キャリアガイダンスVol.405
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一人ひとりの生徒の反応を予測しながら課題を設定する 問題解決における思考を、心理学者・ギルフォードは、必ずしも論理的にではなく広げて探る「拡散的思考」と、論理的に唯一適切な解答や解決に収束させる「収束的思考」の2種類に分類した。水野先生は、教育で「納得解」が生まれるメカニズムをこの論理のように「共同性の原理」として説く(図3)。「学習課題の特性によって、共通認識の形成過程に違いが生じます。教師はこの特性を理解しておくと、学習課題の設定が容易になって、安心して生徒の議論を導くことができるでしょう」 学習課題の特性は大きく3つ。ひとつは自然科学的な事実やシンプルな数学など、確実な理解と知識の習得を求め、収束させていく1のタイプ。2つめは、いろいろな解釈や認識が可能な2のタイプ。議論を通じてひとつに収束する場合も、並列で分類し納得解となる場合もあり、「『学び合い』のおもしろさはここにある」と、水野先生は言う。3つめは、参加者それぞれの体験や認識に関連づけて考えることを求める3のタイプ。個人や共同体の価値観が問われる課題になるので、意見をひとつに収束する必要はなく、価値観の違いから相互理解を深めることが大事になる。 このような観点をもって課題設定をすると同時に、授業設計では、生徒一人ひとりの反応をシミュレーションして考えることも大切だという。「自分の期待(理想)だけでなく、子どもたちは、こう反応するかもしれない、こんな反応かもしれないと、いくつもの仮定を指導案に書いておく。小学校では、座席型指導案といって、表ではなく、座席表に『この子がこう発言したら、この子がこんな反応をして…』など、矢印を入れたりする指導案もあります。このシミュレーションもたいていそのとおりにはならないのですが、やはり生徒一人ひとりの反応を予測しなければ、学習課題は作れないと思います」 また、1年に1回でもいいので、生徒の逐語録を元に授業研究するよう、水野先生はアドバイスする。「アクティブラーニングをしていると、必ず次のステップとして、子どもたちの頭の中で何が起こっているのかが課題になります。そこで、注目した1つのグループ、ある1人の生徒でもいいので、ビデオに撮り、逐語記録も起こして、細かく検証することをお勧めします。また、リフレクションシートとも合わせて、子どもたちはこう反応したよね、こう話していたよね、この問題にはこう発言していたよねと、生徒の反応に注目した共同研究をぜひ行ってみてください」1. 教師と生徒が共に成長することを意識する2. 「個人→グループ→全体→個人」のサイクルを回す3. 単元の柱となる問いを準備する4. 生徒理解を深めて、シミュレーション5. 予想どおりにならないことを楽しむ授業設計5つのポイント図3:学習課題から見た「共同性の原理」学習課題の特性分有思考と集団思考との関係原理A:根拠に基づいて解釈(認識)を容易に    一つに定めることができるもの 分散 → 収束 前提的知識・社会文化的な常識原理B:意味が多義的で複数の解釈(認識)が    成立可能なもの分散 → 収束 または 並列 相互規定関係の認識 原理C:自己の体験や認識に関連づけて、    発展的に考えることを求めるもの。並列 → 拡大・発展・深化 共感の広がり・共存の感情・批評学習課題の特性と「間主観性」の成立過程との相互関係■原理Aに該当する課題(「既知性の核」:自然科学的な事実、シンプルな論理学や数学、言語の使用など)は、共通了解できる領域の拡大をはかる。■原理Bに該当する課題を授業における学習の中心的課題とし、討論を通して相互の認識(意見)の相互規定関係を認識させるべき。■原理Cに該当する課題は、個人または共同体の価値観や精神文化にかかわる問題。異他性と遭遇することで、それと自分とに関する主題化が起こる。他者理解と自己認識が深まり、認識世界が拡大する。教師には認識形成に対する深い理解が必要。枝葉と根幹。どうすれば根幹が育つか。原理A~Cはステップではなく、相対的なもの。動的に相互間を行き来する。資料出所:水野正朗「協同的な学びの創造」『授業研究と授業の創造』(渓水社)を一部修正2章学びの本質に向かう授業改革272014 DEC. Vol.405

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