キャリアガイダンスVol.405
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的に学び合うのとはほど遠いグループになる。ゆえに「『グループワーク』は、イコール『協働学習』ではない」ともよく言われるそうだ。「ビジネス界に名を馳せた理論家のピーター・センゲの著書、『学習する組織』にもありますが、変化の激しい今の社会では、メンバー全員が能力や気づきを高め、環境に合わせて組織そのものが進化していくことが求められます。仮にグループワークでよい発表や成果物が生まれたとしても、上意下達の軍隊型の活動での結果なら、グループそのものは予定調和で進化していません。その場合は、生徒一人ひとりの主体性や協働する力も、あまり伸びていない、と認識したほうがよいと思います」(小林先生) 授業にALがどんどん取り入れられる中で、いつしか先生たちが、生徒が上手に話し合ったり発表したりするという、見た目の変化に満足してしまう、という懸念もある。 その点に関連して小林先生が思うのは、「皆さん、『学習の結果として身につく力』のほうに、目が向きすぎていないか」ということだ。「生徒の協調性を伸ばしたい、意欲を高めたい、学力を向上させたい。ALを始める入り口は何であってもいいと思うんですね。ただ、先を見すえた時に頭に入れておかなければいけないことは、『これからの世の中はどうなるかわからない』ということだと思うんです。『これとこれさえ身につければ幸せになれる』とは生徒に教えられない。だから力をつける土台として、生徒を『死ぬまで自分で学習し続ける人』に育てることが大事であって、それがキャリア教育の根幹だと思うのです」 その自分で学習し続ける人になるために不可欠なのは、OECDの定義したコンピテンシー(能力・行動特性)でも中核にすえているものだと小林先生はとらえている。「リフレクション(自己内省)です。体験をふり返り、気づきを得て、自己修正していく。ALの授業で生徒がそのプロセスを学ぶことが重要だと思います。そしてそのリフレクションをすることで、主体性や協働する力、必要な知識や技能も身につけていくのです」 13〜18ページでは、この核心を踏まえたうえで、ALに取り組むときのポイントを小林先生にレクチャーしていただく。 もっとも、高校の授業にALがしっかりと根付くには、まだ超えなければいけないハードルがある。 ALのフォーラムなどの参加者は、現時点では、林氏のみたところ「自分でもすでに何らかの実践をされている先生方が半分くらい、これからやってみようとする先生が半分くらい」。その先生たちが、それぞれの立場で課題を抱えているからだ。 真っ先にあげられるのが、授業中の生徒へのかかわり方がよくわからない、という悩みだ。生徒がグループワークや演習をしているとき、教師は何をすればいいのか。自分が手持ち無沙汰になりそうなことへの戸惑いや、生徒が騒いだり消極的だったりと期待どおりの活動をしてくれないのではないかという不安がある。 そこで問われるのが、生徒が発言や学習をしやすいように場づくりや介入をする、いわゆるファシリテーションのスキルなのだが、「ともするとそれが非常に難しいことのように宣伝される」と小林先生は語る。「カリスマ性やタレントのある人でないとできないように思われているふしがあるんです。ファシリテーションは技術を身につければ発揮できるリーダーシップであって、カリスマ性で生徒をぐいぐいひっぱるのとは別物だ、と理解することが大事だと思います」 一見、グループワークがうまくいっているようで、実は生徒が能動的に学習していないケースもある。「誤解を恐れずに言えば、日本では小中学校のころから軍隊型のグループで活動をすることが多いんですよ。頭脳労働をするリーダーとサブリーダーがいて、手足となる中間層がいて、何もしない傍観者がいる、といったように。だから生徒は、グループ分けされると、周囲を見て自分の置かれたヒエラルキーを察知し、その役目だけ務めようとします」(小林先生) するとどうなるか。考えて指示を出す生徒がいる一方で、指示に従って動くだけの生徒もいて、お互いが主体見えてきたこれからの課題実践する先生たちの悩みとは授業中の生徒へのかかわり方、教師の役目がよくわからない課題1グループワークが能動的、協働する形にならないことも課題2もたらす効果に目を奪われて本質的な目的を見失うことも?課題3産業能率大学 入試企画部長林 巧樹氏1959年生まれ。産業能率大学の職員として各地の高校を訪問。1998年より高校教員向けに授業力向上セミナーを、2007年からは同じく「キャリア教育推進フォーラム」も開催、キャリア教育やアクティブラーニングに関心のある先生方の一大交流の場となった。2007年度から入試の一つとして、高校でのキャリア教育の成果を評価して選考する「キャリア教育接続入試」も創設。122014 DEC. Vol.405

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