合物に変換できることが分かっている。 「つまり、エリスリトールで新しいバイオ樹脂を作ることができるのです。エリスリトールはタンクで培養すればいくらでも作れるので、化石資源に代わる再生可能な新原料として期待されています」 こちらも化学メーカーとの共同で実用化に向けた研究を進めているという。 大学は基本的に基礎研究の場だが、企業とのコラボレーションによって、このように社会や産業界のニーズに直結した研究に取り組むこともできるのだ。 「研究成果を世の中に還元できることは研究者にとって一番の喜び。大きなやりがいを感じています」獣医学科 枝村一弥専任講師臨床と基礎研究の両輪で歩けない犬猫の治療や再生医療の発展に貢献 昨年12月、ヒザの皿がずれて歩行困難になっていたホワイトタイガーの子どもの手術が行われた。執刀したのは日本大学生物資源科学部獣医学科の枝村一弥専任講師(獣医師)。希少種ホワイトタイガーの手術は世界でも初めてだ。 その枝村専任講師は日本で2人しかいない動物の外科専門医であると同時に、研究者としての顔も持っている。 「専門は運動器の再建外科学です。犬や猫は関節炎や軟骨に損傷が起きると二度と治らないといわれています。そのような患者さんを治療するための再生医療などを主に研究しています」 再生医療の研究は大きく二種類あり、骨髄間葉系幹細胞移植のようにすでに臨床応用されている技術もある。脊髄を損傷して歩けなくなった犬や猫に骨髄間葉系幹細胞を移植する治療では、20%が歩けるようになったという成果も出ており、治癒のメカニズムに関する研究が進められている。一方、iPS細胞やES細胞など、20~30年後に臨床応用される可能性のある技術も研究対象だ。 また、再生医療に関しては、医学との連携も進んでおり、研究成果は人間の再生医療研究にも貢献しているという。 では、臨床と基礎研究の両方に取り組む理由とは何なのだろうか?研究室レポート③

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