キャリアガイダンスVol.405
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資料出所:水野正朗「高等学校で協同の学びを仕掛ける」『協同の学びをつくる:幼児教育から大学まで』(三恵社)より深い学びにつなげるには学習課題が重要になる「頭の中がアクティブになる」ためには、学習課題がそれだけ重要になる。特に、教材の本質を貫く学習課題の開発が、大きなポイントになるという。例えば、ある高校の理科担当の先生が、高校1年生を対象にアクティブラーニングを始めようとしたときの問いの事例から、その違いを見てみたい(下図課題例参照)。「最初の課題の作り方は、従来の知識伝達型の一斉授業のプリントづくりとあまり変わっていませんでした。これらの課題でグループによる話し合いを導入しても、意見の交流から何かを発見し、学び合うことにはつながりません。一方、考え直したあとの学習課題は、観察可能な事象に関する知識や経験を皆がもち寄り、それらを統合することで、生徒自身が『生物多様性』という学習内容の本質を発見するように導いているといえます。このような深く、学習指導の柱となる問いを立てることが大切です」 つまり、このような問いを立てていくとなると、教材研究が不可欠になってくる。「ただ、いきなり全部をやろうとすると、あまりにも負担が大きくなりすぎると思います。50分に1回だけ、理解の本質を問うような、今まで学んだ知識を使わないと解けないような高度な応用問題に、グループで立ち向かわせる。それだけでも、授業はガラリと変わります。また、実際にこれまで先生が行っていた授業内容を教材研究として振り返ってみると、実はすでに協同学習を実践している箇所が結構あるものです」 さらに、教科によっては、グループ学習よりもレクチャーをしたほうがいい単元もあるはず。「そんなときは、レクチャー8割で、その日の肝心要の部分だけはみんなでアイデアを出しましょう、という形でもいいと思います。肝心な部分は、先生が力を込めて言いたくなりがちです。でも、そこをぐっと我慢して、生徒に言わせる。それで生徒のなかに、知識が深く定着していきます」 その際、教師が「ここが要」と思っていたことと異なる意見を出してくることもありえる。意図していない方向に授業が進む心配はないのだろうか。「予想どおりにならなくても、まったく問題ありません。『授業では立ち往生せよ』という言葉もあるくらいで、教師が立ち往生すると、生徒はぐっと集中します。立ち往生した末に、じゃあ皆さん、このことについて話をしてみてっていうと、ものすごい勢いで話し始めます。また、深い学びから出てきた意見は、教師にとっても新しい発見になります」高校1年生 理科総合Bの「陸上生物の多様化」単元での課題例課題1:(始祖鳥の絵とともに)この生物の名前は何ですか? ドイツで化石発見。課題2:非常に大食漢で、胃の中に12時間以上食物がないと餓死してしまう生物がいる。    ①この生物の名前は何ですか? ②この生物が生息場所に適した特徴は何ですか?課題3:(教科書本文のところどころに空欄を設けた文章)以下の空欄に適する語句を入れなさい。課題1:以下の生物(シマウマ、モグラ、ライオン、セミクジラ、クモザル)の特徴   (生息場所・行動の特性・生物学的特徴)を表にまとめよ。課題2:どうしてそのような違いが生じたのだろうか、話し合おう。課題3:野生生物における種の減少の問題について考えよう。「課題1は、生徒が該当する知識をもっているかどうかだけで、クイズのように、誰かが正解を言ったらそれで終わりになってしまいます。課題2は、推論する手がかりがなさすぎで、生徒はどう考えればいいか困ります。課題3:教科書を見て書き写すだけの作業になってしまいます。いずれも、学び合いの対話にはつながらない課題といえます」(水野先生)「課題1は、生徒たちはさまざまな動物の生態を調べ、一覧にまとめる過程で、どうして動物はこんなにも多様なのかという問に直面します。そこで課題2で、さまざまな可能性を検討し、課題3で、生徒の視野は拡大し、学問として得た知識を今を生きる知恵として生かそうとつながっていきます。どの課題も、最初に自分の考えをワークシートに書き込み、グループで相談してさらにまた自分の考えをまとめ、全体に発表。活発な話し合い活動になりました」(水野先生)最初の課題設定こんな課題設定に変更解説解説262014 DEC. Vol.405

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