キャリアガイダンスVol.406
44/64

数学もまた、複素数のように、本来目に見えないものを数字と記号で「見える化」する力をもっているんですよね。美術の授業で「見えないものを見える化するとはどういうことか」を問う時に、数学の例を出させてもらっています。石川理 戸山高校には、理数課題研究といって、生徒が研究テーマを決めて2年間活動し、その成果を発表する授業があります。その授業で、風車をつくってエネルギー問題を解決しようという研究に取り組む生徒たちがいるのですが、そこを追いかけると、「風車の羽のデザインはどうするか」という数学や美術がかかわる話、「風車の低周波による公害問題をどうするか」という社会科が絡む話、「研究内容を国内や海外にわかりやすく伝えるにはどう発表すればいいか」という国語や英語の力が問われる話などに、広がっていくんですよ。そのように、「課題を追究していくうちに、新たな問題にあたり、それをどう解決するかを生徒が自ら考える授業」を増やせればと思いました。自己評価や相互評価、外部の評価で学びを深める吉田社 ぼくは、授業の工夫だけでなく、評価の工夫も大事だと思うんです。学習のどこをどのように評価するかをきちんと考えれば、その方針を示すことができ、生徒もそれを踏まえて意味ある学習をしやすくなると思うからです。ただ、課題ンは高まりますよね。石川理 評価は私も研究してきたテーマで、今は、生徒が自己評価と相互評価によって学びを深めることを目指しています。授業の最初に「科学には実証性・再現性・客観性が必要でそれはこういうこと」と観点を示し、それを踏まえて生徒がグループで実験や議論を行います。そして最後に「実証性・再現性・客観性を大事にできたか」をワークシートでふり返り、自分とメンバーを評価します(※⑥)。須藤情 生徒自身の「評価する能力」をあげることが必要になると思うのですが、そこはどうされているのでしょう?石川理 そう、生徒たちは、最初は自分の評価を甘くしたり、友達の評価を高くしたりするんですよね。その点については、シートに私の評価とコメントをつけてフィードバックすることをしています。するとで、さまざまな教科の話題もからめることで、生徒が各教科を身近に感じたり、「物事はみんなつながっているんだ」と実感できたりするといいですよね。吉田社 数学は、実社会で役立てようと学ぶ人もいますが、単純に謎に迫るのがおもしろくて学ぶ人も多いと思うんです。例えば、2、3、5、7……と続く素数に規則性があるかはまだわからないそうですが、その解明に燃えている人は、おそらく実社会への貢献は考えていない(笑)。でも、素数の組み合わせはネットの暗号化技術に使われていて、もし素数の謎が数学で解明されたら、ネットの暗号化が破綻するほど社会に影響を及ぼす。数学のそんな魅力は社会科でも話しています。浅野美 アートには、表現することで社会で見過ごされていたものを「見える化」する力がある、と考えているのですが、学習――例えば「歴史問題を抱える日韓で共同の教科書をつくってみよう」という課題に取り組んだ時、生徒の活動や、成果物をどう評価するかは、なかなか難しくて。先生方はどうされていますか?浅野美 作品制作では、吉田先生がおっしゃるように、授業の評価基準、いわゆるルーブリック(※⑤)をつくって生徒に最初に渡しています。「イメージを2つ重ね合わせておもしろいものをつくる戦略点」と、「それが作品として人に伝わるものになっているかのコミュニケーション点」でみるよ、といった具合に。基準がしっかりしていると、生徒も「先生が主観で評価している」とは思わなくなります。ただ、それだけでは収まらない部分はやはりあって、地域と協働のアートプロジェクトなどは「どう評価すれば?」という状態です(笑)。そのなかで一つ感じているのは、学校の評価とは別に、地域の人のコメントやリアクションなど、外部からの評価も、生徒に気づきやモチベーションを大いにもたらすことです。須藤情 情報の授業でも、ウェブサイトをつくるようなプロジェクトでは、外部講師などでデザイナーさんやシステムエンジニアさんからフィードバックがあると、生徒のやる気が増します。生徒がつくったサイトは文化祭で発表するのですが、来場者の反応もいい刺激になります。「このページはクリック数が多いのに、こっちのページは見てもらえなかった」とか。外部の評価、リアルな社会とのつながりが増えると、学びに対する生徒のモチベーショリフクレションとは自己内省のこと。授業で習ったことや授業中の活動を、生徒が自分でふり返ると、さまざまな気づきを得ることができる。学習内容で理解できていなかったところがわかる、「積極的に動けなかった」「チームで協力できなかった」など自分の課題が見つかる、といった具合に。その気づきによって、生徒は自分でさらに学んでいけるので、アクティブラーニングにおいても、ふり返りは重要だと言われている。ワークシートや自由記述によるふり返り、対話によるふり返りなどさまざまなやり方がある。ふり返り/リフレクション学習において「何を学ぶのか」「その学びをどこまで深めれば、どのレベルに到達したと判断されるのか」を見えるようにした評価基準。浅野先生の授業例でいえば、「色彩計画」「和紙の貼り付け」などが今回の作品制作で「学ぶこと」となり、「未提出は0点」「何も考えずに色彩を選んだら2点」「色の選択はよいが色彩効果が足りないと5点」などと示された基準が「学習の到達レベル」となる。生徒からすれば何を目指せばいいかがはっきりし、自分の力量にあわせて、学習の到達レベルを上げることに挑戦できる。ルーブリックワークでは、ほかの先生の記述に触発されて、付箋を書き足す場面も何を(青の付箋)何のために(黄色の付箋)学んでほしいかを全体で共有⑥⑤462015 FEB. Vol.406

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です