キャリアガイダンス vol.407
50/64

「なぜ大学に行くか」を考える総合的な学習の時間プログラム 将来の目標について「教師になりたい」「看護師になりたい」と職業名をあげる生徒がいたら、「しっかり考えているな」と安心する教員は多いのではないだろうか。しかし、宮城県仙台向山高校では、そういう生徒こそ注意深く指導していく対象となる。それはなぜか、何を目指してどのような指導を行っているのか、同校のキャリア教育の中身をみていきたい。まずは、現在に至る経緯からひも解く。 同校は毎年100人近い国公立大学進学者を輩出する進学校だ。かつての進路指導は受験指導がメインで、いわゆる出口指導だったという。総合的な学習の時間開始を機に「向陵プラン」という名で進路学習を始めたが、進路講演会や職業人インタビューなどの単発の取り組みにとどまり、学年や教員個人によるばらつきもあった。 そんななか、進路指導部長(取材時)を務める穂積暁先生は、志望校への進学を果たした卒業生でも学問に対する関心が低く、進学後に方向転換や中途退学する者がいる実態を知る。ある教え子は、希望どおりの国立大学に進学したが、在学中に自分のやりたいことと違うと気づき、別の私立大学に入り直した。 「『気づくのが遅くてすみません』と謝る卒業生を、ぼくは叱ることができませんでした。気づかなくて当然です。われわれは1つでも多くの英単語を覚えさせることに一生懸命で、なぜ大学に行くか、本当に学びたいことは何かを考えさせなかったのですから。この例は氷山の一角。大学合格だけでなく、将来を見据えた指導が必要でした」(穂積先生) 穂積先生ほか進路指導部の有志の教員は、自主的にプロジェクトを発足。キャリア教育指導者養成研修参加や先進校視察を参考に、向陵プランを進学後まで見据えた3年間の体系的なプログラムに再構築し、2009年度から実施している。目標は職業に就くことではなくその職業を通じて何をしたいか 新・向陵プランの大きな目標は、「社会に貢献できる人材」を育成すること。そのためのプログラムでは「つながる3年間」という大テーマのもと、学年別テーマに基づいてそれぞれの観点から社会貢献の方策を考えていく(図1)。 1学年のテーマは「社会とつながる」だ。自己理解から入る進路学習も多いが、同校はまず社会にある困難を知ることから始める。「自分自身は社会との接点に照らすことで見えてくるもの。そうした経験もなく内面を掘り返したところで深いものは出てこないのでは」(穂積先生)という考えからだ。 活動はクラスを横断したグループ単位が中心となる。生徒は関心のある社会問題ごとに12分野に分かれ、さらにその中仙台向山高校のキャリア教育の中心である、3年間の総合的な学習の時間のプログラム「向陵プラン」。振り返りを重視することで、自分と学問・社会とのつながりの自覚と主体的な進路選択を促す活動です。リニューアルから5年。学校全体の取り組みとしての成果が見える今も、進化を続けています。─仙台向山高校(宮城・県立)─取材・文/藤崎雅子先進校に学ぶキャリア教育の実践「これまで」を振り返ることで「これから」につなげ主体的に社会に貢献できる人材を育成総合的な学習の時間 グループワーク 社会課題 事業所訪問志望理由書指導 高大連携 ポートフォリオ 進路シラバス522015 MAY Vol.407

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です