キャリアガイダンスVol.405
19/64

 私自身、学生時代から今に至るまで、多くの検証実験にかかわるなか、学びの過程で起こるさまざまな事実が明らかになってきました。例えば、あるレベルの理解が次のレベルの不理解に繋がること。つまり、少しわかってくると次の疑問が生まれ、それが解けると再び疑問が生じるという具合に、螺旋的に理解が深まっていくのです。その際、自分よりも、よくわかっていない人がいると、理解の深化につながることも明らかになりました。というのも、よくわかっていない人は、理解していない分、思いもよらぬ批判や飛躍的な提案を行いやすく、それが再考を促してくれます。それに、人はひとりだけで考えていると、集中するあまりセルフチェック機能が低下しますが、他者に説明しようとする段階で、その機能が働き出すためです。 複数の人間で同じ問題を解こうとすると、こうした動きが交互に起き、より高いレベルの理解へ繋がっていきます。対話を通じて、自分たちの考えを少しずつ良くしていく、こうしたメカニズムを「建設的相互作用」と呼びます。人と一緒に問題を解くと、ひとりでは気づきそうになかったアイデアを思いつくことがありますが、背景には、このような仕組みが働いているのです。 そうした検証を繰り返すなか、「学ぶ」とは、どういうことかという問いに対して、たどりついた結論があります。簡単に言えば、「人とかかわり合いながら、自分自身の考え方を少しずつ変えて、賢くなり続けること」だということです。 そもそも人は日々の経験から、自分なりの世界モデルをつくって生きています。ある経験をしたとき、「同じことをしたら次も同じことが起きるのでは」と予測し試してみることを、小さい頃から行っているのが人間です。要するに、人は自分の経験則を頼りに生活しているわけです。 いっぽうで、自分と異なる人もや人はどこまで賢くなれるのか人は、人とかかわり合いながら賢くなる学びのゴールが変わろうとしているはりその人なりの経験則をもっています。すると今度は、自分の経験と、他者の経験とを照らし合わせることで、自分の世界を広げていくことができます。自分が経験したことではないけれど、他者の経験則を取り入れ、自分が得をするように動けるわけです。特に、信頼のおける相手の言うことは素直に取り込めるもの。赤ん坊が母親から言葉を学ぶのも、サッカー好きの少年が、先輩の真似をするのも同じこと。そうやって、人とかかわり、対話をしながら人は賢くなっていきます。 そのような原則を生かした授業改善ができないか、というのが今、私たちに課せられている仕事です。その背景には、学校での「学びのゴール」が変わろうとしているのに授業が変わっていないことに対する危機意識が強くあります。 環境問題にしろエネルギー問題にしろ、これからの時代の課題は、少数のリーダーが正しいと決めた答えに従うことでは解決できません。一人ひとりが、自分で考え、他者の考えを統合しながら、独自の解に行きつくことが求められています。身近な例を出せば、就職後、若手社員が集められ、「今後、わが社ではどんな商品を開発したらいいと思う?」と問われたとき、「何と答えれば正解なのか」と考えるようでは困ります。正解は自分でつくりだすものです。 そうした社会では、一時的に詰め込み、すぐ忘れてしまう知識に意味はありません。実社会で活用できる知識こそ大切です。すなわち、学んだ場以外に持ち出せ(portable)、必要な時に使え(dependable)、作り変え維持できる(sustainable)知識です。さらに、自分の考えをうまく他人に伝える「コミュニケーション能力」、自分の考えを他者とのかかわりのなかで磨いていく「コラボレーション能力」、解に到達した先に次の問いを見つけられる「イノベーション能力」など、21世紀型といわれるスキルについても、人が本来もっているスキルではありますが、きちんと伸ばしていくことが、これからの学びのゴールとなるはずです。2章授業を未来を切り拓く学びの場に212014 DEC. Vol.405

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です