キャリアガイダンスVol.405
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り、手にした知識や技能を「活用」して、新しい価値を「創造」することのほうが、より求められるようになりました。 だから学校の授業でも、生徒たちが手にした知識・技能を活用し、問題解決や創造をするというプロセスを学ぶ必要性が強まったのです。例えば、生徒が体験から感じ取ったことを、国語や美術で習った知識や技法を使って文章や絵で表現したり、理科で学んだことをもとに仮説や実験の計画を立て、その実験結果を整理して発表する、といったぐあいに。 しかも、そうやって知識や技能を覚えるだけでなく「活用」していくと、バラバラだった個別の知識や技能が関連づけられてネットワーク化され、記憶に残りやすいことも、さまざまな研究でわかってきました。 学力の一つめの要素、「知識・技能の習得」においても、教師が教え込むより、生徒自身が思考・判断・表現するプロセスの中で身につけたほうが、効果的だったのです。これも授業の変革を促している要因の一つです。 もっとも、学力の要素である「能力」の育成や「知識・技能の習得」に努めさえすれば、未来の社会で活躍できる人材が育つかといえば、その点は意外と怪しいところです。「未来はこうなりそうで、その社会で必要とされる能力や知識はこれこれこのようなものだから、それを生徒たちに獲得させる」という、逆算による機械論的な発想だけで、果たして人は育つのか。 そうではなく、生徒が「未来は自分たちでつくるものだ」と思い、実際に身のまわりのことを少しでも変えようと動いてみたときに、そこでの成功や失敗を通して、本当に未来を切り拓く能力や知識を獲得していくという側面も大きいのではないでしょうか。 そのように自ら社会にかかわろうとする意識、いわば「未来社会を創造する主体としての自覚」を育てることも重要だと思っています。 では、どうすれば「未来社会を創造する主体としての自覚」を育てることができるのでしょう。 ポイントとなるのは、生徒が自ら実社会とかかわり「探究」するような学習を増やすことだと思います。具体的には、①生徒が自分で課題を見つける②必要な情報を収集する③集めた情報を整理・分析する④気づいたことや考えたことをまとめて発表・表現したり、考えたことを行動に移したりする こうしたプロセスの学習をくり返すことです。その学習を通して、生徒が課題に対する答えや解決策を自分で導き出していくと、彼らは「自分が動けば知りたかったことが見えてくる」「自分たちで考えたり動いたりすれば世の中を少しずつ変えられるかもしれない」という手ごたえを得ます。そうした感覚が積み重なることで、「これからの社会をクリエイトするのはまさに自分たちなんだ、そのために今いろいろ学んでいるんだ」という意識も育つと思うのです。 さて、その探究的な学習に取り組むとすれば、ぜひとも頭に入れておきたいことがあります。探究というのは、本質的には「学び手に求めがなければいけない」という点です。 生徒がこの世界のことで不思議に1962年生まれ。新潟大学教育学部卒業後、上越市立大手町小学校教員、上越教育大学付属小学校教員などを経て、2005年より文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官に。国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官も併任。教員時代より、生活科・総合的な学習の時間の実践、カリキュラム研究に取り組む。田村学文部科学省・国立教育政策研究所 教科調査官学力向上の視点だけでは危うい。未来を創造する主体の育成を372014 DEC. Vol.405

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