キャリアガイダンスVol.406
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「キャリアガイダンス.net」ではロングバージョンをお読みいただけます希望の道標取材・文/山下久猛撮影/平野 愛みしま・くにひろ●1975年京都生まれ。1999年京都大学文学部卒業後、PHP研究所入社。主に、PHP新書および単行本の編集を行う。2003年5月、同研究所退社。数カ月の旅人生活を経て、2003年10月、NTT出版に入社。NTT出版ライブラリー・レゾナントのシリーズと単行本の編集に従事。2006年10月、同社を退社。翌月、「原点回帰の出版社」を謳い、株式会社ミシマ社を設立。以来、『街場の中国論』(内田樹)や『はやくはやくっていわないで』(作・益田ミリ/絵・平澤一平)などオールジャンルで数々のヒット作を世に送り出している。三島邦弘心を透明にして自分の信じた道を歩んでいってほしいですね原点回帰の出版社を起業/三島邦弘(株式会社ミシマ社) これまでの人生を振り返れば、目に見えない糸にずっと引っ張られてきたという感じはあります。高校時代は現在に対する不安を何となく感じていました。勉強は好きで周りの友達が遊んでても、流されたら自分がダメになるんじゃないかなという直感が何となく働いて、自主的にやっていました。こんな感じで、きっとすべての人に自分を引っ張ってくれている糸っていうのはあって、それを感じられるか感じられないかというだけの話だと思うんです。けど、高校生っていろいろ多感で揺れ動く時期なので何となく足元が不安だったんだと思いますね。 大学卒業後、その糸に引っ張られるようにして出版社に就職しました。書籍編集という仕事は本当に楽しくて瞬く間に編集という仕事の虜になったのですが、3年で退職して東欧に旅立ちました。高校時代から続いている自分に向かってまっすぐ伸びてくる糸と当時の自分はつながっていないと感じたからです。そのまま出版社にい続けたら、出世していくという糸になるのがわかったんですが、ぼくは出世なんかには全然興味がなかった。本質的におもしろい仕事をし続けるという道を歩んでいきたいと思っていたので、会社にいても意味がないなと。会社を辞めたのはボーナスが出る直前だった? ああ、そういえばそうですね。今考えたらそんなの小さなことですね。お金のためだけにやらなきゃいけないことってほとんどない。あったとしても短期間で終えないといけない。でないと、感覚、つまり危険を感じるセンサーが鈍ってしまいます。生きていくうえで感覚が鈍ることほど恐いものはないですからね。「たかだか」目先のお金やキャリアのために一番重要な感覚を犠牲にしちゃったら元も子もありません。 今の社会は受験や就職など、目の前の問題をクリアするために与えられたことを取りあえずこなしていく、という受け身のゲームになっていると思います。けれど、そのゲームをやる必要ってほんとはない。その受け身の道を選べば、出世競争やお金といったものに、自分の人生が支配されることになりかねない。けれど、同じ会社員でも、自分が本当におもしろいと感じることをやるためであれば、とたんに人生が主体的になる。主体的に動くと、不思議とそういう人たちとの出会いが訪れる。とても風通しのいい世界が待っている。ぼくが設立したミシマ社という出版社は、そうした豊かな身体性をもちあわせた場でありたいです。ミシマ社の本に触れたら、普段自分を縛っていた窮屈な感じや緊張感が解けていく。そのくらいの思いを込めて出版活動をやっています。 大学受験や進学はこれから社会に出て大人になるための最初の一歩。だから高校生には、学校の先生や親がどう言おうが、自分がこっちの方向へ行きたいと感じる感覚を大事にして、信じた道を歩んでいってほしい。他人からいろいろ言われると心に霧がかかったような状態になって不安になりますが、ぽっと心を透明にしたときに自分の人生を引っ張ってくれる糸っていうものが必ずみつかるはずなので。それは本当にあるんですよ。42015 FEB. Vol.406

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