キャリアガイダンスVol.405
45/64

「面倒くさい」が「もっとやりたい」に変化 グループ別活動は総合的な学習の時間とLHRの2時間続きで、全6回実施された。各グループに担当教員が1〜2人がつくが、あくまで見守り役。外部講師のリードのもと、生徒主体で進められる。最初はあまり盛り上がらないグループもあったが、回を重ねるうちに雰囲気が変わっていった。 変化が最も大きかったのは、ミュージカル発表のグループだという。連携先は、表現活動によって自分らしくたくましく生きる個人を増やすことをミッションとする、NPOコモンビート。参加生徒が意見を出し合ってミュージカルを作り、最終的にステージで自ら発表した。「最初、参加生徒は『恥ずかしい』『面倒くさい』と文句ばかり。それが参加するうちにどんどんイキイキとしてきたんです。教員とは違うアプローチによるコモンビートの方の乗せ方が絶妙だったし、歌と踊りが得意な外国ルーツの生徒に巻き込まれた面もあるのでは。最後は『新しい自分になった』『1つになるすばらしさを学んだ』『これからはもっと仲間のことを考えて行動したい』などの感想を聞くことができました」(石井誠啓先生) 生徒主体の活動のなかでは、当然失敗もある。例えば、高校生記者グループでは、緊張しながら著名人に電話で取材依頼して、何度も断られた。また、数人のチームでアイデアを競うビジネスプラン作成グループでは、メンバーをうまくまとめられないチームもあった。「そこから学ぶことがあり自信もついたはず。自分の頭で考えて行動できたという意味で大成功」と石井誠啓先生はいう。 毎回の活動後は振り返りシートを記入し、自分の体験や感想を記録。最後は各自のクラスに戻ってプレゼンテーションを行い、それぞれの経験をクラスメイトとシェアした(図3)。 初めてのプログラム実践で、いくつかの課題も明らかになっている。やる気のある生徒は多いが、最後まで火がつかない生徒もあり、モチベーションに差があると多くの教員が感じた。来年度は事前指導のオリエンテーションで、チームでやるという意識付けやアイスブレイクにいっそう配慮する予定だ。 生徒が変わる手応えが授業改革を後押し このような外部の力を借りたプログラムを通じて、コミュニケーションやプレゼンテーションなどさまざまな場面で「生徒が確実に変わった」という。また、人間としての在り方生き方に関する新教科や教科「奉仕」の要素も取り入れるなか、古着や古本を集めるなど実際に動いて「役に立つことができた」と感じる体験は、大切さを言葉で伝えるよりも効果があるとの手ごたえを感じている。「生徒には、『この人みたいになりたい』『こんな大人がいるんだったら将来夢を持って頑張ろう』と前向きになれる素敵な大人たちとの出会いや、どんどん新しいことを経験できる楽しさを知ってほしい。そして、高校を卒業したら、次は自分たちで新しい出会いや経験をつかみにいってほしいですね」(石井誠啓先生) 総合的な学習の時間のプログラムが、他の授業に与えた影響も大きい。「外部講師がディレクターとして生徒を動かすこともひとつの授業形態だと経験的に分かった」と石井裕己先生。外部人材のかかわりの効果を実感し、授業をも変えていこうとの機運がアップ。協同的な授業方法について学ぶ校内研修も行われた。 今後の課題は、キャリア教育で向上した力や意欲を、どう進路実現につなげていくか。外国籍の生徒は就職や奨学金受給の際の難しさもあり、同校独自のノウハウの蓄積が求められる。現在も進行中の学校改革の今後について、大池校長はこう語る。「学校が変わり始め、多くの生徒にモデルとなる進路実現の例も出てきています。その情報を学校全体で共有して生徒に自信を持たせるとともに、授業力により生徒の力をしっかりつけていく。キャリア教育と併せて、進路実現につなげていきたいと考えています」(大池校長)校長大池公紀先生進路指導主任石井裕己先生2学年総合的な学習の時間担当石井誠啓先生「 個性的な大人の話で 視野が広がった」(高田さん)音楽が好きなので、『キャリアデザインⅡ』のグループ別活動では、ミュージカル発表に参加しました。ほかのクラスの人たちが多くて最初はちょっと緊張しましたが、一緒に踊りや構成を考え、最後の発表ではお互いを励まし合いながら1つになれて、すごく楽しかったです。また、指導してくださったNPOコモンビートの大人の方と、空き時間にいろんな話ができたのも興味深かったですね。個性的な方ばかりで、『こういう生き方もあるんだ』と思いました。実は私、この学校がどういうところか、よく知らずに入学したんです。なので、入学後、周りからいろんな国の言葉が聞こえてきて、『ここ日本?』とびっくりしました。私は将来、観光の仕事に就いて、世界を旅するのが夢。いろんな国の友達ができ、おもしろい大人との出会いがある、この学校を選んでよかったと思っています。「社会で成果を出す難しさ・厳しさを痛感」(ケニングさん)私が『キャリアデザインⅡ』で取り組んだのは、ビジネスプラン作成です。最初、プログラムに沿って空欄を埋めていくように作っていくんだと思っていたら、『ゼロから自分たちでビジネスアイデアを考えて』と言われて、『えっ!』(笑)。ちょうど部活動などが忙しい時期で、夜中に泣きながら準備したこともありました。最終日の発表では、外部の方から『数字の根拠は?』など厳しい指摘もたくさんいただき…。何も返せず悔しい気持ちもあったけれど、おかげで社会の厳しさやチームワークの大切さが分かりました。私は高校卒業後、母国アメリカの大学に進学して、心理学を学ぶのが目標です。学校でJICAの方や青年海外協力隊の方の話を聞き、海外支援での心理学の使われ方を知りました。考えるチャンスがいっぱいある学校だと思います。2学年 高田 愛さん(写真右)ケニング・ジュリア・美星さん(同左)472014 DEC. Vol.405

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です