キャリアガイダンス vol.407
30/64

 未曽有の被害をもたらした東日本大震災から4年が経った今年4月、福島第一原発の南方20キロメートル以遠に位置する福島県双葉郡広野町に、新たな高校が開校した。福島県立ふたば未来学園高校である。連携型中高一貫校として、双葉郡(広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村)出身の中学生を中心に受け入れ、地域の復興を担い、社会に貢献できる「強さ」をもった人材を育成することが目標だ。 1期生は152人。震災時、小学5年生だった学年である。丹野純一校長(写真中央)は次のように話す。 「ひと言では表せない辛い体験をした子どもたちです。けれど、新しい学校に希望を見いだし入学してくれた子どもたちでもあります。志望理由の言葉に、故郷への想いや、この経験を地域の復興に役立てたい、という強い意志があふれていることに驚かされました」 そう丹野校長が話すように、震災後、双葉郡の児童・生徒は大変な日々を過ごしてきた。ここで、双葉郡の学校の現状と、ふたば未来学園が誕生した経緯を簡単に振り返ってみる。 震災後、双葉郡の8町村にあった小・中学校は、会津若松市や二本松市、いわき市ほか県内各地の避難先の仮設校舎などで、大変な苦労を伴いながら授業を再開させた。その後、避難ふたば未来学園高校が目指す「未来」を創る学校展望・未来を創る学校2015年4月、福島県双葉郡広野町に新たな学校が誕生しました。福島県立ふたば未来学園高校。校名が示す通り、地域の復興を担い、未来を創る人材を育む学校です。誕生の経緯と、同校が描く未来像について、開校直前の3月末に取材しました。指示が解除され帰村・帰町がかなった川内村と広野町を除き、現在も避難先での学校運営が続いている。郡内にあった5つの県立高校も、本来の場所から離れた土地でサテライト校として運営されてきた。いずれも生徒数は震災前に遠く及ばない。 そのような状況下、各町村ではそれぞれ教育環境の整備に努めてきたが単独の動きでは限界がある。双葉地区の教育長会などで、町村の枠を越えて教育復興に取り組もうという声が高まり、県や国と議論を深めるなか、13年に「双葉郡教育復興ビジョン」を取りまとめた。その具体策の筆頭にあがったのが中高一貫校の設置であった。初期の議論では、各町村が直面する喫緊の課題の解決が中心であったが、地域の将来に思いをはせ、そのために今どのような人材を育てる必要があるか、という議論に発展するなかで生まれた未来志向の発想であったという。 「日常を取り戻すという話だけではなく、この地域だからこその前例のない思い切った教育をという議論の流れのなかで生まれた構想でした」 そう語るのは、ふたば未来学園の南郷市兵副校長(写真左)だ。震災前年、大手通信会社から縁あって文部科学省に出向。震災対応に奔走するなか任期の3年が過ぎると同時に本籍の企業を退職し、公募試験を経て文科省に専門職として採用された変わり種だ。 氏は、文科省が推進する「創造的取材・文/堀水潤一 撮影/高松英昭未来像から逆算して誕生した新たな中高一貫校322015 MAY Vol.407

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です